実践編・応用編

性感染症対策について|テクノファ

投稿日:2022年8月15日 更新日:

新型コロナウイルス感染症は、私たちの生活に大きな変化を呼び起こしました。キャリアコンサルタントとしてクライアントを支援する立場でこの新型コロナがどのような状況を作り出したのか、今何が起きているのか、これからどのような世界が待っているのか、知っておく必要があります。ここでは厚生労働省の白書からキャリアコンサルタントが知っておくべき情報をお伝えします。

5 性感染症対策について
性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ、梅毒、淋菌感染症(以下「性感染症」といいます。)は、性的接触を介して誰もが感染する可能性があり、生殖年齢にある男女を中心とした大きな健康問題です。特に梅毒については、2011(平成23)年以降報告数が増加しており、2017(平成29)年には、1973(昭和48)年以来、 44年ぶりに報告者数が5,000件を超え、2018(平成30)年には7,000件を超えた。2020(令和2)年は若干減少し、5,700件ほどとなりましたが、依然5,000件以上の報告が続いています。性感染症は、感染しても無症状であるか症状が軽く、感染者が治療を怠りやすいという特性があることから、本人に自覚がないまま、感染が拡大する可能性や、感染者本人にとって不妊などの後遺障害、生殖器がんの要因となる場合があること等も問題です。

性感染症のまん延を防止するための具体的な対策としては、保健所での性感染症検査や性感染症に関する相談・普及啓発事業について、都道府県等に対して補助を実施し、毎年11月25日から12月1日の間を「性の健康週間」と位置づけ、性感染症予防のための普及啓発活動を特に集中的に行うなどの取組みを行っています。
また、2012(平成24)年6月に厚生労働省ホームページに開設した、性感染症に関する専用ページにおいて、性感染症に関する情報発信に努めています。加えて、発生動向 に関する疫学調査や検査・治療等に関する研究開発を関係機関と連携して取り組んでいます。

なお、性感染症対策については、「性感染症に関する特定感染症予防指針」(平成12年厚生省告示第15号)を踏まえて、コンドームなどによる性感染症の予防効果などに関する情報提供を進め、性器クラミジア感染症、淋菌感染症についてはより精度の高い病原体検査を推進していくこと、学会などと連携して医療の質を向上させること、性感染症検査の奨励など、更に対策を推進していきます。

6 薬剤耐性(Antimicrobial Resistance:AMR)対策について
1980年代以降、ヒトに対する抗微生物薬の不適切な使用等を背景として、病院内を中心に、抗微生物薬が効かない新たな薬剤耐性菌が増加した。こうした抗微生物薬が効かなくなる薬剤耐性(AMR)の問題については、2011(平成23)年、WHOが世界保健デーで取り上げ、ワンヘルス・アプローチ(ヒト、動物といった垣根を超えた世界規模での取組み)に基づく世界的な取組みを推進する必要性を国際社会に訴え、2015(平成27)年5月の世界保健総会では、AMRに関するグローバル・アクション・プランが採択されました。翌月のドイツG7エルマウサミット、2016(平成28)年のG7伊勢志摩サミット、G7神戸保健大臣会合においても、AMRが主要課題の一つとして扱われ、ワンヘルス・アプローチの強化や新薬等の研究開発の必要性等について議論されました。

我が国では、これまでも、主要な薬剤耐性感染症を感染症法上の五類感染症に位置づけたほか、医療法、診療報酬等に院内感染対策を位置づけ、院内感染対策サーベイランス事業を実施する等の取組みを推進してきましたが、2015年、我が国の国家行動計画である薬剤耐性(AMR)対策アクションプランを取りまとめるべく、厚生労働省に薬剤耐性(AMR)タスクフォースを設置し、有識者等による検討を重ね、また、「国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議」(以下「関係閣僚会議」といいます。)の枠組みの下に、「薬剤耐性(AMR)に関する検討調整会議」を設置し、政府一体で検討を行いました。このような経緯を踏まえて、2016年4月の関係閣僚会議において、我が国でAMR対策を推進するに当たって今後5年間で実施すべき事項をまとめたものとして、「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」*2が取りまとめられました。

