厚生労働省は2016年(平成28年)、今まで民間資格であったキャリアコンサルタントを国家資格に位置付けました。職業能力開発促進法を改正して職業選択や能力開発に関する相談・助言を行う専門家を「キャリアコンサルタント」として規定することで、キャリアコンサルタントの質を担保することとなりました。厚労省は、「働き方改革」などの政策を推進する中で、キャリアコンサルタント4つの活動領域、すなわち企業、学校、就業、地域領域におけるキャリアコンサルティングの体制整備の必要性をうたい、2024年までに10万人のキャリアコンサルタントの育成を目標としました。
キャリアコンサルタント国家資格制度の特徴は以下の3点です。
① 試験及び登録
国家資格を取得するためには、国が認定した養成講習を修了し、国家試験(学科、実技)に合格し国が指定した登録機関に登録しなければなりません。
その上位には、経験を積んで従来からのキャリアコンサルタント技能士への道が敷かれています。キャリアコンサルタント技能士には1級、2級があり、それぞれ検定試験があります。キャリアコンサルタント資格と技能士検定1級、2級の試験は、それぞれ定められた出題範囲から筆記及び面談が用意されています。2020年時点でキャリアコンサルタント国家試験は年3回、キャリアコンサルタント技能士検定試験2級は年2回、1級は年1回の実施が計画されています(ただし、コロナ禍の影響で中止、延期があるかもしれません)。
②名称独占
キャリアコンサルタントは名称独占資格※となりましたので、国家資格を取得していない者は、キャリアコンサルタントまたはこれと類似する名称を名乗ることができません。違反の場合は罰則規定が設けられています。
※ 日本の国家資格には次の4種類がありますが、業務独占資格の取得困難度が一番高いと言われています。
・業務独占資格(医師、弁護士など)
・技能士資格(キャリアコンサルタント技能士、機械加工、建築大工、ファイナンシャルプランナーなど、130職種)
・設置義務資格(旅行業務取扱管理者、衛生管理者など)
・名称独占資格(キャリアコンサルタント、栄養士、保育士、保健師など)
③更新制度
資格取得後5年の間に、国が指定した更新講習を38時間(知識8時間、技能30時間)以上、受講修了しなければ資格更新ができません。ただし、キャリアコンサルタント技能士になると5年の間の更新講習は免除になる規定があります。2級は最初の5年の間の講習免除だけですが、1級になると永年免除の特権が得られます。
以上のように名称独占資格「キャリアコンサルタント」になるためには、国家試験に合格しなければならず、また「キャリアコンサルタント技能士」になるためには技能検定試験に合格しなければなりません。
前者の名称独占資格「キャリアコンサルタント」には経過処置が設けられています。制度としては、2016年(平成28年)から始まった厚生労働大臣が指定した登録試験機関が実施するキャリアコンサルタント国家試験に合格しなければならないのですが、経過処置として2021年3月までの間は従来の民間養成機関でキャリアコンサルタント試験に合格した方は名称独占資格キャリアコンサルタントに登録できます。令和2年現在53,172名がキャリアコンサルタントに登録されています。
(つづく)A.K