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全国の労働局または労働基準監督署より収集|テクノファ

投稿日:2022年11月1日 更新日:

キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを行う際に必要な知識とそれを補う資料について、メンタルヘルス、自殺・過労死、ハラスメント等に関する知識、資料について説明していますが、今回は前回に続き令和3年版過労死等防止対策白書について説明します。
国会への年次報告を義務付ける過労死等防止対策推進法及び過労死等の防止のための対策に関する大綱には、国が取り組む重点対策として、過労死等の調査研究を行うことが明記されていますが、令和3年版過労死等防止対策白書では「過労死等をめぐる調査・分析結果」の章の中で調査研究の結果報告を行っています。

今回は、白書の「過労死等をめぐる調査・分析結果」の章中の項目、労災・公務災害の支給決定(認定)事案の分析結果について説明します。

  • 労災・公務災害の支給決定(認定)事案の分析結果

(1)労災支給決定(認定)事案の分析
平成27(2015)年度から令和元(2019)年度までの過労死等の労災支給決定(認定)事案の研究では、平成22(2010)年1月から平成 30(2018)年3月までに認定された約8年間の事案の労災復命書等の調査資料を全国の労働局または労働基準監督署より収集し、分析を実施した。
令和2(2020)年度の研究では、新たに平成30年4月から平成31年3月までの1年分の事案を収集し、合計約9年間の事案を分析の対象とし、今後も定期的に事案を収集し、分析を実施することを予定している。
令和2年度は、平成22年度から平成30年度までの9年分の脳・心臓疾患事案2,518件と精神障害事案3,982件の分析を行った。

〇 脳・心臓疾患事案
労災支給決定(認定)された脳・心臓疾患事案2,518件のうち2,405件(95.5%)が男性、113件(4.5%)が女性であった。年齢階層別にみると、「50~59 歳」が932件(37.0%)と最も多く、次いで「40~49歳」が845件(33.6%)であった。また、性別・年齢階層別でみると、男性の事案数2,405件のうち、「50~59 歳」が899件(37.4%)と最も多く、次いで「40~49 歳」が817件(34.0%)であった。女性の事案数113件のうち、「50~59 歳」が33件(29.2%)と最も多く、次いで「60歳以上」が30件(26.5%)であった。なお、40歳以上の割合は男性で85.3%、女性で80.5%であった。

職種別にみると、脳・心臓疾患の労災支給決定(認定)件数は「輸送・機械運転従事者」が782件(31.1%)と最も多く、次いで「専門的・技術的職業従事者」が329件(13.1%)、「サービス職業従事者」が265件(10.5%)であった。また、職種別・性別にみると、男性は、「輸送・機械運転従事者」が775件(32.2%)と最も多く、次いで「専門的・技術的職業従事者」が310件(12.9%)、「販売従事者」が243件(10.1%)であった。女性は、「サービス職業従事者」が24件(21.2%)と最も多く、次いで「販売従事者」が21件(18.6%)、「事務従事者」が20件(17.7%)であった。

発症前6か月の労働時間以外の負荷要因をみると、「拘束時間の長い勤務」が30.1%と最も多く、次いで「交替制勤務・深夜勤務」が14.1%、「不規則な勤務」が13.0%であった。発症前各期間の時間外労働の平均時間数をみると、「発症前1か月」の時間外労働時間数が最も多く平均99.8時間であった。また、労働時間以外の負荷要因を年度別にみると、いずれの年も「拘束時間の長い勤務」が最も多かった。

〇 精神障害事案
労災支給決定(認定)された精神障害事案 3,982件のうち、2,713 件(68.1%)が男性、1,269件(31.9%)が女性であった。脳・心臓疾患の労災支給決定(認定)事案における女性の占める割合(4.5%)と比較すると精神障害を発病した女性の割合は高い。また、発病時の年齢が確認された事案について年齢階層別にみると、発病年齢が「30~39歳」が 1,172件(29.4%)で最も多く、次いで「40~49歳」が 1,141 件(28.7%)であった。

性別・年齢階層別でみると、男性の事案数2,713件のうち、「40~49 歳」が821件(30.3%)と最も多く、次いで「30~39歳」が806件(29.7%)であった。女性の事案数件のうち、「29歳以下」、「30~39歳」がともに366件(28.8%)と最も多く、次いで「40~49歳」が 320件(25.2%)であった。業種別にみると、精神障害事案数は「製造業」が692件(17.4%)と最も多く、次いで「卸売業、小売業」が544件(13.7%)、「医療、福祉」が525件(13.2%)、「運輸業、郵便業」が435件(10.9%)であった。

