実践編・応用編

C型肝炎ウイルス感染被害者の救済|テクノファ

投稿日:2022年10月26日 更新日:

新型コロナウイルス感染症は、私たちの生活に大きな変化を呼び起こしました。キャリアコンサルタントとしてクライアントを支援する立場でこの新型コロナがどのような状況を作り出したのか、今何が起きているのか、これからどのような世界が待っているのか、知っておく必要があります。ここでは厚生労働省の白書からキャリアコンサルタントが知っておくべき情報をお伝えします。

3 「C型肝炎救済特別措置法」に基づくC型肝炎ウイルス感染被害者の救済
出産や手術等の際に使用した血液製剤に含まれていたC型肝炎ウイルスに感染した者 に対しては、「特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第Ⅸ因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法」(2008(平成20)年成立しました。以下「C型肝炎救済特別措置法」といいます。)に基づき、製剤投与の事実等について裁判所での確認を経て、給付金の支給を行っています。支給額は、① 慢性C型肝炎の進行による肝硬変・肝がん・死亡で4,000万円、② 慢性C型肝炎で2,000万円、③ ①及び②以外(無症候性キャリア)で1,200万円であり、給付金の支給を受けた後20年以内に症状が進行した場合には、差額が追加給付金として支給されます。2020(令和2)年3月末日現在で約2,400名と和解等が成立しています。

厚生労働省は、フィブリノゲン製剤や血液凝固因子製剤の納入先医療機関名の公表等により、これらの製剤を投与された可能性のある方に対して、肝炎ウイルス検査受検を呼びかけるとともに、同法の内容の周知を図っています。なお、2017(平成29)年12月にC型肝炎救済特別措置法が改正され、給付金の請求期限が2023(令和5)年1月16日までに延長されました。

4 薬害を学ぶ
若年層が、これまでに発生した薬害を学ぶことで医薬品に対する理解を深めることを目的として、厚生労働省は、2010(平成22)年から「薬害を学び再発を防止するための教育に関する検討会」を開催しています。

この検討会での議論に基づき、2011(平成23)年 度から、全国の中学3年生を対象とした薬害を学ぶための教材「薬害を学ぼう」を作成し、全国の中学校に配布しています。2016(平成28)年からは、「薬害を学ぼう」の視聴覚教材と教員用の「指導の手引き」を作成し、公開しています。また、2017(平成29)年度からは複数の中学校、高等学校で当教材を用いて、モデル的に授業を実施しています。

2020(令和2)年3月には、薬害の歴史や教訓を伝え、社会の認識を高めることを目的として、薬害に関する解説パネルの他、被害者の方の証言映像等の資料を展示する「薬害の歴史展示室」を独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)内に設置しました。

第11節 食の安全の確保 輸入食品の監視体制の概要
1 厚生労働省に求められる食品の安全性確保対策
我が国では、リスクアナリシスの考え方に基づき、食品に含まれる危害要因により、人の健康へ悪影響を及ぼすリスクについて、科学的に分析し、適切に評価するリスク評価、リスク評価を踏まえて規制等の措置を行うリスク管理、また、消費者を含む関係者がそれぞれの立場から相互に情報や意見交換を行うことなどを通して食品安全行政へ参画するリスクコミュニケーションによって食品の安全を確保する体制を構築しています。厚生労働省では、食品などの規格基準の策定やそれに基づく監視指導の業務などを担う食品の衛生に関するリスク管理機関として、関係省庁及び地方公共団体と連携しながら、食品の安全の確保を図っています。

2 最近の食品安全行政の主な動き
(1)食品衛生規制の見直し
2003(平成15)年の食品衛生法等の改正から約15年が経過し、共働き世帯や高齢者単身世帯の増加を背景に、調理食品、外食・中食への需要の増加や健康食品への関心の高まりなど食のニーズの多様化や輸入食品の増加など食のグローバル化の進展といった我が国の食を取り巻く環境が変化しています。

このような変化の中で、都道府県等を越える広域的な食中毒事案の発生や、食中毒の発生数の下げ止まり傾向があり、事業者におけるより一層の衛生管理や、行政による的確な対応が喫緊の課題となっています。さらには、食品の輸出促進等も見据え、国際標準と整合的な食品衛生管理が求められています。

このような状況に鑑み、「食品衛生管理の国際標準化に関する検討会」(2016(平成 28)年3月7日~2016年12月14日)や「食品用器具及び容器包装の規制に関する検討会」(2016年8月23日~2017(平成29)年5月25日)、「食品衛生法改正懇談会」(2017年9月14日~2017年11月8日)を開催し、食品衛生規制の見直しの方向性等の検討を行いました。

こうした状況を踏まえ、食品の安全を確保するため、広域的な食中毒事案への対策強化((2)参照)、HACCP(ハサップ・Hazard Analysis and Critical Control Point)に沿った衛生管理の制度化((3)参照)、営業届出制度の創設や実態等に応じた営業許可制度の見直し((4)参照)、食品リコール情報の報告制度の創設((5)参照)、食品用器具・容器包装におけるポジティブリスト制度の導入(3(1)5)参照)、特別の注意を必要とする成分等を含む食品による健康被害情報の収集(3(2)5)参照)等を内容とする「食品衛生法等の一部を改正する法律」(平成30年法律第46号)が2018(平成30)年6月に成立した(広域的な食中毒・事案への対策強化については2019(平成31)年4月1日施行、HACCPに沿った衛生管理、特別の注意を必要とする成分等を含む食品による健康被害情報の収集及び食品用器具・容器包装におけるポジティブリスト制度については2020(令和2)年6月1日施行、その他の部分については 2021年(令和3)年6月1日施行予定)。

