キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを行う際に必要な知識とそれを補う資料について、メンタルヘルス、自殺・過労死、ハラスメント等に関する知識、資料について説明しています。
■令和3年版過労死等防止対策白書
過労死等防止対策白書は、過労死等防止対策推進法(平成 26 年 6 月 27 日法律第 100 号)第6条の規定に基づき、我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況について毎年、国会に提出する年次報告書です。
厚生労働省のサイト
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/jisatsuhakusyo2021.html
とそのリンク先資料より白書の内容を編集記載します。
第1章 労働時間やメンタルヘルス対策等の状況
(1)労働時間等の状況
我が国の労働者1人当たりの年間総実労働時間は緩やかに減少している。令和2(2020)年は前年比 48 時間の減少となっており、8年連続で減少している。
総実労働時間を所定内労働時間、所定外労働時間の別にみると、所定内労働時間は長期的に減少傾向が続いている一方、所定外労働時間は、平成 22(2010)年以降、120~132 時間の範囲で増減を繰り返していたが、令和2年は110時間と前年比 17 時間の減少となった。
一般労働者とパートタイム労働者の別にみると、一般労働者の総実労働時間は平成 21(2009)年以降10年ぶりに2,000時間を下回った令和元年から更に減少して 1,925 時間となり、パートタイム労働者の総実労働時間も減少傾向が顕著となり 953 時間となった。なお、パートタイム労働者の割合は、近年、増加傾向にあることから、近年の労働者1人当たりの年間総実労働時間の減少は、パートタイム労働者の割合の増加の寄与が大きいと考えられる。
長時間労働者に着目し総務省「労働力調査」で雇用者(非農林業)の月末1週間の就業時間別の雇用者の割合の推移をみると、1週間の就業時間が60時間以上である者の割合は、最近では平成15(2003)、16 年の12.2%をピークとして減少傾向にある。令和2年は5.1%と前年比で1.3ポイント減少しており、月末1週間の就業時間が60時間以上である雇用者数は 292 万人と前年比で約82 万人減少している。
月末1週間の就業時間が60時間以上の就業者の割合の推移を性別、年齢層別にみると、全年代の男性のうち、40 歳代、30 歳代で週 60 時間以上就業している者の割合が高く、令和2年は40歳代男性で10.4%、30歳代男性で10.2%となっている。一方、女性については、20歳代で週60時間以上就業している者の割合が2.5%と、次に高い年代である30 歳代及び 50歳代(2.2%)と比較しても 0.3 ポイント高い。月末1週間の就業時間が 60 時間以上の雇用者の割合については、性別、年齢層別にみても、30 歳代、40 歳代の男性で週 60時間以上就業している者の割合が高く、令和2年は、40歳代男性で9.9%、30歳代男性で9.8%となっている。
次に、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(令和3(2021)年 7 月 30 日閣議決定。)において、数値目標の対象とされている月末1週間の就業時間が40時間以上である雇用者のうち、その就業時間が60時間以上である者の割合をみると、平成15 年をピークとして平成18(2006)年に大きく減少した後、平成 22(2010)年の微増を除き、緩やかな減少傾向を示しており、令和2年は9.0%と初めて10%を下回った。なお、大綱において令和7(2025)年までに週労働時間40時間以上の雇用者のうち、週労働時間 60時間以上の雇用者の割合を5%以下とすることを目標としている。
就業者について、月末1週間の就業時間が40 時間以上である就業者のうち、その就業時間が60 時間以上である者の割合の推移を性別、年齢層別にみると、就業者全体に占める割合(月末1週間の就業時間が40時間以上である就業者以外も含む。)と同様、全年代の男性のうち、30 歳代、40 歳代において、その割合が高くなっている。また、女性については、60 歳以上で割合が高くなっている。雇用者に占める割合をみても、男性については、30歳代、40歳代で、女性については、60歳以上でその割合が高い。
月末1週間の就業時間が60時間以上の雇用者の割合を企業の従業者規模別にみると、規模により大きな差異はないが、令和2年は、おおむね規模が小さいほど、その割合が高い。また、週の就業時間が40時間以上である雇用者のうち、月末1週間の就業時間が60時間以上の雇用者の割合を企業の従業者規模別にみると、平成25(2013)年以降は、おおむね規模が小さいほど、その割合が高い。
月末1週間の就業時間が60時間以上の雇用者の割合を業種別にみると、令和2年は、「運輸業、郵便業」、「教育、学習支援業」、「建設業」の順にその割合が高く、「複合サービス事業」、「医療,福祉」の順にその割合が低い(ただし「鉱業、採石業、砂利採取業」を除く。)。また、令和2年の割合について、令和元(2019)年と比較すると、多くの業種で減少しているが、「電気・ガス・熱供給・水道業」や「医療、福祉」では減少幅が 0.5 ポイントと小さく、「金融業,保険業」では微増している。
次に、厚生労働省「就労条件総合調査」により、年次有給休暇の状況をみると、取得日数は、平成 9(1997)年から平成19(2007)年まで微減傾向が続き、平成 20(2008)年以降増減しながらも微増傾向にあり、平成31年は10.1日と前年比0.7日の増加となり、初めて10日を上回った。また、取得率は、平成12(2000)年以降5割を下回る水準で推移していたが、平成29(2017)年には5割を上回り、令和元年は56.3%と、前年比3.9 ポイントの増加となっている。なお、大綱において、令和7年までに年次有給休暇取得率を70%以上とすることを目標としている。
労働者1人当たりの平均年次有給休暇取得率を企業規模別にみると、平成22年以降は規模が大きいほど、年次有給休暇の取得率は高い傾向にある。
また、平成31(2019)年の労働者1人当たりの平均年次有給休暇取得率を産業別にみると、「電気・ガス・熱供給・水道業」、「複合サービス事業」、「製造業」、「情報通信業」の順に高くなっており、「宿泊業,飲食サービス業」、「卸売業,小売業」、「建設業」の順に低くなっている。
年次有給休暇の計画的付与制度がある企業の割合をみると、令和2年は調査産業全体で43.2%と前年比21.0ポイントの増加となっている。また、企業規模別にみると、規模が大きいほど年次有給休暇の計画的付与制度がある企業の割合が高い傾向で推移しているが、令和2年は前年と比べ全ての企業規模で大きく増加し、その差異が 4.7 ポイントに縮まっている。
勤務間インターバル制度(終業時刻から次の始業時刻までの間に一定時間以上の休息時間を設けることについて就業規則又は労使協定等で定めているもの)について、制度を導入している企業の割合は、令和2年で4.2%と前年の3.7%から0.5 ポイントの増加となっている。また、制度の導入の予定はなく、検討もしていない企業のうち、導入していない理由として「制度を知らなかったため」と回答した企業の割合は、令和2年で13.7%となっており、回答企業全体で10.7%となっている。産業別に制度の導入の予定はなく、検討もしていない企業のうち、導入していない理由として「制度を知らなかったため」と回答した企業の割合をみると、「宿泊業、飲食サービス業」、「運輸業、郵便業」の順にその割合が高く、「電気・ガス・熱供給・水道業」、「金融業、保険業」、「情報通信業」の順にその割合が低い。なお、大綱において、令和7年までに勤務間インターバル制度を知らなかった企業割合を5%未満とすること、同制度を導入している企業割合を 15%以上とすることを目標としている。
年平均労働時間を国際比較すると、我が国は、欧州諸国より長く、また、週49時間以上働いている労働者の割合が高い。男性については、特にその割合が高い。
(つづく)A.K