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長時間労働の削減に向けた取組の徹底 | テクノファ

投稿日:2022年11月3日 更新日:

キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを行う際に必要な知識とそれを補う資料について、メンタルヘルス、自殺・過労死、ハラスメント等に関する知識、資料について説明していますが、今回は前回に続き令和3年版過労死等防止対策白書について説明します。

今回は、過労死等防止対策推進法に基づき、国会に年次報告された白書の、政府が過労死等の防止のために講じた施策の実施状況について 項目1.労働行政機関等における対策 を前回の続きから説明します。
1.労働行政機関等における対策
1.1 長時間労働の削減に向けた取組の徹底
「日本再興戦略」改訂2014において、「働き過ぎ防止のための取組強化」が盛り込まれ、また、同じ平成26年には過労死等防止対策推進法が成立した。こうした中、同年に厚生労働大臣を本部長とする「長時間労働削減推進本部」を設置し、長時間労働削減に向けた取組の強化を図るとともに、長時間にわたる時間外労働が恒常的に行われ、過重労働による健康障害の発生が懸念される事業場に対する重点的な指導等の取組を進めている。

(1)長時間労働が行われている事業場に対する監督指導等
平成28年4月からは、長時間労働が行われている事業場への監督指導の対象を、従来の1か月当たり100時間を超える時間外労働を行っている労働者を把握した場合から、1か月当たり80時間を超える時間外労働を行っている労働者を把握した場合に拡大し、また、過労死等を発生させた事業場に対しても、監督指導を行い、当該疾病の原因の究明、再発防止対策の徹底を指導している。
令和2年度における本取組を取りまとめたところ、24,042 事業場に対して監督指導を実施し、37.0%に当たる8,904事業場に対して、違法な時間外労働について、是正・改善に向けた指導を行った。
また、令和2年11月の過重労働解消キャンペーンの取組の1つとして、過労死等に関する労災請求があった事業場を含め、違法な時間外労働等の労働基準関係法令違反が疑われる全国の9,120事業場に対して、重点監督を実施し、30.8%に当たる2,807事業場に対して、違法な長時間労働について是正・改善に向けた指導を行った。

加えて、Webサイト上の求人情報、書き込み等の情報を監視し、長時間にわたる過重な労働等の労働条件に問題があると考えられる事業場の情報を収集し、労働基準監督署による監督指導等に活用しており、令和2年度の対象事業場は515件であった。さらに、長時間労働の背景として、親事業者の下請代金支払遅延等防止法・独占禁止法違反が疑われる場合に、中小企業庁や公正取引委員会に通報する制度を積極的に運用するなど、関係行政機関と連携した取組を進めている。

(2)長時間労働等に係る企業本社に対する指導
従来、長時間労働に関する労働基準監督署による監督指導は、基本的に企業の工場や支社などの事業場単位で行われていたが、平成29年1月から、違法な長時間労働等を複数の事業場で行うなどの企業については、企業本社に対し、全社的な改善を図る指導を行っている。

(3)ガイドラインによる労働時間の適正な把握の徹底
労働時間の把握の一つの方法として、労働者が自己の労働時間を自主的に申告することにより把握する「自己申告制」があるが、この「自己申告制」の不適正な運用等により、労働時間の把握が曖昧となり、その結果、過重な長時間労働や割増賃金の未払いといった問題が発生している。こうしたことを防止するため、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を平成 29年1月に策定し、労働基準監督署を通じ、企業に対して遵守のための指導を行うとともに、リーフレットをWebサイトに掲載する等により周知を行っている。中でも、労働時間の把握については、原則として、使用者が自ら現認すること、又はタイムカード、IC カード等の客観的な記録を基礎として労働者の始業・終業時刻を確認することにより、適正に記録することとされているガイドラインを踏まえた指導を行っている。

(4)是正指導段階での企業名公表制度の運用
平成 27年5月より違法な長時間労働が複数の事業場で行われた企業について、その事実を広く社会に情報提供することにより、他の企業における遵法意識を啓発する等の観点から、都道府県労働局長が企業の経営トップに対し指導し、その企業名を公表している。

(5)36協定に関する法令の周知指導
労働者を時間外又は休日に労働させる場合には、労使協定を締結し、事前に労働基準監督署に届け出なければならない。違法な長時間労働を解消するためには、必要な36協定を締結しない又は届出を行わない事業場をなくしていく必要があり、36協定に関する法令の周知と遵守の指導を行っている。
また、36協定については、労働基準監督署に届出があった際の助言、指導を強化すること等により、事業主に対し、労働者に36協定の内容を周知させることを徹底するとともに、月45時間を超える時間外労働や休日労働が可能である場合であっても、36協定における特別延長時間や実際の時間外・休日労働時間の縮減について「労働基準法第三十六条第一項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項等に関する指針」等を踏まえた指導を行っている。

