キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを行う際に必要な知識とそれを補う資料について、前回に続きメンタルヘルス、自殺・過労死、ハラスメント等に関する知識、資料について説明します。
■改正 事業場における労働者の健康保持増進のための指針
厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055195_00012.html
とそのリンク先資料により引用説明します。
厚生労働省は働く人の心とからだの健康づくりを推進していますが、その際の指針となるのが事業場における労働者の健康保持増進のための指針です。
事業場における労働者の健康の保持増進については、昭和 63 年に、労働安全衛生法第70 条の2第1項の規定に基づき、事業場における労働者の健康保持増進措置を推進するため、事業場における労働者の健康保持増進のための指針(THP(トータル・ヘルスプロモーション・プラン)指針)を策定し、指針に沿った取組を普及してきました。一方で、THP指針策定から 30 年以上が経過し、産業構造の変化や高齢化の一層の進展、働き方の変化など、日本の社会経済情勢が大きく変化していく中で、事業場における健康保持増進対策についても見直しの必要が出てきていました。そのため、令和2年3月に、事業場における健康保持増進対策をより推進する観点から、THP指針が改正されました。
〇改正のポイント
① 従来の労働者「個人」から「集団」への健康保持増進措置の視点を強化
現行の指針では健康測定の結果、生活習慣上の課題を有する労働者を主な対象として、運動指導や保健指導等を実施する視点が強い内容となっている。
今回の改正では、幅広い労働者の健康保持増進が促進されるように、直ちに生活習慣上の課題が見当たらない労働者も対象に含まれ、一定の集団に対して活動を推進できるように「ポピュレーションアプローチ」の視点を強化。
② 事業場の特性等に合った健康保持増進措置への見直し
現行の健康保持増進措置は、1.健康測定(生活状況調査、医学的検査等)、2.産業医等による指導票の作成、3.個人の状況に応じた運動指導、保健指導等を各専門家より実施という流れで構成されており、定型的な内容を示している。しかし、事業場がこの内容に取り組むことは時間や費用等の観点からハードルが高く、結果的に浸透していない。今回の改正では、事業場の規模や事業等の特性に応じて健康保持増進措置の内容を検討し、実施できるよう見直し
③ 健康保持増進措置の内容を規定する指針から、取組方法を規定する指針への見直し
上記②に示したとおり、健康保持増進措置を事業場の特性等に応じて実施できるものとする一方、事業場で健康保持増進対策を推進するにあたっては指針に基づく進め方(PDCAサイクル)に沿って確実に実施することを求めるものとする。
改正前の指針では、健康保持増進対策の推進に関して、事業者の表明や目標の設定等の進め方に関する言及はあるものの、各項目については具体的な記載となっていない。今回の改正では、指針に基づく措置内容について柔軟化する一方、PDCAの各段階で事業場で取り組むべき項目を明確にし、事業場が健康保持増進対策に取り組むための進め方を規定する指針へ見直す。
〇健康保持増進対策の推進に当たっての基本事項
事業者は、健康保持増進対策を中長期的視点に立って、継続的かつ計画的に行うため、以下の項目に沿って積極的に進めていく必要がある。また、健康保持増進対策の推進に当たっては、事業者が労働者等の意見を聴きつつ事業場の実態に即した取組を行うため、労使、産業医、衛生管理者等で構成される衛生委員会等を活用して以下の項目に取り組むとともに、各項目の内容について関係者に周知することが必要である。
なお、衛生委員会等の設置義務のない小規模事業場においても、これらの実施に当たっては、労働者等の意見が反映されるようにすることが必要である。加えて、健康保持増進対策の推進単位については、事業場単位だけでなく、企業単位で取り組むことも考えられる。取り組み内容を次に示します。
(1)健康保持増進方針の表明
事業者は、健康保持増進方針を表明するものとする。健康保持増進方針は、事業場における労働者の健康の保持増進を図るための基本的な考え方を示すものであり、次の事項を含むものとする。
・事業者自らが事業場における健康保持増進を積極的に支援すること。
・労働者の健康の保持増進を図ること。
・労働者の協力の下に、健康保持増進対策を実施すること。
・健康保持増進措置を適切に実施すること。
(2)推進体制の確立
事業者は、事業場内の健康保持増進対策を推進するため、その実施体制を確立するものとする。
(3)課題の把握
事業者は、事業場における労働者の健康の保持増進に関する課題等を把握し、健康保持増進対策を推進するスタッフ等の専門的な知見も踏まえ、健康保持増進措置を検討するものとする。なお、課題の把握に当たっては、労働者の健康状態等が把握できる客観的な数値等を活用することが望ましい。
(4)健康保持増進目標の設定
事業者は、健康保持増進方針に基づき、把握した課題や過去の目標の達成状況を踏まえ、健康保持増進目標を設定し、当該目標において一定期間に達成すべき到達点を明らかにする。また、健康保持増進対策は、中長期的視点に立って、継続的かつ計画的に行われるようにする必要があることから、目標においても中長期的な指標を設定し、その達成のために計画を進めていくことが望ましい。
(5)健康保持増進措置の決定
事業者は、表明した健康保持増進方針、把握した課題及び設定した健康保持増進目標を踏まえ、事業場の実情も踏まえつつ、健康保持増進措置を決定する。
(6)健康保持増進計画の作成
事業者は、健康保持増進目標を達成するため、健康保持増進計画を作成するものとする。健康保持増進計画は各事業場における労働安全衛生に関する計画の中に位置付けることが望ましい。
健康保持増進計画は具体的な実施事項、日程等について定めるものであり、次の事項を含むものとする。
・健康保持増進措置の内容及び実施時期に関する事項
・健康保持増進計画の期間に関する事項
・健康保持増進計画の実施状況の評価及び計画の見直しに関する事項
(7)健康保持増進計画の実施
事業者は、健康保持増進計画を適切かつ継続的に実施するものとする。また、健康保持増進計画を適切かつ継続的に実施するために必要な留意すべき事項を定めるものとする。
(8)実施結果の評価
事業者は、事業場における健康保持増進対策を、継続的かつ計画的に推進していくため、当該対策の実施結果等を評価し、新たな目標や措置等に反映させることにより、今後の取組を見直すものとする。
〇「労働者の心の健康の保持増進のための指針」との関係
「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」のメンタルヘルスケアとは、積極的な健康づくりを目指す人を対象にしたものであって、その内容は、ストレスに対する気付きへの援助、リラクセーションの指導等であり、その実施に当たっては、労働者の心の健康の保持増進のための指針(平成18年3月31日健康保持増進のための指針公示第3号)を踏まえて、集団や労働者の状況に応じて適切に行われる必要がある。また、健康保持増進措置として、メンタルヘルスケアとともに、運動指導、保健指導等を含めた取組を実施する必要がある。
〇事業場における労働者の健康保持増進のための指針の最近の改正
・令和3年2月に、医療保険者と連携した健康保持増進対策がより推進されるよう改正。
・令和4年1月 医療保険者と連携した健康保持増進対策がより推進されるよう個人情報の取扱いについて改正。
(つづく)A.K