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セクシュアルハラスメント等の防止対策の強化 | テクノファ

投稿日:2022年11月4日 更新日:

キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを行う際に必要な知識とそれを補う資料について、メンタルヘルス、自殺・過労死、ハラスメント等に関する知識、資料について説明していますが、今回は前回に続き令和3年版過労死等防止対策白書について説明します。
今回は、政府が過労死等防止対策推進法に基づき国会に年次報告した白書における、過労死等の防止のために講じた施策の実施状況報告について、項目1.労働行政機関等における対策、を前回の続きから説明します。

1.労働行政機関等における対策
1.4 ハラスメント防止対策

  • ハラスメント対策の強化(男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、労働施策総合推進法の改正)の概要。

(3)セクシュアルハラスメント等の防止対策の強化(男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、労働施策総合推進法)
〇セクシュアルハラスメント等に関する国、事業主及び労働者の義務の明確化
セクシュアルハラスメント等は行ってはならないこと等に対する関心理解を深めることや、他の労働者に対する言動に注意を払うこと等を関係者の責務として明記する。

〇事業主に相談等をした労働者に対する不利益取扱いの禁止
労働者が相談等を行うことに躊躇することがないよう、労働者がセクシュアルハラスメント等に関して事業主に相談したこと等を理由とした不利益取扱いを禁止する。

〇自社の労働者等が他社の労働者にセクシュアルハラスメントを行った場合の協力対応
事業主に対し、他社から雇用管理上の措置の実施(事実確認等)に関して必要な協力を求められた場合に、これに応じる努力義務を設ける。

〇調停の出頭・意見聴取の対象者の拡大
セクシュアルハラスメント等の調停制度について、紛争調整委員会が必要を認めた場合には、関係当事者の同意の有無に関わらず、職場の同僚等も参考人として出頭の求めや意見聴取が行えるよう、対象者を拡大する。
以上ハラスメント対策の強化(男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、労働施策総合推進法の改正)の概要を説明しました。
ここまで説明してきた改正後の労働施策総合推進法等に基づき、令和2年1月15日に「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」等が公布された。

このパワーハラスメントの防止のための指針には、事業主が講ずべき具体的な措置の内容等を定めたほか、自社で雇用する労働者以外に対する言動に関し行うことが望ましい取組や、顧客等からの著しい迷惑行為に関し行うことが望ましい取組が盛り込まれている。その概要を次に説明します。

  • 「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」の概要。

1.職場におけるパワーハラスメントの内容
<職場におけるパワーハラスメントとは>
〇職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要なかつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①~③までの要素を全て満たすもの。客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、該当しない。

〇職場におけるパワハラの3要素
①優越的な関係を背景とした言動
・当該事業主の業務を遂行するに当たって、当該言動を受ける労働者が行為者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるもの。
例:
・職務上の地位が上位の者による言動
・同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの。
・同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの等

②業務上必要なかつ相当な範囲を超えた言動
・社会通念に照らし、当該言動が明らかに当該事業主の業務上必要性がない、またはその態様が相当でないもの。

③労働者の就業環境が害される
・当該言動により労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること。
・この判断に当たっては、「平均的な労働者の感じ方」、すなわち、同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうかを。基準とすることが適当

〇個別の事案の判断に際しては、相談窓口の担当者等が相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも配慮しながら、相談者及び行為者の双方から丁寧に事実確認等を行うことも重要。

2.職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関し雇用管理上講ずべき措置
(1) 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
①職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること。
②行為者について厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、労働者に周知・啓発すること。

(2)相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
③相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること。
④相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。
職場におけるパワハラの発生のおそれがある場合や、パワハラに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応すること。

(3)職場のセクシュアルハラスメントにおける事後の迅速かつ適切な対応
⑤事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
⑥速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと。
⑦行為者に対する措置を適正に行うこと。
⑧再発防止に向けた措置を講ずること。

(4) 上記の(1)から(3)までの措置と併せて講ずべき措置
⑨相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること。
⑩相談したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。

3.職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関し行うことが望ましい取組
・セクハラ、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント等と一元的に相談に応じることのできる体制の整備
・職場におけるパワハラの原因や背景となる要因を解消するための取組、1コミュニケーションの活性化・円滑化のための研修等や、適正な業務目標の設定等の職場環境の改善のための取組
・労働者や労働組合等の参画を得つつ、アンケート調査や意見交換等を実施するなどにより、雇用管理上の措置の運用状況の的確な把握や必要な見直しの検討等に努める。

4.自らの雇用する労働者以外の者(就活生等)に対する言動に関し行うことが望ましい取組
・職場におけるパワハラを行ってはならない旨の方針の明確化等を行う際に、他の事業主の雇用する労働者、就職活動中の学生等の求職者、個人事業主、インターンシップを行う者等に対しても同様の方針を併せて示す。
・雇用管理上の措置全体も参考にしつつ、適切な相談対応等に努める。

5.他の事業主の雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為(いわゆるカスタマーハラスメント)に関し行うことが望ましい取組
・相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
・被害者への配慮のための取組
・被害防止のための取組(マニュアル作成や研修の実施等、業種・業態等の状況に応じた取組)

  • 改正法及びパワーハラスメントの防止のための指針等は、令和2年6月1日から施行された(パワーハラスメントを防止するための雇用管理上の措置義務については、中小事業主は令和4年3月31日まで努力義務)。

改正法の施行後は、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)において、ハラスメント防止措置が講じられていない事業所に対して措置を講ずるよう指導するとともに、ハラスメント事案が生じた事業所に対して、適切な事後の対応及び再発防止のための取組が行われるよう指導を実施している。また、労働者と事業主との間で紛争が生じている場合、都道府県労働局長による紛争解決援助や調停により紛争解決の促進を図っている。

なお、パワーハラスメント防止対策の法制化に伴い、職場における「パワーハラスメント」の定義が法律上規定されたことなどを踏まえ、精神障害の労災認定の基準についても見直しを行い、これまで、「嫌がらせ・いじめ」に類するものとして評価していた「パワーハラスメント」について、認定基準に明記し、評価の仕方などの明確化・具体化を図っている。
(つづく)A.K

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