基礎編・理論編

重要課題は家族と仕事をつなぐ|テクノファ

投稿日:2022年11月9日 更新日:

キャリアコンサルタントが知っていると良いと思われる「キャリア開発と統合的ライフ・プラニング」を紹介します。本記事はサニー・S・ハンセンの著作「Integrative Life Planning」を横山先生と他の先生方が翻訳されたものです。

<ここより翻訳:サニー・s・ハンセン著>
重要課題3:家族と仕事をつなぐ
本章ですでに明らかにしたように、キャリア・ディベロプメントの分野において、男性―女性の役割と両者の関係性、そして家族と仕事のつながりに、もっと大きな関心が向けられる必要がある。本書では、家族と仕事に関する広範な文献のなかのほんの一部しか要約することができなかった。また、さまざまな種類の家族について言及したが、主に、共稼ぎ家族とひとり親家族に重点を置いた。というのも、その両者が今日の合衆国の家族形態のなかで主流となりつつあるからである。それ以外の家族形態―再婚家族、拡大家族、役割逆転家族(夫が家事を担当し、妻が主たる稼ぎ手になる)、そして成人単身家族―も、もちろん重要だが、ここでは主たる検討対象ではない。

人々が、扶養者と養育者という生得的役割を越えて進もうとするときに生じるジェンダー役割のジレンマは、家族と職場において大きなストレスを生み出す。仕事一家族の葛藤、ひとり親のストレス、介護者のストレス(成人の子どもが高齢の両親の介護をするときの)について、キャリアの専門家はもっと理解を深める必要がある。またキャリアの専門家は、どうすれば相互のライフ・プランニングやパートナーシップを手助けできるかについて知る必要がある。パートナーシップというとき、私は、お互いが尊敬を持って相手と接し、柔軟に話し合って役割を分担し、相手が役割を選ぶことを可能にし、そして2人の関係性、家族、およびコミュニティのために、個人の目標とパートナーの共通目標に合致する責任を果たす、その様な関係のことを意味している。

  •  重要課題4:多元性と包含性に価値を置く

将来あらゆる種類の違い-人種、民族、階級、宗教、ジェンダー、年齢、障害、出身地域、性的指向―についての、十分な情報を与えられたうえでの認識が、非常に重要になってくるであろう。すでに進行中の、企業における多様性トレーニング、大学における多文化カウンセリング・コースとカリキュラム、変化に向けた政治活動、偏見と差別をなくすプログラムなどが、社会が直面している人間関係の問題に対する建設的な対応を象徴している。われわれは、人々が多様性を理解するだけでなく、それを受け入れ、価値を置き、祝福するようになるために支援していかなければならないというのが、私の信念である。

職場で、そしてそれ以外の場所でも、積極的な人間関係を発展させていくことは、統合的ライフ・パターンの幅広い概念のなかでも重要な構成部分である。

  •  重要課題5:スピリチュアリティ(精神性・魂・霊性)と人生の目的を探求する

スピリチュアリティの探求は多くの人々の人生にとって中心となる重要課題であるが、キャリア・ディベロプメントに関する文献では、多くの場合見過ごされてきた。私はスビリチュアリティを、人生の意味と目的、すなわち人生に意味を与える自己の中核をなすものと位置づける。それは自己実現、個人の価値観、全体性、そしてコミュニティの感覚の探求と関係がある。私はスビリチェアリティという用語を、高次元の力への切望、自己を超えた何か大きなもの、社会への還元、自己の才能をコミュニティの改善に向けて役立てること、結びつき感覚の実現など、それらに対する必要性という意味で使う。キャリア・ディベロプメントに向けた従来の論理的で合理的なアプローチは、スビリチェアリティが多くの文化的グループのなかで、人生の中心的な位置を占めているにもかかわらず、それに対してほとんど関心を向けてこなかった。しかし、キャリアの専門家として、われわれは、1人の人生との関連で、さらにコミュニティにおける、金銭の価値そして物質主義の意味を含めて、人々の人生の意味と目的の探求を支援する、重要な役割を果たすことができる。

  •  重要課題6:個人の転換(期)と組織の変化のマネジメント

個人および社会の変化に対処することは、最も重要な課題の1つである。クライエントが転換のプロセスについて考え、それにうまく対応することができるように支援するために、キャリアの専門家が使うことができるいくつかのモデルが存在する。単に再就職の斡旋や、学校から仕事へという状況にとってだけでなく、人生の中盤や後半の設計を含むあらゆる人生段階に起こる転換(期)のために、転換(期)支援カウンセリングは、明らかに、これからの重要な分野になってくるであろう。転換(期)にある人々が、人生のさまざまな段階で、たとえば、Gail Sheehy(1995)が述べているような45歳以降の第二成人期などの段階で、自分自身の文脈のなかで、自分のアイデンティティの最も重要な部分を統合するのを支援することが、キャリアの専門家にとっての大きな課題となるであろう。新世紀に向けて、人々が直面するかもしれない変化と不安定さに備えるのを支援するH.B.Gelatt(1989)の「積極的(肯定的)不確実性モデル」など新しい意思決定モデルを用いながら、クライエントもまた、意思決定をしたり転換を遂げていくために、学ぶ必要があることを知らなければならない。職場が新しい構造、方針、仕事形態を導入するにつれて、組織における変化もまた、個人とパートナーのキャリア上の意思決定、および仕事と人生の価値に大きな影響を与えるであろう。

転換(期)支援カウンセリングにおいて同様に重要なことは、人々がチェンジ・エージェントになるのを支援するということである。すでに数多く出版されている組織ダイナミクスとシステム変化に関する文献が、このテーマを探究している。私たち1人ひとりが、自らの人生、人間関係、所属する機関のなかでチェンジ・エージェントになることができ、よって、特にローカルな仕事をグローバルな文脈のなかに位置づけながら、もっと大きなコミュニティに影響を及ぼすことができるであろう。

  •  結論

キャリア・ディベロプメントに向けた競合的ライフ・プランニングのアブローチは、その性質からして、総合的、学際的、包括的である。システムズ・アプローチとして、それは人生と社会の多くの構成部分をつなぎ合わせる。どのようなカウンセラー、キャリアの専門家、キャリア・プランナーであれ、この概念の全体を一度に吸収することは無理であろう。すべての人が、所与の時機と仕事に合わせて、最も重要で、最も意義深いと思われる中心的な課題を選択しなければならないであろう。それぞれの課題が達成されるにつれて、それは人の人生のさまざまな次元を結びつける。

すなわち、アイデンティティ(民族、人種、ジェンダー、階級、年齢、能力、信念、性的指向)、人間の発達(社会的、知的、身体的、スピリチュアル、情緒的、キャリア的)、人生の役割(愛、労働、学習、余暇)、そして文脈(社会、組織、家族、個人)、である。これらは統合的ライフ・パターン・キルトのピースである。さて、それではこの概念の根底に横たわる理論的基盤と知識の動向に目を向けることにしよう。
(つづく)平林

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