実践編・応用編

生食用食肉などの安全対策|テクノファ

投稿日:2022年10月27日 更新日:

新型コロナウイルス感染症は、私たちの生活に大きな変化を呼び起こしました。キャリアコンサルタントとしてクライアントを支援する立場でこの新型コロナがどのような状況を作り出したのか、今何が起きているのか、これからどのような世界が待っているのか、知っておく必要があります。ここでは厚生労働省の白書からキャリアコンサルタントが知っておくべき情報をお伝えします。

(7)生食用食肉などの安全対策
2011(平成23)年4月に発生した飲食チェーン店での腸管出血性大腸菌を原因とする食中毒の発生を受け、生食用食肉に関して罰則を伴う強制力のある規制として食品衛生法に基づく生食用食肉(牛肉)の規格基準を定め、同年10月から適用しています。また、牛肝臓については、生食用としての牛肝臓の販売を禁止する旨などを定めた規格基準を2012(平成24)年7月から適用しています。

生食用食肉(牛肉)及び牛肝臓に関する規格基準の策定後、一般的に生食用として提供されていなかった豚の食肉(内臓含む)が生で提供されている実態が認められたことから、食肉等の種別ごとの公衆衛生上のリスクについて、薬事・食品衛生審議会乳肉水産食品部会の下に設置した「食肉等の生食に関する検討会」において議論し、2014(平成26)年8月に、同部会において、国民の健康保護の観点から豚の食肉の生食用としての提供を禁止することが妥当との結論を得たことから、規格基準として豚の食肉及び内臓を生食用として提供することを禁止する旨を定め、2015(平成27)年6月から適用しています。
これらの規制を含め、食肉などの生食による食中毒の防止を図るため、加熱の必要性について、消費者や事業者が正しく理解できるよう、Q&Aやリーフレット、ポスターなど普及啓発資料を作成し、厚生労働省ホームページに掲載しています。鶏の食肉(内臓を含む)については、厚生労働科学研究等を通じて、食中毒リスク低減策の検討に資する科学的知見の集積を行っています

3 食品安全行政の概要
(1)規格基準の設定及び見直し
1 既存添加物の使用・流通実態及び安全性の確認
1947(昭和22)年の食品衛生法制定時から、化学的合成品である食品添加物については、安全性が確認され、厚生大臣(当時)が指定したものに限り、その製造、使用、販売などを認めてきました。その後、それまで食経験のない動植物から抽出した物質が食品添加物として使用される可能性が出てきたことなどに対応するため、1995(平成7)年の食品衛生法改正において、この指定制度の対象となる添加物の範囲を化学的合成品に限定せずに天然添加物(天然香料及び一般に食品として飲食に供されているものであって添加物として使用されるもの(一般飲食物添加物)を除きます。)にまで拡大しました。

この指定制度の拡大に当たり、1995年当時流通していた489品目の天然添加物については、長い使用実績があり、安全性に問題があるとの個別報告はないことなどから、既存添加物として継続使用を認めることとしたが、これらの既存添加物については、厚生労働省が中心となって安全性確認を計画的に進めるとともに、使用・流通実態のないものを、既存添加物名簿(平成8年厚生省告示第120号)から消除する手続を進めています。これまで安全性に問題があるとされた1品目と使用実態がないとされた131品目が消除され、2021(令和3)年4月1日食品添加物の種類は357品目となっています。また、既存添加物の品質を確保するため、成分規格を設定する作業を進めています。

2 食品添加物公定書の改訂
食品添加物の規格基準については、「食品添加物公定書」に収載しています。食品添加物公定書は、食品添加物の製造・品質管理技術、試験法の発展などに対応するために改訂を行っており、2018(平成30)年2月1日に第9版食品添加物公定書が

3 食品中に残留する農薬などに関する対策
食品中に残留する農薬など(農薬、飼料添加物及び動物用医薬品)の規制について、 2006(平成18)年5月からいわゆるポジティブリスト制度(一定の量を超えて農薬などが残留する食品の流通を原則禁止する制度)が施行されています。本制度の導入に当たり暫定的に残留基準を設定した760品目の農薬などについては、順次残留基準の見直しを行っており、2020年度には14品目の見直しを行い、これまでに492品目の見直しを行いました(2021年4月1日現在)。農薬の残留基準の設定に当たっては、健康への悪影響を防ぐため、従来一日摂取許容量(ADI:Acceptable Daily Intake)に照らして基準値を設定してきましたが、2014(平成26)年度からは新たに急性影響の指標である急性参照用量(Acute Reference Dose:ARfD)も考慮した残留基準の設定を開始するなど、国際的な動向や最新の科学的知見に基づき、食品安全委員会による評価結果を踏まえて行っています。