(2)食中毒対策
食中毒対策の事件件数の推移としては、食中毒の事件数は1998(平成10)年をピークにおおむね減少傾向を示してきたが、近年では、事件数は1,000件前後、患者数は20,000人前後で推移しています。食中毒による死者数は、2018(平成30)年は3人、2019(令和元)年は4人、2020 (令和2)年は3人となっています。

1998年当時、食中毒の原因としてサルモネラ属菌や腸炎ビブリオなどが事件数の半分以上を占めていたが、近年ではノロウイルスやカンピロバクター・ジェジュニ/コリなどの占める割合が高まっており、食中毒予防の観点から重要な課題となっています。特に冬場に多発するノロウイルスによる食中毒は、食中毒患者数全体の約5割を占めています。ノロウイルスは、感染力が強く、弁当や給食の調理施設で発生し、大規模な食中毒となることがあり、発生原因としては、食品取扱者を介した発生が主要なものとなっています。

近年、食品流通システムの発達等により、都道府県等の区域を越えて広域にわたり食中毒事案が発生していることから、監視指導に当たって国及び都道府県等の連携協力体制の整備を図るため、2018年6月の食品衛生法の改正により、地域ブロックごとに広域連携協議会を設置し対応に努めることとする等の制度が創設され、2019(平成31)年4月1日に施行されました。

厚生労働省では、食中毒予防に関して国民に正しく理解されるよう、ノロウイルスやカンピロバクターなどに関するQ&Aのほか、家庭でできる食中毒予防のポイントをまとめたリーフレットやアニメーションを作成し、厚生労働省ホームページに公開しています。また、厚生労働省Twitterにより、有毒植物や毒きのこ、ノロウイルス等の食中毒予防のポイントを周知し、食中毒予防に関する注意喚起を行っています。

(3)HACCPに沿った衛生管理の制度化
2018(平成30)年6月の食品衛生法の改正により、原則として、製造・加工、調理、販売等を行う全ての食品等事業者を対象として、HACCPに沿った衛生管理を求めることとしました。

HACCPに沿った衛生管理は、食品等事業者にHACCPに基づく衛生管理(コーデックスHACCPの7原則を要件とするもの)又はHACCPの考え方を取り入れた衛生管理 (小規模事業者や一定の業種等を対象として、弾力的な取扱いを可能とするもの。)の実施を求める仕組みとし、特に小規模事業者を含む食品等事業者が円滑にHACCPに沿った衛生管理に取り組むことができるよう食品等事業者団体が策定する事業者向け手引書の作成に対する支援を行うなど、HACCPの導入を後押ししています。

(4)営業届出制度の創設や実態等に応じた営業許可制度の見直し

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2018(平成30)年6月の食品衛生法の改正により、食品等事業者を把握し、監視指導を適切に行うため、営業の届出を求めることとしました。また、公衆衛生に与える影響が著しい営業であって都道府県知事等の許可を受けなければならない業種について、1972(昭和47)年以降改正を行っていなかったことから、現状の営業実態に合わせ見直しを行いました。

(5)食品等におけるリコール制度の創設
食品等の自主回収が行われた場合に、その情報を行政が確実に把握する仕組みがなかったこと等から、2018(平成30)年6月の食品衛生法の改正により、営業者が自主回収を行う場合に、自治体へ届出する仕組み及び自治体から国へ報告する仕組みの構築を行う食品リコール情報の報告制度を創設しました。

(6)食品中の放射性物質への対応について
食品中の放射性物質については、2011(平成23)年3月に発生した東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故後の長期的な状況に対応するため、事故直後に設けた暫定規制値に代わる現行の基準値(一般食品100Bq/kg、牛乳及び乳児用食品50Bq/kg、飲料水10Bq/kg)を2012(平成24)年4月に設定しました。この基準値は、子どもを含む全ての世代に配慮されたものになっています。

食品中の放射性物質の状況については、原子力災害対策本部が定めたガイドラインに基づき、地方自治体において、主に出荷前の段階でモニタリング検査を実施しており、検査の結果については厚生労働省で取りまとめ、基準値を超えない場合を含め、全て公表しています。

直近約1年間の検査結果では、食品から検出される放射性物質のレベルは全体的に低下し、基準値を超える食品も、一部の水産物、野生のきのこ類、山菜類、野生鳥獣肉などが中心となっています。同ガイドラインについては、これまでも定期的な改正が行われてきたが、2020(令和2)年4月以降の検査結果等を踏まえて、2021(令和3)年3月、同ガイドラインが改正されて、検査対象自治体、検査対象品目等の見直しが行われました。こうした中で、福島県を始めとする各地域で実際に流通している食品を購入して調査した結果、食品中の放射性セシウムから受ける線量は、食品から追加で受ける線量の上限(1ミリシーベ ルト/年)の0.1パーセント程度であり、極めて小さい値に留まっています。引き続き、食品中の放射性物質から受ける年間放射線量の推定調査をしていくこととしています。

また、関係省庁と連携して、基準値の考え方や上記の調査結果などに関する説明会を全国で開催するなど、多様な媒体を活用して周知を行いました。今後とも、消費者、生産者、事業者など、様々な立場の方々に、十分に安全な基準値であることが理解されるように、丁寧に説明していきます。
(つづく)K.I

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