また、業種別・性別にみると、男性の事案数 2,713件のうち、「製造業」が562件(20.7%)と最も多く、次いで「運輸業、郵便業」が367件(13.5%)、「卸売業、小売業」が355件(13.1%)であった。女性の事案数1,269件のうち、「医療、福祉」が396件(31.2%)と最も多く、次いで「卸売業、小売業」が189件(14.9%)、「製造業」が130件(10.2%)であった。職種別にみると、精神障害事案数は「専門的・技術的職業従事者」が959件(24.1%)と最も多く、次いで「事務従事者」が706件(17.7%)、「サービス職業従事者」が489件(12.3%)であった。

また、職種別・性別にみると、男性の事案数2,713件のうち、「専門的・技術的職業従事者」が597件(22.0%)と最も多く、次いで「事務従事者」が377 件(13.9%)、「生産工程従事者」が348件(12.8%)であった。女性の事案数1,269件のうち、「専門的・技術的職業従事者」が362件(28.5%)と最も多く、次いで「事務従事者」が329件(25.9%)、「サービス職業従事者」が237件(18.7%)であった。平成24年度以降に認定基準に基づき労災支給決定(認定)された精神障害事案について具体的出来事別の事案数・割合をみると、男女総数で「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」に該当した事案が747件(22.3%)と最も多く、次いで「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」が596件(17.8%)、「上司とのトラブルがあった」が508件(15.2%)であった。さらに、性別でみると、男性では「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」が564件(24.7%)と最も多く、次いで「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」が395件(17.3%)、「2週間以上にわたって連続勤務を行った」が370件(16.2%)であった。女性では「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」が238件(22.4%)と最も多く、次いで「セクシュアルハラスメントを受けた」が224件(21.1%)、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」が 201 件(18.9%)であった。

また、男女総数で「極度の長時間労働」が294件(8.8%)、「恒常的な長時間労働」が859件(25.7%)であった。平成24年度以降に認定基準に基づき労災支給決定(認定)された精神障害について具体的出来事別の事案割合を年度別にみると、男女総数では、いずれの年も「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」に該当した事案が最も多く、近年は増加傾向にある。性別でみると、男性は男女総数と同様に、いずれの年も「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」に該当した事案が最も多く、近年は増加傾向にある。また、女性では、平成25年度及び平成30年度を除き「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」に該当した事案が最も多かったが、近年は横ばいとなっており、平成30年度は「セクシュアルハラスメントを受けた」や「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」の方が多かった。また、男女総数では「極度の長時間労働」は近年減少傾向にあるが、「恒常的な長時間労働」は横ばいとなっている。

〇 精神障害事案のうち自殺事案の抽出・分析
平成24年度から平成29年度までに認定基準に基づき労災支給決定(認定)された精神障害事案のうち、自殺事案(自殺未遂等の事案を除く)497件を抽出して分析を行った。自殺事案497件のうち、479件(96.4%)が男性、18件(3.6%)が女性であった。
発病時の年齢階層別にみると、発病年齢が「40~49 歳」が163 件(32.8%)と最も多く、次いで「30~39歳」が129件(26.0%)、「29歳以下」が99件(19.9%)であった。

業種別にみると、自殺事案数は「製造業」が107件(21.5%)と最も多く、次いで「建設業」が77件(15.5%)、「卸売業、小売業」が63件(12.7%)であった。職種別にみると、自殺事案数は「専門的・技術的職業従事者」が175件(35.2%)と最も多く、次いで「管理的職業従事者」が82件(16.5%)、「事務従事者」が77件(15.5%)であった。

自殺の時期について、月別にみると、自殺事案数は「3月」、「10 月」が50件(10.1%)と最も多く、次いで「5月」が46件(9.3%)、「7月」が44件(8.9%)であった。自殺の時期について、曜日別にみると、自殺事案数は「月曜日」が87件(17.5%)と最も多く、次いで「火曜日」が83件(16.7%)、「木曜日」が77件(15.5%)であった。

発病から死亡までの日数別にみると、自殺事案数は「6日以下」が235件(47.3%)であった。具体的出来事別の自殺事案数をみると、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」が177件(35.6%)と最も多く、次いで「2週間以上にわたって連続勤務を行った」が109件(21.9%)、「上司とのトラブルがあった」が92件(18.5%)であった。

また、「極度の長時間労働」が88件(17.7%)、「恒常的な長時間労働」が201件(40.4%)であった。労災支給決定(認定)事案の疾病に関する精神科等の医療機関の受診状況をみると、自殺事案数は「受診歴あり」が179件(36.0%)、「受診歴なし」が318件(64.0%)であった。「極度の長時間労働」があった事案について、同様に受診状況をみると、自殺事案数は「受診歴あり」が21件(23.9%)、「受診歴なし」が67件(76.1%)であった。