1.2 過重労働による健康障害の防止対策
長時間働くことにより労働者が健康を損なうことがないよう、疲労の蓄積をもたらす過重労働を是正するとともに、事業者が労働者の健康管理に係る措置を適切に実施することが重要である。
平成31年4月施行の改正労働安全衛生法関係法令により、事業者は労働者の労働時間の状況を把握しなければならないこととされ、時間外・休日労働時間が80時間を超え、かつ、申出のあった労働者、労働基準法による時間外労働の上限規制が適用されない研究開発業務に従事する労働者又は高度プロフェッショナル制度が適用され、かつ、長時間労働を行った労働者に対して、面接指導を実施しなければならないこととされた。また、都道府県労働局や労働基準監督署が行っている監督指導や個別指導、集団指導において、「過重労働による健康障害防止のための総合対策」に基づき、事業者に対して「過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置」について周知や指導の徹底を図っている。

前記1.1 (1)項に記載した令和2年度に監督指導を行った24,042事業場のうち19.2%に当たる4,628事業場で、健康診断を行っていない等、過重労働による健康障害防止措置が未実施であることを確認したため、是正・改善に向けた指導を行った。さらに、監督指導実施事業場のうち、40.2%に当たる9,676事業場に対して、長時間労働を行った労働者への医師による面接指導等の実施など過重労働による健康障害防止措置を講じるよう指導した。

1.3 メンタルヘルス対策
平成29年度より、精神障害による労災支給決定が行われた事業場に対して、メンタルヘルス対策を主眼とする個別指導を実施し、特に、総合的かつ継続的な改善の指導が必要と認められる場合には、衛生管理特別指導事業場に指定し、メンタルヘルス対策に係る取組の改善について指示している。

また、おおむね3年程度の期間に、精神障害による労災支給決定が2件以上行われた場合には、その企業の本社に対して、メンタルヘルス対策を主眼とする個別指導を実施することにより、全社的なメンタルヘルス対策の取組について指導を実施している。特に、過労自殺(未遂を含む)に係るものが含まれる場合には、企業の本社を衛生管理特別指導事業場に指定し、メンタルヘルス対策に係る取組の改善について指示するとともに、全社的な改善について指導している。

1.4 ハラスメント防止対策
過労死等に結びつきかねない職場におけるハラスメントの防止については、メンタルヘルス対策に係る企業本社に対する特別指導や長時間労働が行われている事業場に対する監督指導等の際に、パンフレット等を活用し、パワーハラスメント対策の取組内容について周知指導を実施してきた。
職場におけるハラスメント防止対策の更なる強化を図るため、パワーハラスメント防止のための事業主の措置義務の新設や、セクシュアルハラスメント等の防止対策の強化等を内容とする「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」が、令和元年5月29日に成立し、同年6月5日に公布された(労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法等を改正)。

  • ハラスメント対策の強化(男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、労働施策総合推進法の改正)の概要。

(1)国の施策にハラスメント対策を明記(労働施策総合推進法)
〇国の施策に「職場における労働者の就業環境を害する言動に起因する問題の解決の促進」(ハラスメント対策)を明記する。

(2)パワーハラスメント対策の法制化(労働施策総合推進法)
〇パワーハラスメントとは、「①優越的な関係を背景とした」、「②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により」、「③就業環境を害すること」(身体的もしくは精神的な苦痛を与えること)であることを明記する。

〇事業主に、パワーハラスメント防止のため、相談体制の整備等の雇用管理上の措置を講じることを義務付ける。

〇パワーハラスメントの具体的な定義や事業主が講じる雇用管理上の措置の具体的な内容を定めるため、厚生労働大臣が指針を策定することとする。

〇パワーハラスメントに関する労使紛争について、都道府県労働局長による紛争解決援助、紛争調整委員会による調停の対象とするとともに、措置義務等について履行確保(助言、指導、勧告等)のための規定を整備する。

〇中小事業主に対する配慮等

パワーハラスメントの防止対策の措置義務は、中小事業主の施行日に配慮(交付日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日(令和4年3月31日)までの間は努力義務とする)
(つづく)A.K

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