キャリアコンサルタントは、企業、学校、就業、地域などの領域で人(クライアント)からの相談に応じて、クライアントの持っている課題に的確にアドバイスをする役割を担っていますので、社会的に公平で倫理観の強いことが要求されています。
特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会では、「キャリアコンサルタント倫理綱領」を定め、キャリアコンサルタントにこの綱領を行動指針とすることを求めています。
以下に「キャリアコンサルタント倫理綱領」を掲げます。
―序 文―
特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会(以下、協議会)は、キャリアコンサルタントの養成等に関わる団体を会員とし、キャリアコンサルティング技能検定の実施、キャリアコンサルタントの能力の維持・向上、キャリアコンサルティングの普及啓発等の事業に取り組んでいます。
この度、「勤労青少年福祉法等の一部を改正する法律(平成27年法律第72号)」の公布に伴い「職業能力開発促進法」の一部改正が行われ、キャリアコンサルタントの国家資格化・登録制度の創設が行われました。
改正職業能力開発促進法において、キャリアコンサルティングは、「労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うこと」、キャリアコンサルタントは、「キャリアコンサルタントの名称を用いて、キャリアコンサルティングを行うことを業とする」と明記されています。キャリアコンサルタントは、名称独占資格である国家資格保有者として、「個人の人生設計に関わること」の責任と重要性を従前にも増して自覚し、一層高い倫理観を持って活動することが求められます。
指定登録機関及び技能検定指定試験機関である協議会は、キャリアコンサルタント及びキャリアコンサルティング技能士が相談者、組織、社会の信頼を得て自らの職業倫理を高め確かなものにする拠り所として、ここに「キャリアコンサルタント倫理綱領」を制定することにしました。本倫理綱領は、第1章にキャリアコンサルタントが自らを律する「基本的姿勢・態度」、第2章に相談者等との関係で遵守すべき「職務遂行上の行動規範」を示しています。
本倫理綱領は、協議会に設置した倫理綱領委員会で制定し、協議会(技能士会を含む)及び協議会に加盟する会員団体の総意として発信するものです。
平成28年4月1日
特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会 倫理綱領委員会
―本 文―
前 文
キャリアコンサルタントは、労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うことを職務とする。キャリアコンサルタントの使命は、相談者のキャリア形成上の問題・課題の解決とキャリアの発達を支援し、もって組織および社会の発展に寄与することである。その使命を果たすための基本的な事項を「キャリアコンサルタント倫理綱領」として定める。
全てのキャリアコンサルタントは、本倫理綱領を遵守するとともに、誠実な態度と責任感をもって、その使命の遂行のために職務に励むものとする。
第1章 基本的姿勢・態度
(基本的理念)
第1条 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングを行うにあたり、人間尊重を基本理念とし、個の尊厳を侵してはならない。
2 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングが、相談者の生涯にわたる充実したキャリア形成に影響を与えることを自覚して誠実に職務を遂行しなければならない。
(品位の保持)
第2条 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルタントとしての品位と誇りを保持し、法律や公序良俗に反する行為をしてはならない。
(信頼の保持・醸成)
第3条 キャリアコンサルタントは、常に公正な態度をもって職務を行い、専門家としての信頼を保持しなければならない。
2 キャリアコンサルタントは、相談者を国籍・性別・年齢・宗教・信条・心身の障害・社会的身分等により差別してはならない。
3 キャリアコンサルタントは、相談者の利益をあくまでも第一義とし、研究目的や興味を優先してキャリアコンサルティングを行ってはならない。
(自己研鑽)
第4条 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングに関する知識・技能を深める、上位者からの指導を受けるなど、常に資質向上に向けて絶えざる自己研鑽に努めなければならない。
2 キャリアコンサルタントは、組織を取り巻く社会、経済、環境の動向や、教育、生活の場にも常に関心をはらい、専門家としての専門性の維持向上に努めなければならない。
3 キャリアコンサルタントは、より質の高いキャリアコンサルティングの実現に向け、他の専門家とのネットワークの構築に努めなければならない。
(守秘義務)
第5条 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングを通じて、職務上知り得た事実、資料、情報について守秘義務を負う。但し、身体・生命の危険が察知される場合、又は法律に定めのある場合等は、この限りではない。
2 キャリアコンサルタントは、キャリアコンサルティングの事例や研究の公表に際して、プライバシー保護に最大限留意し、相談者や関係者が特定されるなどの不利益が生じることがないように適切な措置をとらなければならない。
(誇示、誹謗・中傷の禁止)
第6条 キャリアコンサルタントは、自己の身分や業績を過大に誇示したり、他のキャリアコンサルタントまたは関係する個人・団体を誹誘・中傷してはならない。
(つづく)A.K