4 食品中の汚染物質対策
食品中の汚染物質については、薬事・食品衛生審議会において、規格基準の設定に係る基本的な考え方が示されています。具体的には、国際規格が定められている食品については、我が国でも規格基準の設定を検討し、国際規格を採用すること、また、我が国の食料生産の実態などから国際規格を採用することが困難な場合は、関係者に対し汚染物質の低減対策に係る技術開発の推進などについて要請を行うとともに、必要に応じて関係者と連携し、「合理的に達成可能な範囲でできる限り低く設定する」というALARA(As low as reasonably achievable)の原則に基づく適切な基準値又はガイドライン値などの設定を行うことなどとしています。この考え方に基づき、2010(平成22)年に米中のカドミウムに係る規格基準の見直し、2011(平成23)年に食品中のアフラトキシンに係る規制対象の変更(アフラトキシンB1から総アフラトキシンへの変更)、2015(平成27)年に乳中のアフラトキシンM1の規制値の設定をそれぞれ行い、デオキシニバレノールに係る規制の見直しも行っています。このほか、2014年12月及び2018年7月には清涼飲料水(ミネラルウォーター類等)に係る規格基準、2020年3月には酒精飲料中のメタノールの規制値の改正を行いました。

5 食品用器具・容器包装におけるポジティブリスト制度の導入
2018年6月の食品衛生法の改正(改正法)により、食品用器具・容器包装の安全性や規制の国際整合性の確保のため、規格が定まっていない物質を使用した食品用器具・容器包装の販売等の禁止等を行い、安全が担保されたもののみ使用可能とするポジティブリスト制度(国際総合的な食品用器具・容器包装の衛生規制の整備)を導入し、政令で対象の材質を合成樹脂と定め、2020年6月に施行しました。

ポジティブリストは、その対象を「合成樹脂の原材料であって、これに含まれる物質」として、合成樹脂の基本を成すもの(基ポリマー)、合成樹脂の物理的又は化学的性質を変化させるために最終製品中に残存することを意図して用いられる物質(添加剤)についてリスト化を行い、器具・容器包装に係る規格として定めました。

また、器具又は容器包装を製造する営業の施設に対して、一般衛生管理及び適正製造規範に基づく管理基準の規定、器具又は容器包装のポジティブリストへの適合性を確認する手段として事業者間の情報伝達の規定が創設されました。

なお、ポジティブリスト制度の対象となる材質(合成樹脂)が使用された器具又は容器包装を製造する事業者は、改正法により創設された営業届出制度の対象となります(2021年 6月施行予定)。

(2)監視・検査体制の整備
1 計画に基づく監視指導
食品の安全性を確保するためには、厚生労働省や地方公共団体など関係行政機関が連携して、食品衛生法に基づく監視指導を実施することが重要です。これを効率的かつ効果的なものとするため、「食品衛生に関する監視指導の実施に関する指針」(平成15年厚生労働省告示第301号)を定め、輸出国対策及び輸入時対策については厚生労働省が、国流通時対策については都道府県等が地域の実情に応じて、毎年度、監視指導計画を策定し、公表の上、適切な監視指導を実施しています。

2 飲食店における持ち帰り・宅配食品の衛生管理
新型コロナウイルス感染症の流行拡大を受け、平時には客席を設けて客に飲食させている一般的な飲食店が、新たに持ち帰り(テイクアウト)や宅配(出前)等のサー ビスを開始する事例が増えました。

持ち帰りや宅配については、店内での喫食に比較して 調理してから喫食までの時間が延長することに加えて、特に夏期は気温や湿度の上昇により食中毒のリスクが高まることから、消費者に対する注意喚起のためのリーフレットを作成し、厚生労働省ホームページに掲載しています。

