新型コロナウイルス感染症は、私たちの生活に大きな変化を呼び起こしました。キャリアコンサルタントとしてクライアントを支援する立場でこの新型コロナがどのような状況を作り出したのか、今何が起きているのか、これからどのような世界が待っているのか、知っておく必要があります。ここでは厚生労働省の白書からキャリアコンサルタントが知っておくべき情報をお伝えします。
第13節 生活衛生関係営業の振興など
1 生活衛生関係営業の振興
国民生活に密着した身近な生活衛生関係営業である理容業、美容業、クリーニング業、旅館業、浴場業、興行場営業、飲食店営業、食肉販売業、食鳥肉販売業、氷雪販売業をあわせて「生活衛生関係営業」(以下「生衛業」といいます。)といい、全国で約108万店が営業しています。これらの衛生水準の維持向上や営業の振興を図り、公衆衛生の向上・増進及び 国民生活の安定に寄与する観点から、予算や日本政策金融公庫の政策融資、税制措置等の施策を実施しています。
公衆衛生の確保の観点からは、営業者自身の自主的取組み、生活衛生同業組合等の互助・支援、保健所等を通じた指導・規制の組み合わせにより衛生水準を向上させ、消費者の安全、安心の確保を図っています。他方、生衛業の大半は中小零細事業者であり、市場が成熟する中で、大規模チェーン店等との競争の激化もあり、厳しい経営環境にあります。こうした中で、生衛業の経営者には、消費者のニーズを的確に把握し、専門性や対面販売、地域密着等の経営特質を活かしながら、顧客満足や付加価値を高めていくことが求められます。また、高齢化等の進展により、地域で身近に必要な商品・サービスの提供が得られにくくなる、いわゆる「買物弱者」問題も懸念されています。生衛業の多くは住民に身近な事業者であり、買物弱者対策のほか、地域の健康づくりや地域コミュニティの活性化等に積極的に貢献していくことが期待されます。生衛業の振興については、こうした課題も踏まえ、生活衛生関係営業対策事業費補助金における先進的モデル事業(特別課題)により各営業が抱える課題に対応していくとともに、生活衛生関係事業者の連携促進を通じた地域活性化等の施策を進めています。
*25 総務省・経済産業省「平成28年経済センサス-活動調査」を厚生労働省で再編加工。
2 民泊サービスの健全な普及及び違法民泊対策への取組み
自宅の一部や別荘、マンションの空き室などを活用して宿泊サービスを提供するいわゆる「民泊サービス」の健全な普及を図るために住宅宿泊事業者に係る届出制度並びに住宅宿泊管理業者及び住宅宿泊仲介業者に係る登録制度を設ける等の措置を講ずることとした「住宅宿泊事業法」(平成29年法律第65号)及び無許可営業者等に対する罰則の引上げ等により違法民泊取締りを強化する「旅館業法の一部を改正する法律」(平成29年法律第 84号)が、2018(平成30)年6月に施行されました。
法施行後は、違法民泊対策関係省庁連絡会議の定期的な開催等による違法民泊取締りに関する情報共有・連携強化、違法民泊の利用・運営の問題点を呼びかける啓発メッセージの発出等、関係省庁や地方公共団体とも連携した更なる違法民泊対策に取り組んでいます。
3 建築物における衛生対策の推進
「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」(昭和45年法律第20号)に基づき、興行場、百貨店、店舗、事務所、学校などの用途に供される建築物で相当の規模*26を有するもの(特定建築物)については、特定建築物の維持管理について権原を有する者(特定建築物維持管理権原者)に対しては建築物環境衛生管理基準に従って維持管理するよう義務づけるなど、建築物内の衛生の確保を図っています。
また、建築物の衛生管理については、空気環境、給排水、清掃、ねずみ等防除と多岐にわたっており、建築物清掃業などの8業種について都道府県知事の登録制度が設けられています。近年、ビルクリーニング分野においては生産性向上等の取組みを行ってもなお人手不足の状況が深刻化していることから、在留資格「特定技能」による外国人材の受入れの取組みを進めています。
*26 興行場、百貨店、美術館などにおいては3,000㎡以上、小学校、中学校などでは8,000㎡以上が対象となっています。
4 新型コロナウイルス感染症に関連した支援
新型コロナウイルス感染症の影響により、一時的に、売上の減少など業況悪化を来している生活衛生関係営業者の資金繰りを支援するため、既往債務の借換を含め、日本政策金融公庫の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」等において、実質無利子・無担保の貸付を行っています。また、業界団体による、業種別の新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドラインの策定と周知を支援し、生活衛生関係営業者がガイドラインに沿った適切な衛生対策を行いながら「新しい生活様式」を踏まえた経営スタイルに移行できるよう助言・指導等の支援を行っています。
第14節 原爆被爆者の援護
被爆者援護法*27に基づき、被爆者健康手帳を交付された被爆者に対しては、従来から、①健康診断の実施、②公費による医療の給付、③各種手当等の支給、④相談事業といった福祉事業の実施など、保健・医療・福祉にわたる総合的な援護施策を推進しています。また、厚生労働大臣は被爆者援護法に基づく原爆症の認定(医療特別手当を支給)を行うに当たっては、「疾病・障害認定審査会原子爆弾被爆者医療分科会」において、科学的・医学的見地からの専門的な意見を聴いています。
原爆症認定集団訴訟については、2009(平成21)年8月6日、集団訴訟の早期解決と原告の早期救済を図るために、総理と被爆者団体との間で、「原爆症認定集団訴訟の終結に関する基本方針に係る確認書」を締結しました。この確認書の内容を踏まえ、2009年12月1 日に、「原爆症認定集団訴訟の原告に係る問題の解決のための基金に対する補助に関する法律」が、議員立法として全会一致で成立し、集団訴訟原告に係る問題の解決のための支援を行う基金が設けられました(2010(平成22)年4月1日施行)。 さらに、この法律の附則において、原爆症認定制度の在り方について検討を加える旨規定されたことも踏まえ、2010年12月から「原爆症認定制度の在り方に関する検討会」を開催しました。2013(平成25)年12月には、報告書が取りまとめられ、これを受けて「新しい審査の方針」(2008(平成20)年4月決定)の改正が行われ、審査基準の明確化とともに、積極認定範囲が拡大されました。2021(令和3)年3月末までに約18,000件の認定を行っています。
在外被爆者に対しては、被爆者援護法に基づき、国外からの被爆者健康手帳の交付申請を可能としているほか、医療費や各種手当の支給などの援護施策を講じています。また、原子爆弾の惨禍や被爆体験を次世代へ継承するため、2016(平成28)年度から広島市・長崎市へ被爆建物の保存工事に対する補助や、2018(平成30)年度から被爆体験の伝承者等の派遣事業を行う(2020(令和2)年度から伝承者に加え被爆者本人も派遣可能とする(拡充))とともに、2019(令和元)年度から被爆樹木への保存の支援を行っています。2020年度においては、75周年を契機として、より一層次世代への被爆の実相の継承に資するため、広島・長崎で開催される平和祈念式典への国外の若者の招聘を支援することとしました。
さらに、2021年度においては、高齢化する被爆者の方々が安心して介護を受けることができるよう、認知症対応型共同生活介護を介護保険サービスの自己負担分の助成対象に追加することとしました。
*27 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律
(つづく)I.K