新型コロナウイルス感染症は、私たちの生活に大きな変化を呼び起こしました。キャリアコンサルタントとしてクライアントを支援する立場でこの新型コロナがどのような状況を作り出したのか、今何が起きているのか、これからどのような世界が待っているのか、知っておく必要があります。ここでは厚生労働省の白書からキャリアコンサルタントが知っておくべき情報をお伝えします。
イ 医療提供体制、検査体制など対策別の取組み
【医療提供体制の整備】
(診療体制)
新型コロナウイルス感染症の医療体制については、住民の方々の不安を軽減し、また、 患者を診療体制等の整った医療機関に確実につなぎ、医療機関を発端とした感染症のまん延をできる限り防止する観点から、2020年2月1日に、
・各都道府県に対して、二次医療圏ごとに1箇所以上、地域の感染状況等に鑑みながら 「帰国者・接触者外来」を設置すること
・電話での相談を通じて、疑い例を帰国者・接触者外来へ確実に受診させるように調整を行う「帰国者・接触者相談センター」を各保健所等に設置すること
を要請しました。帰国者・接触者外来及び帰国者・接触者相談センターについては、同月13日までに全ての都道府県において設置され、その後も体制の整備が進められた。
さらに、同年後半に入り、秋冬のインフルエンザ流行期に備えた新型コロナウイルス感染症の医療体制の整備を図るために、同年9月4日に、それまでの仕組みを改めて、新たに、かかりつけ医等の身近な医療機関に直接電話相談し、地域の「診療・検査医療機関」に受診する仕組み(発熱等の症状のある方の相談・受診の流れ)を同年10月中に整備するよう都道府県等に要請しました。また、従前の「帰国者・接触者相談センター」については、相談する医療機関に迷う発熱患者等に対して、対応可能な最寄りの医療機関を案内する「受診・相談センター」として整備することとしました。直近では、発熱患者等を対象とした診療・検査体制をとる医療機関として、約3万1 千(2021年3月現在)の医療機関が指定されています。
(入院医療体制等)
新型コロナウイルス感染症患者の入院医療体制については、一般医療の確保と両立した持続可能な医療提供体制を整備すべく、取組みを進めてきました。
2020年3月6日に、外来・入院・重症患者数の推計式を各都道府県等に示し、医療需要の目安として活用の上、病床や感染防御に必要な資材、人工呼吸器等の医療機器等の確保を進めていただくよう要請しました。さらに、同月19日に、新型コロナウイルス感染症患者が大幅に増加したときに備えて、
・新型コロナウイルス感染症患者以外の全ての疾患の患者も考慮した地域全体の医療提供体制の整備
・専門的な医療従事者等を集約し、効率的な治療を行う等の観点から、重点的に患者を受け入れる医療機関(「重点医療機関」)の設定、
・患者の受入れ調整等を行うため、救急医療や感染症の専門家が参画する都道府県調整本部(仮称)の設置等を都道府県
等に要請をしました。
同年4月2日には、医療提供体制の対策の移行が行われた際の軽症者等の宿泊施設や自宅での療養については、その対象者や、都道府県等と帰国者・接触者外来等において必要な準備事項に関して示すとともに、軽症者等の宿泊療養マニュアルや、自宅療養を行う場合のフォローアップの手順及び留意点並びに感染管理対策についても各都道府県等宛に周知を行いました(その後もQAやマニュアル等は随時見直しを実施中)。
さらに、同年6月19日には、国内実績を踏まえた新たな患者推計を基に、感染ピーク時のみならず、感染拡大の経過や収束時期も見据え、時間軸を踏まえたフェーズに応じた病床確保・宿泊施設確保の計画を策定して取組みを実施すること、重点医療機関の設定等による受入病床の確保や「疑い患者受入協力医療機関」の設定等を進めて、医療機関間における役割分担を加速させるとともに、適切な搬送手段等も整備することなどを都道府県等に要請をしました。各都道府県等においては、それぞれが策定した計画に沿って、入院等の体制整備が進められ、直近では、約3万の病床と約3万の宿泊療養施設居室が確保されています(2021年3月現在)。
