新型コロナウイルス感染症は、私たちの生活に大きな変化を呼び起こしました。キャリアコンサルタントとしてクライアントを支援する立場でこの新型コロナがどのような状況を作り出したのか、今何が起きているのか、これからどのような世界が待っているのか、知っておく必要があります。ここでは厚生労働省の白書からキャリアコンサルタントが知っておくべき情報をお伝えします。
3 医薬品の販売制度
医薬品は、医師などの処方箋に基づき調剤される医薬品である医療用医薬品と、処方箋なしで薬局・店舗販売業で購入することができる医薬品である一般用医薬品の2つに分類されており、このうち、一般用医薬品については、そのリスクの大きさに応じて第1類医薬品、第2類医薬品及び第3類医薬品の3つに分けられていました。
しかし、「日本再興戦略」(平成25年6月14日閣議決定)などを踏まえて、消費者の安全を確保しながら医薬品のインターネット販売ができるよう、2013(平成25)年12月に薬事法が改正され、2014(平成26)年6月12日に施行された。 現在の販売制度では、使用に特に注意が必要な一部の医薬品を「要指導医薬品」という新たな区分に位置づけて薬剤師による使用する本人への対面販売に限る一方、国民の安全性の確保のため、一般用医薬品の販売ルールを整備した上で、第1類、第2類、第3類の全ての一般用医薬品は、インターネット等による販売(特定販売)が可能になりました。
さらに、厚生労働省のホームページに、一般用医薬品のインターネット販売を行うサイトのリスト*16を掲載し、安心して一般用医薬品を購入できるようにするための措置を行っているほか、一般消費者を調査員とし、全国の薬局・店舗販売業等を対象とした、医薬品の販売ルールを遵守しているかを確認する調査を行っています。
*16 一般用医薬品の販売サイト一覧https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/ippanyou/hanbailist/index.html
4 医療用医薬品の品質確保対策
(1)偽造品対策
2017(平成29)年1月、C型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品が卸売販売業者を通じて流通し、奈良県内の薬局において調剤され、患者の手に渡る事案が発生しました。偽造品を使用した場合、期待する治療効果が得られないばかりでなく、成分によっては健康被害をもたらす可能性もあり、偽造品の流通は保健衛生上の大きな問題です。
本事案の発生を受け、2017年3月から開催した「医療用医薬品の偽造品流通防止のための施策のあり方に関する検討会」のとりまとめを踏まえ、2017年10月に、薬局開設者等に課される医薬品の譲受・譲渡時の記録事項として、品名、数量、氏名、取引年月日に加えて相手方の身元確認の方法、ロット番号、使用期限等を追加すること等について省令改正を行いました。
一方、海外から個人輸入により国内に入ってくる医薬品については、その一部に偽造品が存在することが以前から知られていることから、2013(平成25)年に「あやしいヤクブツ連絡ネット」を開設し、個人輸入された医薬品等に関連する健康被害事例、医薬品の違法な販売等の事例の収集、広報啓発ホームページ(https://www.yakubutsu.mhlw. go.jp/)などを通じた国民への情報提供、コールセンターにおける国民からの相談対応を実施しています。
さらに、2014(平成26)年からインターネットパトロール事業を開始し、医薬品の不 正なインターネット販売を能動的に監視し、違反サイトについてはレジストラ等にドメインの停止を要請するなどの対応を行っています。
また、模造医薬品の流通等の不正事案に迅速に対処するため、2020(令和2)年9月 に麻薬取締官及び麻薬取締員に模造医薬品に関する取締り権限が付与されました。
(2)後発医薬品等への信頼回復
2020(令和2)年12月、後発医薬品の製造過程において、承認書に記載の無い医薬品 原薬が混入し、当該医薬品を服用した患者に、重大な健康被害が多数生じる事案が発生しました。事案発生後、速やかに厚生労働省より関係業界団体宛に製造管理徹底に係る通知を発出するとともに、国、PMDA及び県による立入検査を行って、医薬品医療機器等法及び関連省令違反事実を確認し、県より業務停止命令及び業務改善命令の行政処分を行いました。
厚生労働省は、当該事案を受け、2021(令和3)年2月、都道府県宛に、①無通告立 入検査の強化、②法令遵守体制整備徹底の指導、③製造管理体制整備の指導にかかる通知を行いました。また、同年3月には、別の後発医薬品製造業者において、製造管理上の法令違反が発覚し行政処分の対象となるなど、後発医薬品の品質や安全性に対する国民の信頼を失墜させる事案が続いて発生しました。これらを踏まえ、類似事案の再発を防止し、医薬品の適切な品質と安全性を確保するため、製造販売業者及び製造業者に対して立入検査を強化するとともに、法令遵守体制及び製造管理体制の整備の徹底など、信頼回復に向けて必要な監視指導の強化など対応を継続していくこととしています。
5 薬剤師の資質向上と薬局機能の強化等
(1)薬剤師の資質向上
医療の高度化、医薬分業の進展などに伴う医薬品の適正使用の推進といった社会的要請に応えるため、質の高い薬剤師が求められており、大学における薬学教育及び卒後の生涯学習を充実させることにより、薬剤師の資質向上に努める必要があります。
