実践編・応用編

2020年度の緊急事態宣言、感染動向|テクノファ

投稿日:2022年8月10日 更新日:

新型コロナウイルス感染症は、私たちの生活に大きな変化を呼び起こしました。キャリアコンサルタントとしてクライアントを支援する立場でこの新型コロナがどのような状況を作り出したのか、今何が起きているのか、これからどのような世界が待っているのか、知っておく必要があります。ここでは厚生労働省の白書からキャリアコンサルタントが知っておくべき情報をお伝えします。

②2020年度の緊急事態宣言、感染動向
【2020年4月の緊急事態宣言から解除までの動き】
2020年4月7日に、政府対策本部において、特措法第32条第1項に基づき、緊急事態宣言が発出されました。緊急事態措置を実施すべき期間は同年4月7日から同年5月6日までの29日間とされ、緊急事態措置区域は東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、大阪府、兵庫県及び福岡県とされました。さらに、同年4月16日に、各都道府県における感染状況等を踏まえ、全都道府県が緊急事態措置区域とされました。
同年5月4日には、全都道府県において緊急事態措置を実施すべき期間について同月 31日まで延長することとされ、その後、各都道府県における感染状況等を踏まえ、段階的に緊急事態措置区域が縮小されました。
同年5月25日に、感染状況等を分析し、総合的に判断した結果、全ての都道府県が緊急事態措置区域に該当しないこととなったため、緊急事態解除宣言が発出されました。

【2020年後半から2021年にかけての感染動向】
緊急事態宣言解除後、2020年5月下旬から同年6月にかけては、感染者数は少ない状況が続いていたが、同年7月から同年8月にかけて、特に大都市部の歓楽街における接待を伴う飲食店を中心に感染が広がり、その後、周辺地域、地方や家庭・職場などに伝播し、全国的な感染拡大につながっていきました。同年8月第1週には、1日当たりの新規感染者数が1,500人を超えました。
この感染拡大に対して、政府と都道府県等が連携して、大都市の歓楽街の接待を伴う飲食店等、エリア・業種等の対象を絞った上で、重点的なPCR検査の実施や営業時間短縮要請など、メリハリの効いた対策を講じ、新規感染者数は減少に転じました。
しかしながら、同年10月末以降、再び新規感染者数は増加傾向となり、同年11月以降その傾向が強まっていきました。同月下旬には、1日当たりの新規感染者数は7日間移動平均で2,000人を超えて、同年12月には首都圏を中心に新規感染者数が過去最多の状況が続き、2021年1月8日の新規感染者は8,045人とその時点で過去最多の感染者数を記録しました(2021年3月31日時点)。こうした感染者の増加に伴い、特に大都市圏を中心に、医療提供体制がひっ迫する地域が生じました。
新規感染者数の増加に伴って重症者数・新規死亡者数も増加傾向となり、重症者数は同年1月には1,000人を超え、同年2月には新規死亡者数も120人を超える日が出るなど、ともにその時点で過去最多を記録しました(2021年3月31日時点)

【2021年1月の緊急事態宣言】
2020年11月から新規感染者数が増加を続けていたことや、この間の保健・医療提供体制に対する負荷の状況に鑑みて、2021年1月7日、政府対策本部において、特措法第32条第1項に基づき、緊急事態宣言が発出されました。緊急事態措置を実施すべき期間は同年1月8日から同年2月7日までの31日間とされ、緊急事態措置区域は東京都、埼玉県、千葉県及び神奈川県とされました。さらに、同年1月13日には、緊急事態措置区域に栃木県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県及び福岡県が追加されました。
同年2月2日、感染状況や保健・医療提供体制に対する負荷の状況について分析・評価を行い、同月8日以降については、緊急事態措置区域を栃木県を除く10都府県に変更するとともに、期間を同年3月7日まで延長することとなりました。ただし、緊急事態措置を実施する必要がなくなったと認められるときは、速やかに緊急事態を解除することとになりました。
同年2月26日には、感染状況等の改善傾向を踏まえて、大阪府、京都府、兵庫県、愛知県、岐阜県及び福岡県について、同月28日をもって緊急事態措置区域から除外することになりました。さらに同年3月5日には、期間を同月21日まで再延長することとして、東京都、埼玉県、千葉県及び神奈川県については引き続き緊急事態措置の実施対象とすることになりました。その後、同月21日をもって緊急事態宣言は終了しました。

③新型コロナウイルス感染症への取組み
ア  三次にわたる補正予算、法改正等 【令和2年度第一次、第二次補正予算】 2020年4月7日に「感染拡大防止策と医療提供体制の整備及び治療薬の開発」、「雇用の維持と事業の継続」及び次の段階としての官民を挙げた経済活動の回復などを盛り込んだ「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」が決定され(同年4月20日に変更決定)、 同月30日には令和2年度第一次補正予算が成立しました。厚生労働省関係では、
・病床の確保、医療機器導入の支援など医療提供体制の整備
・治療薬・ワクチンの研究開発、検査体制の確保等
・マスク、消毒用エタノール等の確保など感染拡大防止策
・雇用の維持と事業の継続など、総額1兆6,371億円の対応策が盛り込まれました。
さらに、同年6月12日には令和2年度第二次補正予算が成立した。厚生労働省関係(以下、新型コロナウイルス感染症 令和2年度 厚生労働省第二次補正予算ポイント)では、
・PCR等の検査体制のさらなる強化
・新型コロナウイルス感染症に係る情報システムの整備
・ワクチン・治療薬の開発と早期実用化等
・新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金の抜本的拡充
・医療用物資の確保・医療機関等への配布等
・雇用調整助成金の抜本的拡充をはじめとする生活支援
など、総額4兆9,733億円の対応策が盛り込まれました。