また、2020年8月28日に決定した「新型コロナウイルス感染症に関する今後の取組」 においては、季節性インフルエンザの流行も見据え、軽症者や無症状者について宿泊療養(適切な者は自宅療養)での対応を徹底し、医療資源を重症化リスクのある者等に重点化していくこととされました。このため、感染症法に基づく入院勧告・措置の対象について見直しを行い、同年10月24日に施行された新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令の一部を改正する政令(令和2年政令第310号)及び新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定める等の政令第三条において準用する感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第十九条第一項の厚生労働省令で定める者等を定める省令(令和2年厚生労働省令第172号)により、入院勧告・措置の対象について、高齢者や基礎疾患を有する者など重症化リスクのある者や現に重症である者等が明記されました。
これらの医療提供体制の整備に当たっては、緊急包括支援交付金による病床確保支援 や、医療機関等に対する感染拡大防止等の補助など、累次の補正予算等を合わせて計約 4.6兆円の医療機関支援が措置されました。同年12月25日には、予備費による1床あたり最大1,950万円の医療機関への緊急支援を含めた「病床確保のための政策パッケージ(感染拡大に伴う入院患者増加に対応するための医療提供体制パッケージ)」を示すなど、都道府県と一体となった病床確保の取組みが進められました。
【検査体制の整備】
(検査体制)
PCR検査能力は、1日当たりのPCR検査能力の推移をみると2020年2月頃は1日約2,000件でありましたが、新型コロナウイルス感染症が疑われる事例が増加するにつれて、保健所等においてPCR検査を受けるのに時間を要する状況が生じるようになり、その解消のため、補正予算や予備費を活用し、自治体や民間検査機関とも協力しながら必要な体制の整備が進められて、2021年3月頃には157,000件に推移していきました。
同年4月6日に、政府対策本部において、感染拡大の防止に向けて、PCR検査体制の1日2万件への倍増に向けた施策を講じることとされて、同年5月15日には、厚生労働省より「PCR等の検査体制の更なる強化について」が発表されました。この中で、PCR検査(当時2.2万件/日)と抗原検査(2.6万件/日)の最適な組合せによる検査体制を構築して、相談・受診・検体採取・検査(分析)という一連のプロセスの各段階に目詰まりがないよう点検するなどにより、医師が必要と判断した場合に速やかに検査を実施するとの方針が示されました。
その後、同年6月2日に「新型コロナウイルス感染症に関するPCR等の検査体制の強 化に向けた指針」を発出し、都道府県等に対し、将来の感染拡大の局面も視野において、 検査需要の見通しを作成するとともに、検査体制について、相談、受診・検体採取、検査(分析)までの一連のプロセスを通じた対応の現状と感染拡大ピーク時も含めた検査需要への対応力を点検し、必要な対策を実施することを要請しました*1。
さらに、季節性インフルエンザ流行期に対応した地域の医療機関での簡易・迅速な検査体制の構築に向けて、同年9月15日に「新型コロナウイルス感染症に関する検査体制の拡充に向けた指針」が発出され、同年10月中に新たな検査体制の整備計画の策定及び報告の要請をしました(前述のとおり、発熱患者等を対象とした診療・検査医療機関として、約3 万1千(2021年3月現在)の医療機関が指定されています。)
*1 この間、順次、検査方法の拡充等が実施されて、2020年5月13日に「新型コロナウイルス抗原検出用キットの活用に関するガイドライン」等が発出され、従前のPCR検査に加えて、行政検査において新たに迅速診断が可能な抗原検査(抗原定性検査)の実施が可能となりました。さらに、同年6月25日には「新型コロナウイルス抗原定量検査の取扱について」等が発出され、行政検査における抗原定量検査の実施が可能となりました。
(高齢者施設等への検査の推進)
高齢者施設や医療施設等の入院・入所者は、重症化リスクが高いことから、院内・施設内感染対策の強化が重要であり、高齢者施設等に対して積極的に検査が行われるように、2020年8月、同年9月、同年11月など累次の事務連絡により、都道府県等に対して要請を行って、取組みの推進を図ってきました。
さらに、2021年1月の緊急事態宣言措置区域に該当した10都府県については、同年2 月5日の事務連絡により、高齢者施設の従業者等への検査の集中的実施計画を策定し、同年3月までを目途に実施することとしました。
(つづく)I.K