キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを行う際に必要な知識とそれを補う資料について、メンタルヘルス、自殺・過労死、ハラスメント等に関する知識、資料について説明していますが今回は、令和3年版過労死等防止対策白書について前回の続きから説明します。
職場のハラスメントの問題については、全国の総合労働相談コーナーに寄せられた「いじめ・嫌がらせ」の相談件数が相談内容別で9年連続最多となるなど、社会問題として顕在化している。
具体的には、総合労働相談コーナーにおいて、民事上の個別労働紛争に係る相談を令和2年度中に347,546件受け付けているが、そのうち、職場での「いじめ・嫌がらせ」に関する相談受付件数は、79,190 件(22.8%)を占めている。
地方公共団体においてメンタルヘルス対策に取り組んでいる部局の割合は、令和元年度は94.2%となっている。団体区分でみると、都道府県及び指定都市では100.0%、市区では99.2%、町村では 88.1%となっている。また、取組内容をみると、「職員等への教育研修・情報提供」(65.6%)が最も多く、次いで、「安全衛生委員会等で調査審議」(59.2%)となっている。
また、地方公共団体において事業場の規模に関わらずストレスチェックを集団分析して、その結果を活用した事業場の割合は69.7%(令和元年度)となっている。
3 自殺の状況
我が国の自殺者数は、平成10(1998)年以降14 年間連続して3万人を超えていたが、平成22(2010)年以降は減少が続いていた。しかしながら、令和2(2020)年は 21,081 人と前年比912人の増加となっている。勤務問題を原因・動機の1つとする自殺者の数は、近年、ほぼ横ばいの状況にあり、令和2年は 1,918 人と前年比 31 人の減少となっている。
また、自殺者数総数に対する、勤務問題を原因・動機の1つとする自殺者の割合は平成19(2007)年以降の推移をみると、おおむね増加傾向にあるが、令和2年は 9.1%と減少した。
職業別にみると、被雇用者・勤め人(有職者から自営業・家族従業者を除いたもので、会社役員等を含む。以下同じ。)の自殺者数は、令和2年では 6,742 人と前年比 540 人の増加となっている。
勤務問題が原因・動機の一つと推定される自殺者数の推移を原因・動機の詳細別にみると、「職場の人間関係」(27.2%)、「仕事疲れ」(26.6%)、「仕事の失敗」(16.3%)、「職場環境の変化」(14.2%)の順となっている。
勤務問題が原因・動機の一つと推定される自殺者数の推移を職業別にみると、「被雇用者・勤め人」(82.5%)、「無職者」(9.7%)、「自営業・家族従業者」(7.4%)の順となっている。
勤務問題が原因・動機の一つと推定される自殺者数の推移を年齢層別にみると、「40~49歳」(25.5%)、「50~59歳」(21.8%)、「20~29歳」(21.3%)、「30~39 歳」(20.2%)の順となっており、これらの年齢層の合計が全体の約9割を占めている。
第2章 過労死等の現状
仕事が主な原因で発症した心筋梗塞などの「心疾患」、脳梗塞などの「脳血管疾患」、また、仕事によるストレスが関係した精神障害については、「業務上疾病」として認められるが、それらの認定に当たっての基準は、通達で定められている。
1 過労死等に係る労災補償の状況
(1)脳・心臓疾患の労災補償状況
業務における過重な負荷により脳血管疾患又は虚血性心疾患等(以下「脳・心臓疾患」という。)を発症したとする労災請求件数は、平成14(2002)年度に800 件を超えて以降、700件台から900件台前半の間で推移していたところ、令和2年度は 784 件で、前年度比152件の減少となっている。労災支給決定(認定)件数は、平成14年度に300件を超えて、平成19(2007)年度に392件に至ったが、近年は 200 件台で推移していたところ、令和2年度は194件で、前年度比22 件の減少となっている。なお、令和2年度において、新型コロナウイルス感染症に関連する脳・心臓疾患の労災支給決定(認定)件数はなかった。
業種別(大分類)でみると、労災請求件数は「運輸業、郵便業」158件(20.2%)、「卸売業、小売業」111件(14.2%)、「建設業」108件(13.8%)の順で多く、労災支給決定(認定)件数は「運輸業、郵便業」58件(29.9%)、「卸売業、小売業」38件(19.6%)、「建設業」27件(13.9%)の順に多くなっており、前年度に引き続き、労災請求件数、労災支給決定(認定)件数ともに「運輸業,郵便業」が最多となっている。
なお、業種別(中分類)では、労災請求件数は「運輸業,郵便業」の「道路貨物運送業」118件(15.1%)、「サービス業(他に分類されないもの)」の「その他の事業サービス業」61件(7.8%)、「建設業」の「総合工事業」44件(5.6%)の順で多く、労災支給決定(認定)件数は、「運輸業,郵便業」の「道路貨物運送業」55件(28.4%)、「卸売業、小売業」の「飲食料品小売業」16件(8.2%)、「建設業」の「総合工事業」12件(6.2%)の順に多くなっており、労災請求件数、労災支給決定(認定)件数ともに「道路貨物運送業」が最多となっている。
次に、職種別(大分類)でみると、労災請求件数は「輸送・機械運転従事者」148件(18.9%)、「専門的・技術的職業従事者」112件(14.3%)、「サービス職業従事者」80件(10.2%)の順で多く、労災支給決定(認定)件数は「輸送・機械運転従事者」60 件(30.9%)、「専門的・技術的職業従事者」27件(13.9%)、「販売従事者」及び「サービス職業従事者」それぞれ 23件(11.9%)の順に多くなっており、前年度に引き続き、労災請求件数、労災支給決定(認定)件数ともに「輸送・機械運転従事者」が最多となっている。
