3 教育領域(学校における学生のキャリア開発・形成および就職相談)
「キャリアコンサルティング研究会」では、教育領域として大学と専門学校のヒアリング調査をしています。大学では、キャリア教育部会におけるヒアリング時に併せて行っており、キャリアコンサルタント活用側として 8 大学を対象とし、 その8大学で活躍するキャリアコンサルタント 20 名に調査を実施しています。専門学校では、 キャリアコンサルタント活用側として 1つの専門学校を対象とし、キャリアコンサルタント2 名を対象としています。期待される「役割」、必要な「能力」、「育成策、キャリア・パス」等について、アンケートを取っています。対象となったキャリアコンサルタントは、大学の場合は主にキャリア・センターに勤務している者、専門学校の場合は就職部等に勤務している者です。教育領域で活躍するキャリ アコンサルタントは、主に期待されている役割が学生の就職支援、キャリア教育であり、必要とされている能力は、個別面談スキル、学生を相手とした柔軟なコミュニケーション能力などのほか、学校の状況や教育方針の理解を前提とした企画立案などをも求められています。 さらに、就職活動支援が期待されている以上、職種・業界に関する知識や労働関係 法令に関する知識も必要との意見も聞かれました。 なお、課題としては、「大学等とキャリア・センター、キャリアコンサルタントの間の認識にギャップがある」、「授業との連携が不足している」、「地方には学習機会がない」、「必要な情報を得るのに労力・時間を要する」などが上げられています。さらに、キャリアコンサルタントからは「雇用形態が不安定」や「大学等のキャリア コンサルティングについての認識の不足」などもあげられています。 総じて、教育領域においては、企業領域と需給調整機関領域との中間であり、期待されている役割は、大学等によって異なるものの、学習自体は、比較的学ぶべきことが明確であり、かつ周囲に同僚等もいる場合が多いことから、条件さえ整えば、学習しやすい環境にあるとみられます。
教育現場における就職相談でもっとも多いのは、高校や大学において学生を対象としたキャリア開発・形成の支援と就職の支援です。学生に対してキャリアの意味あるいはキャリア開発・形成の意味・意義を正しく伝えることによって就労意識の醸成を援助したり、有益な就職情報を提供したりすることによって、キャリア・トランジションにおける効果的な支援を行うことが出来ます。また、学校におけるキャリア開発・形成の支援は、就職期を迎える高校生や大学生の就職支援だけとは限りません。児童・生徒・学生に対して実施するキャリア教育プログラムは、中学校におけるキャリアスタートウィーク(職場体験)等、段階に応じて実施されています。小学校、中学校でのキャリア自覚を高める教育は教職員によって運用されているものだけではなく、キャリアコンサルタントが支援して運用されている場合もあります。
<具体的な活動例 >
①企業や業界団体とのコネクションをつくること。この活動には、企業や業界についての知識を収集することも含まれます。前回の公共需給調整機関における職業相談/紹介サービスを参照してください。
②学生本人がどうありたいのか、どうしてそうなりたいのか、どうして就職したいのか、なぜ働くのか、などという本人の内的キャリアに焦点をあて、しっかり受け止め、直面している問題をサポートすること。
→学生の場合には、外的な面に目が向く傾向が強いため、内的キャリアが特に重要になります。
③上記②を実現するために傾聴と適切な助言(啓発的、教育的な関わり)をすること。ただし、文字どおりのアドバイスを行うのではなく、本人に何か気づいてもらうことを心がけること。
→本人自らの意思決定が重要です。
④学生のキャリア教育プログラムを構築すること。効果的なキャリア開発・形成の援助は、就職活動をする時期になってからでは遅すぎます。大学あるいは高校入学時からキャリア開発・形成の援助を始めることによって、キャリア自覚が醸成されます。そのため、インターンシップを含む適切なキャリア教育を実施する必要があります。
→ここでもキャリア教育も、内的キャリア自覚を醸成することに重点を置くことが望まれます。
⑤教職員も含めて、学内にキャリア教育の重要性に対する認識がない場合には、教職員を対象にした啓発活動を行うこと。
→学生のキャリア支援は、組織全体の課題としてとらえなければなりません。
(つづく)平林良人