実践編・応用編

厚生労働省の取組みについて|テクノファ

投稿日:2022年8月14日 更新日:

新型コロナウイルス感染症は、私たちの生活に大きな変化を呼び起こしました。キャリアコンサルタントとしてクライアントを支援する立場でこの新型コロナがどのような状況を作り出したのか、今何が起きているのか、これからどのような世界が待っているのか、知っておく必要があります。ここでは厚生労働省の白書からキャリアコンサルタントが知っておくべき情報をお伝えします。

(4)厚生労働省の取組みについて
感染症対策においては、発生後速やかに患者を治療し、まん延を防止することが重要であるため、国や都道府県では、感染症法上のエボラ出血熱を含む一類感染症の患者の入院を担当する特定感染症指定医療機関や第一種感染症指定医療機関の整備を進めており、2019(平成31)年4月1日時点で全ての都道府県(57医療機関113床)において設置が完了しています。

また、海外の研究機関から分与されたエボラ出血熱ウイルス等の一類感染症の病原体をもとに国立感染症研究所(BSL-4)において患者の診断のための検査法の整備を行いました。
加えて、エボラ出血熱を始めとした、国内でほとんど経験することのない感染症について海外で医療研修を行う「一類感染症等予防・診断・治療研修事業」を実施しており、さらに、国際的に脅威となる感染症の危機管理対応で中心的な役割を担う将来のリーダーを育成するため、2015(平成27)年度から「感染症危機管理専門家(Infectious Disease Emergency Specialist:IDES)養成プログラム」を開設し、国立感染症研究所やWHO等の国内外の関係機関と連携して、人材育成に努めています。

2 麻しん・風しん対策について
麻しんについては、2015(平成27)年3月27日にWHO西太平洋事務局により日本が排除状態にあることが認定されました。
一方で、海外渡航歴のある者や海外からの入国者を発端とする、麻しんの集団発生が散発しており、厚生労働省では、麻しんの発生を意識した診療や、診断した場合の速やかな届出、院内感染対策の実施について、自治体や医療機関に対して注意喚起を行うとともにポスターなどを使用し、普及啓発を継続しています。

2018(平成30)年3月に、海外からの入国者を発端として、沖縄県を中心に麻しん患者の増加が報告された際や2019(平成31)年2月以降、関西地域で麻しん患者の増加が報告された際には、国立感染症研究所から専門家を派遣し、積極的疫学調査を実施するとともに、予防・感染拡大防止策の更なる徹底について自治体や医療機関へ注意喚起を行い、海外渡航者に向けたリーフレットを作成し、自治体や関係省庁等を通じた周知を行いました。厚生労働省では、定期の予防接種を推進する普及啓発や、先天性風しん症候群の予防の観点から妊娠を希望する女性を主な対象とした抗体検査の費用の助成といった取組みを行っています。

さらに、2018年7月以降、風しんの患者数が増加したことを受けて、2018年12月に 「風しんに関する追加的対策」を取りまとめ、これまで定期の予防接種を受ける機会がなく、抗体保有率が他の世代と比べて低い1962(昭和37)年4月2日から1979(昭和 54)年4月1日までの間に生まれた男性を対象に、2022(令和4)年3月31日までの時限措置として、全国において原則無料で抗体検査と予防接種法に基づく定期接種を実施することにより、対象世代の男性の抗体保有率の引上げに取り組んでいます。

3 結核対策について
結核は、かつて「国民病」ともいわれ、我が国の死因第1位を占めるなど、国民の生命と健康を脅かす感染症の一つとして恐れられていました。1951(昭和26)年に結核予防法が制定され、国をあげての取組みにより、患者数が大幅に減少するなど、結核をめぐる状況は飛躍的に改善され、2007(平成19)年には結核予防法を感染症法に統合し、他の感染症とともに総合的な結核対策を行うこととなりました。2014(平成26)年には、感染症法を改正し、保健所や医療機関・薬局などとの連携の強化を法律に位置づけ、結核の患者に対する服薬確認などを通じた支援体制の強化を図ることとしました。