なお、職種別(中分類)では、労災請求件数は「輸送・機械運転従事者」の「自動車運転従事者」137件(17.5%)、「保安職業従事者」の「その他の保安職業従事者」及び「運搬・清掃・包装等従事者」の「運搬従事者」それぞれ46 件(5.9%)の順で多く、労災支給決定(認定)件数は「輸送・機械運転従事者」の「自動車運転従事者」58件(29.9%)、「販売従事者」の「商品販売従事者」19件(9.8%)、「専門的・技術的職業従事者」の「建築・土木・測量技術者」14件(7.2%)の順に多くなっており、労災請求件数、労災支給決定(認定)件数ともに「自動車運転従事者」が最多となっている。
年齢別では、労災請求件数は「50~59歳」264 件(33.7%)、「60 歳以上」261件(33.3%)、「40~49歳」204 件(26.0%)の順で多く、労災支給決定(認定)件数は「50~59 歳」65件(33.5%)、「40~49歳」64件(33.0%)、「60歳以上」44件(22.7%)の順に多くなっている。
時間外労働時間別の労災支給決定(認定)件数をみると、まず評価期間が1か月の場合、「100時間以上~120時間未満」27件、「120時間以上~140時間未満」14件、「140 時間以上~160時間未満」8件の順に多くなっている。次に評価期間が2~6か月における1か月平均の場合、「80時間以上~100時間未満」75件、「100時間以上~120 時間未満」18 件、「60時間以上~80時間未満」17 件の順に多くなっている。
就労形態別の労災支給決定(認定)件数では、「正規職員・従業員」が最多で、171件と全体の 88.1%を占めている。
(2)精神障害の労災補償状況
業務における強い心理的負荷による精神障害を発病したとする労災請求件数は、長期的にみると増加傾向にあるが、令和2(2020)年度は2,051件で、前年度比9件の減少となっている。労災支給決定(認定)件数は、平成24(2012)年度以降500件前後で推移していたところ、令和2年度は608件で、前年度比99件の増加となっている。
なお、令和2年度について、新型コロナウイルス感染症に関連する精神障害の労災支給決定(認定)件数は7件であった。
業種別(大分類)でみると、労災請求件数は「医療、福祉」488 件(23.8%)、「製造業」326件(15.9%)、「卸売業,小売業」282 件(13.7%)の順で多く、労災支給決定(認定)件数は「医療、福祉」148件(24.3%)、「製造業」100件(16.4%)、「運輸業、郵便業」及び「卸売業、小売業」それぞれ63 件(10.4%)の順に多くなっており、労災請求件数、労災支給決定(認定)件数ともに「医療,福祉」が最多となっている。
なお、業種別(中分類)では、労災請求件数は「医療,福祉」の「社会保険・社会福祉・介護事業」275件(13.4%)、「医療,福祉」の「医療業」209件(10.2%)、「運輸業,郵便業」の「道路貨物運送業」101件(4.9%)の順で多く、労災支給決定(認定)件数は「医療,福祉」の「社会保険・社会福祉・介護事業」79 件(13.0%)、「医療,福祉」の「医療業」69件(11.3%)、「運輸業,郵便業」の「道路貨物運送業」32 件(5.3%)の順に多くなっており、労災請求件数、労災支給決定(認定)件数ともに「社会保険・社会福祉・介護事業」が最多となっている。
次に、職種別(大分類)でみると、労災請求件数は「専門的・技術的職業従事者」523 件(25.5%)、「事務従事者」444件(21.6%)、「サービス職業従事者」284 件(13.8%)の順で多く、労災支給決定(認定)件数は「専門的・技術的職業従事者」173 件(28.5%)、「サービス職業従事者」91件(15.0%)、「事務従事者」83件(13.7%)の順に多くなっており、労災請求件数、労災支給決定(認定)件数ともに「専門的・技術的職業従事者」が最多となっている。
なお、職種別(中分類)では、労災請求件数は「事務従事者」の「一般事務従事者」323件(15.7%)、「サービス職業従事者」の「介護サービス職業従事者」136 件(6.6%)、「専門的・技術的職業従事者」の「保健師、助産師、看護師」127件(6.2%)の順で多く、労災支給決定(認定)件数は「事務従事者」の「一般事務従事者」57 件(9.4%)、「専門的・技術的職業従事者」の「保健師、助産師、看護師」45件(7.4%)、「サービス職業従事者」の「介護サービス職業従事者」37件(6.1%)の順に多くなっており、労災請求件数、労災支給決定(認定)件数ともに「一般事務従事者」が最多となっている。
年齢別では、労災請求件数は「40~49歳」597 件(29.1%)、「30~39 歳」490 件(23.9%)、「20~29歳」448件(21.8%)の順で多く、労災支給決定(認定)件数は「40~49歳」174件(28.6%)、「30~39歳」169件(27.8%)、「20~29歳」132件(21.7%)の順に多くなっている。
時間外労働時間別(1か月平均)の労災支給決定(認定)件数では、「その他」を除くと「20時間未満」が68件で最も多く、次に「100時間以上~120 時間未満」が56件であった。
就労形態別の労災支給決定(認定)件数では、「正規職員・従業員」が最多で、527件と全体の 86.7%を占めている。
出来事別の労災支給決定(認定)件数では、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」99件、「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」83 件、「同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた」71件の順に多くなっている。なお、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」の項目については、令和2年5月29日の認定基準の改正により新規に追加された項目である。
(つづく)A.K