キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを行う際に必要な知識とそれを補う資料について、メンタルヘルス、自殺・過労死、ハラスメント等に関する知識、資料として令和3年版自殺対策白書を前回の続きから説明します。
⑵ 月別自殺者数の推移
令和2年における月別自殺者数の推移をみると、自殺統計によれば、「10月」が最も多く、「2月」が最も少なくなっている。また、1月、7~12月で前年の自殺者数を上回り、2~6月で前年を下回った。また、男女別の月別の自殺者数の推移をみると、自殺統計によれば、男性、女性ともに「10月」に自殺者数が最も多くなっている。また、自殺者数が最も少ない月は、男性、女性ともに「2月」となっている。1か月間の日数の影響を排除するため、令和2年における月別の一日平均自殺者数をみると、自殺統計によれば、「10月」が最も多くなっており、「4月」が最も少なくなっている。
⑶ 男女別の状況
令和2年における男女別の自殺者の状況をみると、自殺統計によれば、自殺者全体の男女別構成比は男性が66.7%となっている。また、年齢階級別にみると、全ての階級において男性の占める割合が高く、30歳代では男性が7割を超えている。
⑷ 年齢階級別の状況
令和2年における年齢階級別の自殺者数をみると、自殺統計によれば、男性では40歳代が最も多く、女性では70歳代が最も多くなっている。また、40歳代及び50歳代の男性で全体の4分の1弱を占めている。
⑸ 職業別の状況
令和2年の職業別の自殺の状況をみると、自殺統計によれば、「無職者」が最も多い。「無職者」の内訳をみると、「年金・雇用保険等生活者」が最も多く、次いで「その他の無職者」、「主婦」、「失業者」の順となっている。さらに、年齢階級別、職業別の自殺者数をみると、自殺統計によれば、総数では「40歳代」及び「50歳代」が3,500人前後で、自殺者数の多い階層となっている。「自営業・家族従業者」では「40歳代」から「60歳代」、「被雇用者・勤め人」では「20歳代」から「50歳代」、「無職者」では「70歳代」以上が多いなど、職業によって自殺者数の多い年代は異なる。
⑹ 原因・動機別の状況
令和2年における年齢別、原因・動機別の自殺者数をみると、自殺統計によれば、「家庭問題」は男性、女性ともに「40歳代」と「50歳代」が多い。「健康問題」については、男性、女性ともに「70歳代」が多い。「経済・生活問題」については、男性の方が女性よりも著しく多く、中でも「40歳代」と「50歳代」で多い。「勤務問題」についても、男性の方が女性よりも著しく多く、「20歳代」から「50歳代」で多い。「男女問題」は「20歳代」から「40歳代」で多い。
職業別、原因・動機別の状況をみると、自殺統計によれば、「自営業・家族従業者」は「経済・生活問題」と「健康問題」が多く、「被雇用者・勤め人」は「健康問題」と「勤務問題」が多い。「学生・生徒等」は「学校問題」と「健康問題」が多く、「無職者」は「健康問題」が著しく多い。
⑺ 都道府県別の状況
令和2年における都道府県別の自殺の状況をみると、自殺統計によれば、自殺者数については前年に比べ、14道県で減少、31都府県で増加、2県で横ばいとなっている。また、自殺死亡率についてみると、前年に比べ、14道県で低下、33都府県で上昇となっている。
⑻ 手段別の状況
令和2年における手段別の自殺の状況について、自殺統計によれば、男性では「首つり」(68.6%)が最も多く、次いで「飛降り」(9.7%)、「練炭等」(7.8%)となっており、女性では「首つり」(64.4%)が最も多く、次いで「飛降り」(13.4%)、「入水」(5.1%)となっている。また、男女別・年齢階級別でみると、男性、女性ともに全ての階級で「首つり」が最も多い。男性については、「首つり」に次いで、19歳以下では「飛降り」、「飛込み」、20歳代から50歳代では「練炭等」、「飛降り」、60歳代では「飛降り」「練炭等」、70歳代では「飛降り」「入水」、80歳以上では「飛降り」「刃物」及び「入水」の順で多くなっている。女性については、「首つり」に次いで、19歳以下では「飛降り」、「飛込み」、20歳代から40歳代では「飛降り」「練炭等」、50歳代、60歳代では「飛降り」「入水」、70歳代では「入水」「飛降り」、80歳以上では「飛降り」「入水」の順で多くなっている。