3 輸入食品の安全性確保
食品流通のグローバル化の進展、消費者ニーズの多様化などを背景に、輸入食品の届出件数は年々増加しています。増加する輸入食品の安全性を確保するため、年度ごとに「輸入食品監視指導計画」を策定し、効率的かつ効果的な監視指導に取り組んでいます。この計画では、輸出国、輸入時(水際)、国内流通時の三段階で関係行政機関が対策を講ずることとしています。

輸入食品の監視体制の概要としては、輸出国での衛生管理対策として、輸入食品について違反が確認された場合は、輸出国政府などに対して原因の究明及び再発防止対策の確立を要請するとともに、二国間協議を通じて生産段階などでの衛生管理の実施、監視体制の強化、輸出前検査の実施などの推進を図っています。また、中国及びカナダ等の現地日本大使館へ「食の安全担当官」を配置するとともに、他の輸出国に対しては、必要に応じ日本から担当官を派遣し、衛生管理対策の調査や要請などを実施しています。引き続き、二国間協議及び現地調査を通じて輸出国段階の衛生管理対策を検証するほか、計画的に主要な輸出国の衛生管理体制に関する情報収集を進めていきます。

輸入時(水際)の対策では、輸入業者に対して、輸入の都度、届出を義務づけ、事業者からの輸入前相談に対応するとともに、多種多様な輸入食品を幅広く監視するため、年間計画に基づくモニタリング検査を実施しています。モニタリング検査における違反状況を踏まえ、違反の可能性が高いと見込まれる輸入食品については、輸入の都度、輸入者に対して検査命令を実施しています。2019(令和元)年度には、約254万件の輸入届出に対して55,916件のモニタリング検査、69,185件の検査命令及び95,351件の指導検査などを実施しており、そのうち、違反と確認されたものは763件(届出件数の0.03%)です。違反の内容としては、冷凍食品の成分規格違反、添加物の使用基準違反、野菜の残留農薬基準違反など食品の成分規格違反が多く、こうした違反が確認された食品については、廃棄、積戻しなどの措置を講じています。また、法違反食品の輸入を未然に防ぎ、効率的に輸入食品の安全性を確保するため、輸入前相談の実施をより一層推進し、検疫所間において輸入前相談の情報共有を図ることとしています。

国内流通時の対策では、都道府県等が店舗等から輸入食品を抜き取り、検査や指導を行っています。違反と確認された際は、廃棄等の措置を講ずるとともに、厚生労働省は通報を受け、輸入時監視の強化を図っています。

また、輸入食品の安全性確保について消費者や事業者の理解が深まるよう、リーフレットや動画を作成し、厚生労働省ホームページに掲載しています。

4 輸出食品の安全性確保
2020年(令和2)年4月に施行された「農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律」(令和元年法律第57号)に基づき、輸出促進を担う司令塔組織として、本部長の農林水産大臣及び厚生労働大臣も含めた本部員で構成する農林水産物・食品輸出本部が農林水産省に設置され、輸出促進に関する政府の新たな戦略(基本方針)を定め、実行計画の作成・進捗管理が行われるとともに、関係省庁間の調整が行われることにより、政府一体となった輸出の促進を図ることとなっています。

厚生労働省は、従来、輸出食品の衛生要件に関して輸出先国との間で協議を行い、衛生要件及び手続を取り決め、必要に応じて、厚生労働省、地方厚生局及び都道府県等衛生部局において、輸出食品の製造・加工施設の認定、衛生証明書の発行、定期的な指導・監督等を行っています。

今後、引き続きこれらに取り組むととともに、「食料・農業・農村基本計画」(令和2年3月31日閣議決定)における2030(令和12)年までに農林水産物・食品の輸出額を5兆円とする目標の達成に向けて、政府一体となって、基本方針に従い戦略的に輸出先国の規制に対応し、輸出阻害要因の解消を早急に進めるべく、実行計画を着実に実施することとしています。

また、東京電力(株)福島第一原子力発電所での事故の発生に伴い、一部の国・地域で日本産食品の検査強化や輸入禁止などの措置が取られていることから、厚生労働省では、関係省庁と連携し、定期的に国内での食品の放射性物質の検査結果を公表するなど、世界に向けた情報発信を継続して行っています。
(つづく)K.I

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