キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを行う際に必要な知識とそれを補う資料について、メンタルヘルス、自殺・過労死、ハラスメント等に関する知識、資料について説明していますが今回は、令和3年版過労死等防止対策白書について前回の続きから説明します。
2 大綱の変更のポイント
ア 課題と対策の方向性
新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、人手不足の状態となった医療現場や一部の職場で過重労働が明らかになるなど、新型コロナウイルス感染症への対応や働き方の変化による過労死等の発生防止が必要であること。
ウィズコロナ・ポストコロナの時代の新しい働き方であるテレワーク、副業・兼業、フリーランスについてガイドラインの周知等を行うほか、これらの働き方を調査研究等の対象とすること。
長時間労働の削減に向けた取組、過重労働による健康障害の防止対策、メンタルヘルス対策・ハラスメント防止対策等の過労死等防止対策について、更なる推進を図っていくこと。また、国家公務員・地方公務員の過労死等防止対策に関しても同様に取り組むこととすること。
イ 対策の主な取組例
長時間労働の実態があり、勤務間インターバル制度の導入やメンタルヘルス対策の取組が進んでいない中小規模の企業等に対する支援を行うこと。調査研究等には、重点業種等(自動車運転従事者、教職員、IT 産業、外食産業、医療、建設業、メディア業界)に加え、社会情勢の変化に応じた対象を追加すること。また、新型コロナウイルス感染症の影響下における労働時間等の状況、テレワーク等のオンライン活用、先端技術の進展に伴う影響等についても分析を行うこと。
調査研究等の成果を活用し、事業場における過労死等の防止に資するチェックリスト等の支援ツールの開発等を行うこと。
顧客や発注者からの取引上の都合により生じる長時間労働の削減のため、民間企業間の取引のほか、行政機関と民間企業の間の取引についても、適正な納期・工期の設定等の商慣行改善に向けた取組を行うこと。
ウ 遺児へのサポート
過労死で親を亡くした遺児の抱える様々な苦しみを軽減するための過労死遺児交流会を引き続き開催するとともに、遺児の健全な成長をサポートするための相談対応を行うこと。
エ 数値目標
数値目標について、所要の見直しを行うとともに、公務員についても目標の趣旨を踏まえて取り組むこと。
第4 章
過労死等をめぐる調査・分析結果
過労死等防止対策推進法(平成26年法律第 100 号)及び過労死等の防止のための対策に関する大綱には、国が取り組む重点対策として、過労死等の調査研究を行うことが明記されている。
また、大綱においては、自動車運転従事者、教職員、IT 産業、外食産業、医療、建設業及びメディア業界の7業種等が調査研究の重点業種等とされ、それらの7業種等を中心に調査・分析を行っている。
具体的には、過労死等の実態を多角的に把握するため、独立行政法人労働者健康安全機構の労働安全衛生総合研究所に設置されている過労死等防止調査研究センター等において、平成 22(2010)年1月以降(国家公務員については平成 22 年4月以降)の過労死等に係る労災支給決定(認定)事案、公務災害認定事案等を順次収集し、分析を行っている。また、労働・社会分野の調査・分析として、令和2年度までは厚生労働省の委託事業において、企業や労働者等に対するアンケート調査を実施していたが、令和3(2021)年度からは労働安全衛生総合研究所において実施している。加えて、過労死等防止調査研究センターにおいて、平成27(2015)年度から疫学研究を実施している。
令和2(2020)年度は、平成30(2018)年4月以降に労災支給決定(認定)された事案及び公務災害認定事案の分析を開始するとともに、改めて自動車運転従事者、外食産業に関するアンケート調査を実施したので、その結果について本章で報告する。なお、過労死等の調査研究全体の実施状況については、第5章2で報告する。
(過労死等の定義)
過労死等の定義は、過労死等防止対策推進法第2条に以下のとおり定義されている。
ア.業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患を原因とする死亡
イ.業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡
ウ.死亡には至らないが、これらの脳血管疾患・心臓疾患、精神障害
本章において分析対象とした労災支給決定(認定)事案における過労死等の労災認定基準については、平成13年12月12日付け基発1063号「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」及び平成23年 12月26日付け基発 1226第1号「心理的負荷による精神障害の認定基準について」に示されているところである。
1 重点業種・職種の調査・分析結果
(1)自動車運転従事者(労災支給決定(認定)事案の分析、労働・社会分野の調査)
ア 労災支給決定(認定)事案の分析結果(精神障害)
令和2(2020)年度に過労死等防止調査研究センターにおいて、平成22(2010)年4月から平成30(2018)年3月までに労災支給決定(認定)された精神障害事案の労災復命書等の調査資料(全業種合計:3,517 件)から、「運輸業,郵便業」の中分類に該当する「道路貨物運送業」、「運輸に付帯するサービス業」に関する事案(合計 237 件: 道路貨物運送業が230件、運輸に付帯するサービス業が7件)を抽出して分析を行った。
事案全体を職種別にみると、「トラック運転従事者」が 149 件(62.9%)、「非運転業務従事者」が 88 件(37.1%)であった。また、男女別にみると、214件(90.3%)が男性、23 件(9.7%)が女性であった。
事案全体を発病時の年齢階層別にみると、40 歳代が96件(40.5%)と最も多く、次いで30歳代が73件(30.8%)、50歳代が36件(15.2%)と多かった。また、職種・年齢階層別にみると、「トラック運転従事者」(149 件)では 40 歳代が 60件(40.3%)で最も多く、次いで30歳代が46件(30.9%)、50 歳代が24件(16.1%)であった。「非運転業務従事者」(88件)では40歳代が36件(40.9%)で最も多く、次いで30歳代が27件(30.7%)、50歳代が12 件(13.6%)の順であった。
対象事案のうち、平成23(2011)年12月 26日付け基発1226 第1号「心理的負荷による精神障害の認定基準について」に基づいて認定されたトラック運転従事者の事案について、具体的出来事別にみると、「1か月に 80 時間以上の時間外労働を行った」が34件(25.6%)と最も多く、次いで「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」、「上司とのトラブルがあった」が24件(18.0%)、「(重度の)病気やケガをした」が23件(17.3%)であった。
また、「極度の長時間労働」が16件(12.0%)、「恒常的な長時間労働」が54件(40.6%)であった。
対象事案のうち、平成 23(2011)年12月26日付け基発 1226 第1号「心理的負荷による精神障害の認定基準について」に基づいて認定されたトラック運転従事者の事案について、具体的出来事別にみると、「1か月に 80 時間以上の時間外労働を行った」が34件(25.6%)と最も多く、次いで「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」、「上司とのトラブルがあった」が24件(18.0%)、「(重度の)病気やケガをした」が23 件(17.3%)であった。
また、「極度の長時間労働」が16件(12.0%)、「恒常的な長時間労働」が54件(40.6%)であった。
労働者調査結果によると、労働時間の把握方法について、把握されている労働時間の正確性は、「正確に把握されている」(40.9%)、「おおむね正確に把握されている」(47.3%)と回答した割合の合計は 88.2%であった。
職種別にみると、タクシー運転者では「正確に把握されている」(48.6%)、「おおむね正確に把握されている」(43.5%)と回答した割合の合計(92.1%)が他の職種と比べて高かった。
(つづく)A.K