近年では、患者数の減少に伴い、国民の間で「過去の病気」とされ、認識が薄れてきているが、結核患者の発生数の推移を見ると年間約1万4千人の患者が新たに発生するなど、結核は依然として我が国の主要な感染症です。
特に、結核患者の高齢化が進み、結核だけでなく他の疾患を同時に加療する必要があるなど、患者の背景が複雑化しているほか、若年層においても顕著に外国人の結核患者が増加傾向にあるなどの課題も生じてきており、引き続き対策を講ずる必要があります。このほか、患者の減少に伴う結核病床の利用率の低下などにより、結核病棟を閉鎖する医療機関が相次ぐなど、地域によっては結核医療へのアクセスの悪化が懸念されています。

こうした状況を踏まえて、2016(平成28)年11月、「結核に関する特定感染症予防指針」を改正し、直接服薬確認療法(Directly Observed Treatment, short-course:DOTS) を、地域の関係機関が連携し、患者の生活環境に合わせて実施することや、患者数に見 合った結核医療提供体制を確保すること等について盛り込みました。

さらには、第9回厚生科学審議会結核部会(2018(平成30)年2月26日)において、 国内の新規登録患者の40%を占める80歳以上の高齢者への対策強化や結核罹患率の高い国の国籍を有する中長期在留者を対象とした入国前スクリーニングを推進していく方針を固めました。現在、入国前スクリーニングの開始に向けて、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえながら、関係省庁と調整をしているところです。また、入国後の日本滞在中に発病される患者も多数いるため、職場や学校、各自治体の実施している健診等の対策を進めることが重要です。

厚生労働省としては、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえながら、健康診断、公費負担医療、予防接種、DOTSによる対策、地域医療連携体制の強化、入国前スクリー ニングなど、総合的な結核対策を推進していきます。 また、予防接種については、2013(平成25)年度から、予防接種による小児結核の予防効果、予防接種による副反応(骨炎、骨髄炎)、予防接種スケジュールの観点から検討して、その対象者を「生後6月に至るまでの間にある者」から「生後1歳に至るまでの間にある者」に変更をしました。

4 エイズ(AIDS/後天性免疫不全症候群)
対策について 国連合同エイズ計画(Joint United Nations Programme on HIV/AIDS:UNAIDS)によると、全世界のヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus:HIV)感染者は、2019(令和元)年末で3,800万人に上ると推計されています。
我が国の新規HIV感染者・エイズ患者報告数の推移と新規HIV感染者・エイズ患者の状況を見ると、2019年の新規HIV感染者/エイズ患者報告数は1,236件となり、累積HIV感染者報告数は21,739件、累積エイズ患者報告数は9,646件(いずれも血液凝固因子製剤の投与に起因する感染者数1,440件を除きます。)となっています。新規HIV感染者/エイズ患者報告数は、2018(平成30)年より減少しており、3年連続での減少となりました。そのうち、エイズを発症した状態でHIVに感染していると診断される者が約3割を占めており、これは多くの人がHIVに感染していることを早期に発見するための検査の受診機会を逸していることによるものであると考えられます。こうした状況を踏まえ、引き続きエイズ対策の充実・強化が必要です。また、新型コロナウイルス感染症の状況も踏まえながら、各自治体や医療機関等と連携し十分なHIV検査体制の構築に努めていきます。

我が国のエイズ対策は、「後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針」(平成 24年厚生労働省告示第21号)(以下「エイズ予防指針」という。)に沿って講じられてきました。
エイズ予防指針は、発生動向の変化等を踏まえてこれまで3回の見直しを行い、直近の改正では、保健所で行う無料匿名のHIV検査等について夜間・休日検査回数の増加などの検査機会拡大のための取組みの強化、長期療養者に対応するための介護・福祉サービスとの連携強化等を盛り込み、2018年1月から施行しました。国と地方の役割分担の下、人権を尊重しつつ、普及啓発及び教育、検査・相談体制の充実、医療の提供などの施策を進めています。
(つづく)I.K

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