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過労死等防止調査研究センター|テクノファ

投稿日:2022年11月5日 更新日:

キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを行う際に必要な知識とそれを補う資料について、メンタルヘルス、自殺・過労死、ハラスメント等に関する知識、資料について説明していますが、今回は前回に続き令和3年版過労死等防止対策白書について説明します。
国会への年次報告を義務付ける過労死等防止対策推進法及び過労死等の防止のための対策に関する大綱には、国が取り組む重点対策として、過労死等の調査研究を行うことが明記されています。過労死等の調査研究報告は前回までに説明していますが、今回は白書の過労死等の調査研究全体の実施状況報告について説明します。

2 調査研究等
過労死等の実態の解明のためには、労働時間や職場環境だけでなく、商取引上の慣行等の業界を取り巻く環境、生活時間等の労働者側の状況等の多岐にわたる要因を分析するとともにそれらの関連性を分析し、そうした分析に基づき効果的な予防対策に資する研究を行う必要がある。また、多角的、学際的な視点からの実態解明のための調査研究を進めていくことによって過労死等の全体像を明らかにする必要がある。
そのため、大綱にも示されている調査研究等について、国が重点的に取り組む①過労死等事案の分析、②労働・社会分野からみた過労死等の調査・分析、③疫学研究等、④結果の発信の実施状況について報告する。

2.1 過労死等事案の分析
(1)労災事案について
過労死等の実態を多角的に把握するため、独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所に設置されている過労死等防止調査研究センターにおいて、全国の都道府県労働局・労働基準監督署より、脳・心臓疾患と精神障害の調査資料を順次収集している。
過労死等防止調査研究センターでは、平成29年度以降、同時期に収集した平成22年1月から平成27年3月までの調査資料(労災認定された脳・心臓疾患事案1,564 件と精神障害事案2,000 件、労災認定されなかった事案の脳・心臓疾患事案1,961件と精神障害事案2,174件が対象)を皮切りに分析を開始した。

また、その後の調査研究においては、平成30年度には、平成 28年度の資料を追加して平成22 年度から平成28年度までの労災認定された脳・心臓疾患事案2,027件及び精神障害事案3,011件について分析するとともに、大綱で「過労死等が多く発生しているとの指摘がある」ものとして挙げられている重点業種・職種として建設業及びメディア業界を追加し、分析を行った。さらに、令和元年度には、平成22年度から平成29年度までの労災認定された脳・心臓疾患事案2,280件及び精神障害事案3,517件について基礎分析及び経年変化の分析を行い、令和2年度には、さらに平成30年度分の労災認定データを加えて、脳・心臓疾患事案2,518件及び精神障害事案3,982件について、これら事案の経年変化の分析を行うとともに、重点業種・職種の自動車運転従事者及び外食産業の分析などを行った。

(2)国家公務員の公務災害事案について
人事院では、令和2年度は、一般職の国家公務員について、各府省等から脳・心臓疾患事案及び精神疾患・自殺事案として協議されたもののうち、平成22年度から令和元年度までの10年間に公務災害と認定された事案(脳・心臓疾患32件と精神疾患等93件)について、分析を行った。その内容については前回までに説明しています。令和3年度は、公務災害と認定された事案及び公務災害と認定されなかった事案について分析を行うこととしている。

(3)地方公務員の公務災害事案について
総務省では、地方公務員の過労死等に係る公務災害認定事案に関する調査研究を実施し、令和2年度は、平成22年1月から平成31年3月までの期間に公務災害と認定された脳・心臓疾患事案158件と精神疾患事案 232件を対象に分析を行った。
令和3年度は、平成22年1月から令和2年3月までの期間に公務災害と認定された事案を分析の対象とすることを予定している。

2.2 労働・社会面からみた過労死等の調査・分析
過労死等の背景要因の分析、良好な職場環境を形成する要因に係る分析を行うため、労働時間、労災・公務災害補償、自殺など、過労死等と関連性を有する基本的なデータについては前回までに説明しました。また、労働・社会面からみた過労死等の調査・分析を行うため、平成 27年度から令和2年度まで、委託事業として企業及び労働者等に対するアンケート調査を実施した。

令和2年度は、自動車運転従事者、外食産業における企業、労働者について調査を行ったところであり、その主な結果については、前回までに説明しました。なお、令和3年度からは、本調査・分析は、独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所において実施することとしている。また、調査対象としては、・経年変化をみるため、毎年、全業種に対して調査・分析を行う・毎年、特定の業種を定め、特定の業種については、追加の項目を設けて、より詳細な分析を行う(令和3年度は、IT産業と建設業)。という方針で調査研究を進めることとしている。

2.3 疫学研究等
過労死等のリスク要因とそれぞれの疾患、健康影響との関連性や職場環境改善対策について、過労死等の防止の効果を把握するため、過労死等防止調査研究センターにおいて疫学研究等を行うこととし、過労死等の発生の実態解明や過労死等を防止する有効な対策の把握等を進めている。過労死等防止調査研究センターでは、長期的な観点から、(1)職域コホート研究及び(2)職場環境改善に向けた介入研究を行い、さらに(3)実験研究を行っているところである。
(1)職域コホート研究
過労死等の発生の実態解明を進めるため、どのような要因が過労死等のリスク要因として影響が強いのかを調査することを目的に、労働時間や労働負荷などの労働要因と、睡眠時間、運動習慣、休暇などの過ごし方及び肥満などの個人要因を広く長期間(10年程度)かけて調べる。また、過労死等のリスク要因と様々な疾患、健康影響の関連性、過労死等の予防に有効な労働環境、生活環境などについて、長期的な観点から検討している。
平成27年度から平成29年度にかけては、職域コホート研究で用いる調査項目の検討を行うとともに、調査に協力が得られる事業場を選定してコホート集団を構築し、初期調査を行った。平成30年度からは、対象集団を拡充しつつ継続的に調査を行っている。

(これまでの主な分析)
まだ研究の初期段階における試行的な分析結果ではあるが、労働者の勤怠データ、健診データ、ストレスチェックデータ、質問紙データ(労働時間、睡眠など)を入力し、労働時間と各評価指標との関係を分析すると、労働時間が長いほど、健診数値(BMI、血圧、LDL コレステロール)、心理的ストレス反応、起床時の疲労感、昼間の眠気等が悪化する傾向がみられた。
引き続き、協力企業に研究参加を促し、労働時間と健康指標、心理的指標、睡眠指標との関係を分析したところ、健康診断指標では、さらに ALT(肝機能)、空腹時血糖(糖尿病)、HbA1c(糖尿病)、中性脂肪との関連が示唆され、ストレスチェックでは前年度までの分析と同様、心理的ストレス反応との関連が示唆され、睡眠との関係でも前年度までの分析と同様、睡眠不足や入眠までの時間、起床時の疲労感、仕事中の眠気との関連が示唆された。ただし、これらは限られた条件下での分析であり、今後長期間に渡って、多業種·職種のデータを収集し、随時、健康に関する新たな指標を入力するといった継続的な取組を通じて、関連性を分析することが重要と考えられる。
(つづく)A.K

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