(2)国家公務員の公務災害認定事案の分析
人事院では、一般職の国家公務員について、各府省等から脳・心臓疾患事案及び精神疾患・自殺事案として協議されたもののうち、平成22(2010)年度から令和元(2019)年度までの10年間に公務災害として認定された事案(脳・心臓疾患32件と精神疾患等93件)を取りまとめ、分析を行った。

〇 脳・心臓疾患事案
(ア) 年齢階層別の事案数
脳・心臓疾患事案について、発症時年齢別にみると、「40~49 歳」の事案が14件、「50~59歳」の事案が10件で、これらの年齢層で全事案の75.0%を占めた。男女別割合では、男性が31人(96.9%)、女性が1人(3.1%)であった。また、死亡事案は17 件(53.1%)であった。

(イ) 組織区分別の事案数
組織区分別でみると、「脳疾患」では「地方出先機関等」が9件(52.9%)で最も多く、「心臓疾患」でも「地方出先機関等」が6件(40.0%)で最も多かった。

〇 精神疾患等事案
(ア) 性別・年齢階層別の事案数
精神疾患等事案について、性別・発症時年齢別にみると、年齢別では「29歳以下」の事案が26件(28.0%)、「30~39歳」の事案が28件(30.1%)、「40~49 歳」の事案が24件(25.8%)であった。男女別割合では、男性が62人(66.7%)、女性が31人(33.3%)であった。また、精神疾患等事案のうち自殺事案は24件(25.8%)であった。

(イ) 組織区分別の事案数
組織区分別でみると、「地方出先機関等」が62件(66.7%)で最も多かった。

(3)地方公務員の公務災害認定事案の分析
令和2(2020)年度、総務省では地方公務員災害補償基金が保有する平成22(2010)年1月から平成31(2019)年3月までの期間に公務災害として認定された脳・心臓疾患事案と精神疾患事案に関する公務災害認定理由書などの関連資料について提供を依頼した。過労死等防止調査研究センターでは、同基金から提供された資料を基にデータベースを構築し、このデータベースを基に公務災害として認定された脳・心臓疾患事案158件と精神疾患事案232件の分析を行った。

〇 脳・心臓疾患事案
脳・心臓疾患事案158件中、男女別割合では、男性が136件(86.1%)、女性が22件(13.9%)であった。発症時年齢別にみると、「50~59 歳」の事案が最も多く60件、次に多いのは「40~49歳」の事案で59件であった。対象疾患別にみると、心・血管疾患は54件、脳血管疾患は104件であった。「心・血管疾患」の主な内訳は、「心筋梗塞」が19件、「心停止(心臓性突然死を含む。)」が13件、「重症の不整脈(心室細動等)」が13件、「大動脈瘤破裂(解離性大動脈瘤を含む。)」が7件、「狭心症」が2件であった。

脳血管疾患の内訳は、「脳出血」が42件、「くも膜下出血」が38件、「脳梗塞(脳血栓症、脳塞栓症、ラクナ梗塞)」が24件であった。公務災害として認定された事案の職種の内訳は、義務教育学校職員が52件、その他の職員(一般職員等)が47件、警察職員が31件、義務教育学校職員以外の教育職員が21件、消防職員が7件であり、電気・ガス・水道事業職員、運輸事業職員、清掃事業職員、船員の該当者はいなかった。職務従事状況(重複回答)の主な内訳は、「日常の職務に比較して特に過重な職務に従事(長時間労働)」が139件、「精神的緊張を伴う職務」が50件、「その他」が31件などであった。
「日常の職務に比較して特に過重な職務に従事(長時間労働)」は男女ともに最も多く、男性は117件、女性は22件となっている。時間外労働時間については、発症前1か月の平均が87.4時間、発症前1~6か月間の平均が69.9時間であった。

〇 精神疾患・自殺事案
精神疾患事案232件について、男女別割合は、男性が147件(63.4%)、女性が85件(36.6%)であった。発症時年齢別にみると、「40~49 歳」の事案が最も多く69件、次に多いのは「30~39歳」の事案で64件であった。精神疾患事案232件のうち、自殺事案は73件あり、男性が64件、女性が9件であった。公務災害として認定された事案の職種の内訳は、その他の職員(一般職員等)が125件、義務教育学校職員が39件、消防職員が22件、義務教育学校職員以外の教育職員が20件、警察職員が19件、電気・ガス・水道事業職員と運輸事業職員がそれぞれ3件、清掃事業職員が1件であり、船員の該当者はいなかった。

職種別の主な業務負荷状況については、義務教育学校職員では「住民等との関係」、義務教育学校職員以外の教育職員と消防職員では「異常な出来事への遭遇」、警察職員では「対人関係等」、その他の職員(一般職員等)では「仕事の量」がそれぞれ最も多くなっている。
(つづく)A.K

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