【新型コロナウイルス感染症に関する今後の取組み等】
2020年8月28日には、これまで得られた新たな知見等を踏まえ、重症者や死亡者をできる限り抑制しつつ、感染防止と社会経済活動の両立を図るため、政府対策本部において、「新型コロナウイルス感染症に関する今後の取組」を決定しました。主な内容としては、
・感染症法における入院勧告等の権限の運用の見直し
・季節性インフルエンザ流行期に対応した地域の医療機関での簡易
・迅速な検査体制構築等の検査体制の抜本的な拡充
・患者を受け入れる医療機関の安定経営を確保するための更なる支援、かかりつけ医等に相談・受診できる体制の整備等の医療提供体制の確保
・全国民に提供できる数量のワクチンの確保
・自治体間の保健師等応援派遣スキームの構築等の保健所体制の整備・感染症危機管理体制の整備
・国際的な人の往来に係る検査能力・体制の拡充
などの新型コロナウイルス感染症に関する今後の取組や対応策が盛り込まれました。

【令和2年度第三次補正予算】
2020年12月8日に新型コロナウイルス感染症の拡大防止策、ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現等を内容とする「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」が閣議決定され、2021年1月28日には、令和2年度第三次補正予算が成立しました。厚生労働省関係では、以下が新型コロナウイルス感染症 令和2年度 厚生労働省第三次補正予算のポイントとなります。
・地域の医療提供体制を維持・確保するための医療機関等支援
・福祉施設における感染拡大防止等への支援
・検査体制の更なる充実
・ワクチン接種体制等の整備
・情報収集・分析体制等の整備
・雇用調整助成金による雇用維持の取組みの支援
・個人向け緊急小口資金の特例貸付等の各種支援
などが、総額4兆7,330億円の対応策が盛り込まれました。

【令和2年度一般会計新型コロナウイルス感染症対策予備費】
新型コロナウイルス感染症への対応としては、先述の補正予算のほか、予備費も活用され、中でも2020年9月15日には、医療提供体制の確保、検査体制の拡充、ワクチン等に関して、合計約1兆6千億円の予備費の使用が閣議決定されました。
このうち、約1兆2千億円が医療機関への更なる支援のために措置され、新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる医療機関等への支援として、緊急包括支援交付金を増額し、新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる特定機能病院などの病床確保料が引き上げられるとともに、診療報酬の引上げが行われました。また、インフルエンザ流行期に備えた医療提供体制を確保するため、発熱患者等を対象とした外来体制をとる医療機関や、コロナ疑い患者を受け入れる救急・周産期・小児医療機関への支援等を行うこととされました。
このほか、検査体制の更なる拡充が図られるとともに、ワクチンに関しては、ワクチン接種の円滑な実施に向けて、地方自治体の体制整備やワクチンの供給・流通に必要な経費等が措置され、また、新型コロナウイルス感染症のワクチンを共同購入する国際的な仕組みであるCOVAXファシリティへの参加に必要な拠出金を措置することとされました。

【特措法と感染症法の改正】
新型コロナウイルス感染症対策につきましては、必要な見直しは速やかに対応し、感染の早期収束につなげていくことが重要です。このため、これまでに得られた知見や経験を法制度に反映させるという考えに立ち、対策の実効性を高めるため、2021年1月22日に、 新型インフルエンザ等対策特別措置法等の一部を改正する法律案を国会に提出をし、同年2月3日に成立・公布、同月13日から施行されました。
この改正法においては、特措法に関しては
・「まん延防止等重点措置」を創設し、営業時間の変更等の要請、要請に応じない場合の命令、命令に違反した場合の過料を規定
・緊急事態宣言中の施設の使用制限等の要請に応じない場合の命令、命令に違反した場合の過料を規定
・事業者及び地方公共団体に対する支援に関する規定の整備
等の措置が盛り込まれました。

【緊急事態宣言解除後の新型コロナウイルス感染症への対応】
2021年3月の緊急事態宣言の解除後も、引き続き、これまでの経験を踏まえた新型コロナウイルス感染症への取組みが必要であることから、国・自治体が監視、検査等の体制を着実に整え、国民の行動変容への理解と協力を得ていくため、同月18日に、政府対策本部において、「緊急事態宣言解除後の新型コロナウイルス感染症への対応」が決定されました。具体的には、①飲食の感染対策、②変異株対策の強化、③モニタリング検査など感染拡大防止策の強化、④ワクチン接種の着実な推進、⑤医療提供体制の充実、の5つの取組みを進め、再度の感染拡大の防止や、重症者・死亡者の発生の可能な限りの抑制を図ることとしています。
(つづく)K.I

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