基礎編・理論編

キャリアコンサルタント養成講座 183 | テクノファ

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私(平林)は横山先生と2004年に初めてお目にかかりました。当時テクノファはISOマネジメントシステムの研修機関として、JAB(一般公益法人日本適合性認定機関)の認定を日本で最初に受けた第三者審査員養成講座を開設しておりました。当時、ISOマネジメントシステム規格には心が入っていないと感じていた私は、その時に横山先生にキャリアコンサルタント養成講座立ち上げのご指導をお願いしました。

横山哲夫先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがあるはずであるとキャリアコンサルタント養成講座の中で強調されていました。そして数多くの著書を世の中に送り出しています。

今回はその中からキャリアコンサルタントが知っていると良いと思われる「組織文化とリーダーシップ」を紹介します。

本記事はエトガー・H・シャインの著作「組織文化とリーダーシップ」を横山先生が翻訳されたものです。横山先生の思想の系譜をたどるときには、エドガー・シャインにかならず突き当たるので今回から横山先生の翻訳を紹介しながら彼の思想の系譜を探索したいと思います。

<ここより翻訳:2010年シャイン著>
(6)方向転換プロジェクトのための構造作り。「パラレルシステム」としてのプロジェクト・タスクフォース
チバ・ガイギーのマネジャーたちはグループで働くことにすぐれていた。コクリンと経営委員会はまず,方向転換プロジェクトを30の独立した,マネジメントしやすいタスクに分けるためのステアリングコミティー(検討委員会)を作る際に,このスキルが活用された。このコミティーは総会のあとに数日間会い,方向転換プロジェクトで達成すべき具体的なタスクをじっくり検討した。そこでこのプロジェクトを実行するための全体的なパラレルシステムが作り上げられた。

もうひとつのステアリングコミティーがそれぞれのタスクごとに作られ,経営委員会のメンバーの1人ひとりがそのタスクグループの業績に結果責任を負うこととなった。各シニアマネジャーにそれまで遂行責任を負っていた事業部を縮小し,リストラクチャーする責任を負ってもらうことを避けるために,このメンバーの責任分担は相互に入れ換えが行われた。その結果利害関係の衝突が回避され,各事業部は新しい目で審査される態勢が整った。

さらに各タスクグループには「チャレンジャー」がひとりずっ任命された。この人物は,各タスクグループから提案されるソリューションをレビューし,挑戦するシニアマネジャーであり,これらの提案が納得できるものであり,考え抜かれたものであるか否かを吟味した。さらにステアリングコミティーがタイムテーブルと全般的なターゲットを決めた。また各ティームはその組織の運営に対して社内の組織コンサルタントからのサービスを受けることができることになった。さらにいくつかのティームは,どのようにその仕事を編成していくかという点で私からの支援を求め,活用することも可能であった。

この仕組みのすべてはトップマネジメントにより文書を通じて,各種ミーティングにおいて,さらに次年度を通じて行われた世界中の部署への訪問を通じて明確にコミュニケートされた。このプロセスだけでなく,その必要性,さらにトップマネジメントのコミットメントもこれらのコミュニケーションの機会に明確に伝達された。ここでもっとも強調された提案は,バーゼル本社における人員を少なくともその3分の1程度を削減するという具体的なプロジェクトであった。この対象には友人や親類のレイオフを含む,きわめて深刻な話しであった。

職務責任に対するこれらの構造的変革は,数々のステアリングコミティーによって実行されることになった重要なイノベーションであった。総会と各プロジェクトのデザインの両方で見られた,グループの有効活用は,私にとって大きな矛盾として映った。これほど階層を重んじ,個々人の領域を守ろうとしている企業で,何故グループを生みだし,グループの形のなかで運営するという側面でこれほど効果を上げ得るのだろうか? この解答は,この企業のトップマネジメントそれ自体が,長い間ともに働き,ともに結果責任を担ってきた,結束の固いグループであったという事実に求められるようであった。この企業が存在する,より広範なスイスとドイツのマクロカルチャーにも上記と同じ矛盾が見いだされる。つまり強力な個人主義が,問題解決にグループで協力して取り組むという共同体意識とコミットメントによって支援されていた。