質の高い薬剤師養成に向けて、大学における薬学教育については、臨床に係る実践的な能力を培うことができるように、2006(平成18)年度から、修業年限を4年から6年に延長して、6年制課程を修めて卒業した者に薬剤師国家試験の受験資格を与えることとしました。
また、2013(平成25)年12月に薬学教育モデル・コアカリキュラムが6年制課程に 特化した内容に改訂されて、2015(平成27)年度入学生から適用されていることから、薬剤師国家試験については、2016(平成28)年11月に新たな薬剤師国家試験出題基準を策定し、2020(令和2)年度から改訂モデル・コアカリキュラムに対応した試験を実施しています。
さらに、薬学教育6年制課程が開始されてから、薬剤師に求められる役割が変化していること等を踏まえ、2020年7月から「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」を開催して、今後の薬剤師の養成や資質向上等に関する課題について検討しています。
(2)薬局機能の強化と患者本位の医薬分業の推進
薬局は、2007(平成19)年4月に施行された「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律」(平成18年法律第84号)により、医療提供施設として位置づけられて、地域医療計画の下、在宅医療や医薬品などの供給を通じて地域医療に貢献することが期待されています。
また、医薬分業については、医薬品の適正使用の観点から、その推進に努めています。2019(令和元)年度の院外処方箋発行枚数は約8.2億枚に達し、処方箋受取率は前年度に比べ0.9ポイント増加し、74.9%(公益社団法人日本薬剤師会「処方箋受取率の推計」(2019年度))と推計されています。
一方、規制改革会議等で、現状の薬局が本来の医薬分業における役割やコストに見合うサービスを提供できていないとの指摘がなされたことを踏まえて、「経済財政運営と改革の基本方針2015」(平成27年6月30日閣議決定)において、「薬局全体の改革について検討をする」とされました。これを踏まえ、2015 (平成27)年10月23日に「患者のための薬局ビジョン」を策定・公表した。
ビジョンの主な内容としては、かかりつけ薬剤師・薬局の機能として、
①服薬情報の一元的・継続的把握とそれに基づく薬学的管理・指導
②24時間対応・在宅対応
③医療機関等との連携
をあげて、また、患者等のニーズに応じて強化・充実すべき機能として、
①積極的に地域住民の健康の維持・増進を支援する健康サポート機能
②専門的な薬物療法を提供する高度薬学管理機能
を提示し、かかりつけ薬剤師・薬局を推進しています。
また、「日本再興戦略」(平成25年6月14日閣議決定)を踏まえ、セルフメディケー ションの推進の観点から、薬局・薬剤師を地域の健康情報の拠点として活用する各種取組みを総合的に推進しており、2016(平成28)年10月からかかりつけ薬剤師・薬局の基本的な機能を備えた上で積極的に地域住民の健康の維持、増進を支援する健康サポート薬局の届出・公表を開始しました。
また、2016年4月から、健康サポート薬局の用に供する不動産に係る不動産取得税の優遇措置が実施されています。
2019年12月に改正された医薬品医療機器等法(以下「改正法」という。)により2021(令和3)年8月に施行される特定の機能を有する薬局の認定・表示制度における地域連携薬局及び専門医療機関連携薬局については「患者のための薬局ビジョン」において示されている、かかりつけ薬剤師・薬局における基本的機能や高度薬学管理機能を元に認定することとしたものです。特に、かかりつけ薬剤師・薬局における基本的機能は、地域連携薬局及び健康サポート薬局において共通した機能であり、地域包括ケアの一翼を担う地域連携薬局が健康サポート薬局の届出を行い、地域においてその役割を担うことも医薬分業の質の向上を推進する上で重要です。
また、「患者のための薬局ビジョン」では、かかりつけ薬剤師・薬局は、地域において、要指導医薬品及び一般用医薬品を含む必要な医薬品の供給拠点であると同時に、医薬品、薬物療法等に関して安心して相談できる身近な存在であることが求められています。このため、改正法により薬局の定義が改正され、医薬品医療機器等法第2条においては「調剤の業務を行う場所」に加えて「薬剤及び医薬品の適正な使用に必要な情報の提供及び薬学的知見に基づく指導の業務を行う場所」が追加されるとともに、「その開設者が併せ行う医薬品の販売業に必要な場所を含む」こととされています。したがって、薬局は、要指導医薬品や一般用医薬品を取り扱うことを前提としたものとなっており、認定を取得した薬局であっても、これらの医薬品を取り扱いながら業務を行うことが薬局のあるべき姿です。
引き続き、国民が利点を実感できるような質の高い 医薬分業を地域の実情に応じた医療計画等に基づいて推進していく必要があり、厚生労働省ホームページ上の「おくすりe情報*17」や「薬と健康の週間」(毎年10月17日から10月23日に開催)での広報活動等を通じて、医薬品の適正使用等の啓発を行っています。
また、薬局における医療安全のため、2009(平成 21)年度から調剤時の医薬品の取り違いの発見や疑義照会による健康被害の防止等のヒヤリ・ハット事例等の情報を収集・分析し、情報提供する事業(薬局医療安全対策推進事業)を実施し、医薬分業の質の向上に努めています。
*17 おくすりe情報 https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/okusuri/index.html
(つづく)K.I