⑼ 場所別の状況
令和2年における場所別の自殺の状況について、自殺統計によれば、「自宅」(59.3%)が最も多く、次いで「高層ビル」(7.0%)、「その他」(6.5%)となっている。男女別にみると、男性については、「自宅」(56.0%)、「その他」(7.3%)、「乗物」(7.0%)などとなっている。女性については、「自宅」(66.0%)、「高層ビル」(9.6%)、「海(湖)・河川」(5.6%)などとなっている。年齢階級別にみると、男女とも全ての階級において「自宅」が最も多いが、男性については、「自宅」に次いで、20歳代から40歳代までは「乗物」、19歳以下及び60歳代では「高層ビル」、50歳代では「その他」、70歳代では「海(湖)・河川」、80歳以上では「福祉施設」及び「その他」が多くなっている。女性についても、「自宅」に次いで、19歳以下から60歳代までは「高層ビル」、70歳代では「海(湖)・河川」、80歳以上では「福祉施設」が多くなっている。
⑽ 曜日別の状況
令和2年における発見曜日別一日平均自殺者数について、自殺統計によれば、男性、女性ともに「月曜日」(男性46.9人、女性21.4人)が最も多く、次いで、男性は「火曜日」(41.7人)、女性は「水曜日」(19.9人)が多くなっている。また、男性女性ともに「土曜日」(31.3人、17.2人)が最も少なくなっている。
〇 7 同居人・配偶関係別の自殺の状況
令和2年における同居人別の自殺の状況について、自殺統計によれば、男性、女性ともに、全ての年齢階級で、同居人「あり」が多くなっている。
次に、令和元年における配偶関係別の自殺死亡率の状況をみると、男女とも「有配偶者」は全ての年齢階級で各年代別の総数よりも低くなっている一方、50歳代の女性を除き、「未婚」、「死別」、「離別」は各年代別の総数よりも高くなっている。特に、男性の「離別」が高くなっている。
〇 8 自殺未遂の状況
令和2年における自殺者の自殺未遂歴の有無について、自殺統計によれば全ての年齢階級で、自殺未遂歴が「あり」の者の割合は、女性が高くなっている。女性の20歳代及び30歳代では、自殺未遂歴「あり」が40%以上となっている。また、男女別にみると、自殺未遂歴が「あり」の者の割合について男性では30歳代、女性では20歳代が最も高い。次に、消防庁の救急・救助の現況によれば(、自損行為による救急自動車の出動件数及び搬送人員は共に増加傾向にあったが、平成21年をピークに30年まで減少していた。令和元年における自損行為の状況については、救急自動車の出動件数は5万2,286件であり、前年に比べ292件(0.6%)増加した。搬送人員は3万5,545人であり、前年に比べ389人(1.1%)増加している。また、搬送人員総数に占める自損行為の搬送人員の比率は、近年減少傾向にあり、令和元年は0.6%となっている。
〇 9 東日本大震災に関連する自殺の状況
令和2年における東日本大震災に関連する自殺の状況について、自殺統計によれば、総数は5人で、前年に比べ11人減少した。県別にみると、岩手県は2人減少、宮城県は横ばい、福島県は9人減少した。年齢階級別にみると、60歳代が大きく減少した。職業別にみると、「その他の無職者」が大きく減少した。原因・動機別にみると、「健康問題」及び「家庭問題」が大きく減少した。
〇 10 国際的に見た自殺の状況と外国人の自殺の状況
⑴ 国際的にみた自殺の状況
先進国(G7)の自殺死亡率について世界保健機関によれば、日本16.1、米国14.7、フランス13.1、ドイツ11.6、カナダ11.3、英国7.3、イタリア6.5となっている。世界保健機関の統計によれば、諸外国の自殺死亡率は、総数では韓国が26.9で最も高く、次いで、リトアニアが23.5、スロベニアが19.1と続いており、我が国は、総数では7番目に高くなっている。男女別にみると、我が国は、男性が15番目、女性が2番目となっている。我が国の年間自殺者数は男性が約7割を占めて多く、諸外国をみても男性の方が自殺死亡率は高くなっているが、諸外国との比較でみると、我が国の女性の自殺死亡率の高さが目立っている。
⑵ 外国人の自殺の状況
人口動態統計によれば、令和元年における国内の外国人の自殺者数は224人で、国籍の内訳では、韓国・朝鮮が105人で46.9%を占めている。
(つづく)A.K