またチバ・ガイギーでは,グループワークが横断的コミュニケーションのための唯一の手段であったことから,グループワークがこれほどの重要性を備えていた,ということも推量できる。また次のような感受性が働いていたことも想像できる。つまりあるひとつの事業部のマネジャーが支援を申し出たり,逆にほかの事業部からの支援を求める場合,もし両方の事業部のメンバーによってタスクフォースを構成し,交互に効果的,非効果的な介入について報告し合うプロセスを活用すれば,両方の顔をつぶさずに相互間の問題を解決できたのだ。そうすれば聞き手は自分が問題を抱えていることはあかさずに新しいアイディアを学び,修得でき,またほかの人たちはこの人物が彼らのインプットの受け手であることをあかすことなくアイデアを提供することができた。したがってこのようなグループワークにすれば,すべての人たちの顔をつぶさないで済んだのだ。

さらにグループは,実行のためのシステムがたとえ階層構造重視のものであったにせよ,プロジェクトに対するコミットメントを築くことは可能であった。もしグループが課題について議論した場合でも,階層構造でもスムーズに仕事が進み,丁度日本のシステムがそうであるように,意思決定が発表される前にコンセンサスが確認されていたのだ。この方向転換プロジェクトでは,さまざまの方法を通じてチバ・ガイギーの文化の強味が活かされ,かつその文化を大幅に変えることなく,ビジネス上の問題に対応する公式的なプロシージャーをさらに洗練されたものに向上させたのだ。

第2年目:方向転換プロジェクトの統合
第2回目の年次総会のあとに続く私の数回の訪問では,次の重要な3つの領域で仕事を継続した。第1は,私はどのプロジェクトグループ,またはメンバーからの要求,つまりどのようにプロジェクトワークを進めるかについてのあらゆる種類の相談を受ける態勢を整えていた(このアポイントメントは彼らの側からの申し出によって行われた)。もし私がほかのプロジェクトにも役に立つ何かを学んだ場合にはそれを書きものにまとめ,ほかの人たちにも配布した。何人かのマネジャーからは,ダウンサイジング(規模縮少)と早期退職をどのように進めたらよいのかについて相談が寄せられた(とくにこれがバーゼル本社の緊密に結ばれたコミュニティー(共同体)で実行されたときに多くの支援が求められた)。またイノベイティブにリストラクチャリングを進めるのにマネジャーとしてどのように考えたらよいのかについても相談を受けた。さらには経営者開発プロセスでキャリア・アンカーをどのように活用するのか,についても質問を受けた。私はさらに,方向転換プロジェクトの全体に責任を負っている経営委員会メンバーのひとりとも多くの時間を費やした。つまりプロジェクトグループにおける彼の役割とリーダーシップを明確に,効果的にするため側面から支援した。彼は,私を一貫してプロセスコンサルタントとしてずっと活用した,唯一の経営委員会のメンバーであった。補足を加えると,彼は本社のCFO(最高財務責任者)であり,弁護士でもあった。また彼のほかにも数人のプロジェクトマネジャーが,プロジェクトの長としての彼らの役割をしっかり考え抜き,さらにチャレンジャーからの挑戦を受ける前に,各種の提案に対する私の反応を聞くために私の支援を求めてきた。

第2に,経営者開発インベントリー(人材リスト)とプラニングシステムになじみが深まり,その部門のマネジャーであるロイポルトと,このシステムをどのように向上できるかについての話し合いもはじまり,有能で,イノベイティブなマネジャーを採用し,開発することが,方向転換プロジェクトにおける,プライオリティーの高い長期的ゴールであることを確認した。さらにロイポルトは1年以内に退職する予定となっており,その後任に対して,このプログラムについて考えを進める際に支援を提供できる,この企業について知識を増しコンサルタントが必要になるかも知れないとも考えていた。

第3に,コクリンとそのプラニンググループから,現在存在している文化の前提認識について検討するように求められた。そのためにマネジャーたちに企業の文化についてインタビューし,その文化がこの方向転換プロジェクトを支援しているのか,あるいは阻害しているのかを解明することが必要となった。ここでの基本的なアイディアは,第3回目の年次総会で文化の果たす役割に焦点を当てる準備に取りかかるというものであった。
(つづく)平林

-基礎編・理論編

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