本アクションプランでは、2020(令和2)年までに実施すべき事項を、普及啓発・教 育、動向調査・監視、感染予防・管理、抗微生物薬の適正使用、研究開発、国際協力の6つの分野に分けてまとめ、同時に、ヒト・医療分野、動物・畜産分野において、抗微生物薬使用量の削減や薬剤耐性率の低下等の成果指標を示しており、これらの目標を達成するため具体的な施策を進めています。特に、ヒトに関しては、2020年の人口1,000人当たりの一日の抗菌薬使用量を、2013(平成25)年の水準の三分の二に減少させることを目標としています。現在、現行のアクションプランの評価、次期アクションプランの策定の検討を行っていますが、次期アクションプランの策定まで現行のアクションプランに基づいてAMR対策を行っていきます。

このような状況を踏まえて、厚生労働省では2019(令和元)年、「抗微生物薬適正使 用の手引き第二版」*3を作成し、自治体、関係団体に配布するとともに、AMR臨床リファレンスセンターを設置し、AMRに関する情報収集及び教育啓発に係る業務を開始しました。また、2020年に、日本におけるヒト、動物、環境各分野の微生物の薬剤耐性率や抗微生物薬の使用量等の状況等のデータを統合した「薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書」*4を発表し、2019年の全抗菌薬使用量が2013(平成25)年と比較して10.9%減少したことを確認しました。さらに、国際協力の一環としては、2017(平成29)年11月と2019(平成31)年2月にAMRワンヘルス東京会議を開催し、アジア諸国や国際機関の担当者と、各国のアクションプランの進捗状況の確認や、抗菌薬適正使用の推進及びワンヘルス・サーベイランス体制の構築に関する支援の在り方について議論を行いました。2020年には第三回AMRワンヘルス東京会議を開催し、2016年4月に開催されたAMRアジア保健大臣会合にて、「AMRに関するアジア太平洋ワンヘルス・イニシアチブ(ASPIRE)」の創立及び優先課題としてあげられた4つの項目である、サーベイランスシステムと検査機関ネットワーク、医療マネジメント、抗微生物剤のアクセスと規制、研究開発に対してワーキンググループを設置し、AMR対策を推し進めていくこととなりました。

*2 「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000120769.pdf
*3 「抗微生物薬適正使用の手引き 第二版」 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000573655.pdf
*4 「薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書2019」 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000571553.pdf

7 インフルエンザ対策について
(1)2020/2021シーズンのインフルエンザの流行状況と総合対策について
インフルエンザは冬季を中心に毎年流行する感染症の一つであり、その病原体の感染力が強いため、日本国内では毎年約1,500万人前後が、つまり、国民の約10人に1人の割合で、インフルエンザに罹患しています。
2009(平成21)年に発生した新型インフルエンザ(A/H1N1)についても、2011(平 成23)年3月31日に、感染症法に定める「新型インフルエンザ等感染症」として認められなくなった旨の公表を行い、その後は季節性インフルエンザ対策の一環として対応しています。

2018/2019シーズンのインフルエンザの流行状況については、2018(平成30)年第49 週(12月3日の週)に、全国の定点当たりの患者数*5が、流行入りの基準となる1を超え1.70となって流行入りし、2019(平成31)年第4週(1月21日の週)に、当該患者数が 57.09まで上昇し、流行のピークを迎えました。2019/2020シーズンの流行状況については、2019(令和元)年第45週(11月4日の週)に例年よりも早く流行入り(1.03)し、2019年 第52週(12月23日の週)に当該患者数が23.24と流行のピークを迎えました。2020/2021シーズンについては、当該患者数が流行入りの基準となる1を超えませんでした。

厚生労働省では、インフルエンザの流行に備えて、2020(令和2)年11月に「今冬の インフルエンザ総合対策」を取りまとめ、厚生労働省のホームページにインフルエンザに関する情報を掲載した専用のページを開設*6をしました。流行状況や予防接種に関する情報を提供するとともに、日常的な予防を啓発するポスター、ツイッター、動画などを用いた感染予防の普及啓発を行っています。

*5 全国約5,000か所のインフルエンザ定点医療機関から報告された1医療機関あたりの外来患者数
*6 令和2年度今冬のインフルエンザ総合対策について 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/influenza/index.html
(つづく)K.I

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