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学生等への労働関係法令等に関する啓発の実施|テクノファ

投稿日:2022年11月25日 更新日:

キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを行う際に必要な知識とそれを補う資料について、メンタルヘルス、自殺・過労死、ハラスメント等に関する知識、資料について説明していますが、今回は前回に続き令和3年版過労死等防止対策白書について説明します。

今回は、政府が過労死等防止対策推進法に基づき国会に年次報告した白書における、過労死等の防止のために講じた施策の実施状況報告について、項目3.啓発、を前回の続きから説明します。
3 啓発
3.2 大学・高等学校等の学生等への労働関係法令等に関する啓発の実施
(6)高校生や大学生をはじめとする就職予定の方等を対象とした労働関係法令に関する e-ラーニング教材等の公開や周知
主に高校生、大学生等が労働時間の決まりといった労働関係法令の基礎知識を分かりやすく学ぶことができるよう、平成28年度からパソコンやスマートフォンで閲覧可能なe-ラーニングシステム教材(e-ラーニングでチェック!今日から使える労働法~Let’s study labor law~)を無料で公開し、登録者数は8,481人(令和3年3月31日時点)となっている。

また、厚生労働省委託事業として、労働基準関係法令の紹介、労働条件に関するQ&A及び事案に応じた相談先の紹介を行うポータルサイト「確かめよう労働条件」を運営している。令和2年には、同サイト内において高校生・大学生等や就職後間もない若者が労働関係法令を手軽にかつ興味をもって学べるよう配信している、学習用クイズアプリ「労働条件(RJ)パトロール!」のコンテンツ拡充を行った。引き続き、積極的な周知及び内容の一層の充実に取り組んでいく。

3.3 長時間労働の削減のための周知・啓発の実施
「日本再興戦略」改訂2014において、「働き過ぎ防止のための取組強化」が盛り込まれ、また、同じ平成26年には過労死等防止対策推進法が成立し、長時間労働削減に向けた取組の強化を図るとともに、長時間にわたる時間外労働が恒常的に行われ、過重労働による健康障害の発生が懸念される事業場に対する重点的な指導等の取組を進めている。長時間労働が行われている事業場や過労死等を発生させた事業場に対する監督指導を行うとともに、「過労死等防止啓発月間」である令和2年11月に過重労働解消キャンペーンとして、以下の取組を実施した。
① 労使の主体的な取組の促進を図るため、使用者団体や労働組合に対し、長時間労働削減に向けた取組の周知・啓発などの実施に関する協力要請
過重労働解消キャンペーンの実施に先立ち、使用者団体や労働組合に対し、長時間労働削減に向けた取組に関する周知・啓発などの実施について、協力要請を行い、労使の主体的な取組を促した。
② 労働局長によるベストプラクティス企業への職場訪問の実施
全国の都道府県労働局長が長時間労働削減に向けた積極的な取組を行っている各地域の企業を訪問し、取組事例を報道等により地域に紹介した。
③ 過労死等を発生させた事業場等に対する重点監督
全国の9,120事業場に対して重点監督を実施し、30.8%に当たる2,807事業場に対して、違法な長時間労働について、是正・改善に向けた指導を行った。
④ 全国一斉の無料電話相談「過重労働解消相談ダイヤル」の設置
フリーダイヤルによる全国一斉の「過重労働解消相談ダイヤル」を実施し、都道府県労働局の担当官が、相談に対する指導・助言を行った。「過重労働解消相談ダイヤル」には、合計で162件の相談が寄せられ、相談内容としては、長時間労働・過重労働に関するものが30件(18.5%)と最も多かった。
⑤ 事業主、労務担当者等を対象に、自主的な過重労働防止対策を推進することを目的としたセミナーの実施
企業における自主的な過重労働防止対策を推進することを目的として、11月を中心に全国で計80回、「過重労働解消のためのセミナー」を実施した。

3.4 過重労働による健康障害の防止に関する周知・啓発の実施
長時間働くことにより労働者が健康を損なうことがないよう、疲労の蓄積をもたらす過重労働を是正するとともに、事業者が労働者の健康管理に係る措置を適切に実施することが重要である。このため、国は、都道府県労働局や労働基準監督署が行っている監督指導や個別指導、集団指導において、過重労働による健康障害防止の重要性を啓発し、「過重労働による健康障害防止のための総合対策」に基づき、事業者等に対して「過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置」の周知を図っている。

さらに、大綱の内容を紹介するパンフレットでは、働き過ぎによる健康障害を防止するために、事業者の取組のほか、睡眠時間を確保し、生活習慣病の予防などの健康づくりに取り組むことも重要であることを盛り込み、これらについて周知啓発を行った。加えて、平成26年11月に、厚生労働省 Webサイトに開設した労働条件ポータルサイト「確かめよう 労働条件」において、引き続き労働基準法等関係法令の概要などについての基礎知識や労働条件に関する相談窓口などの情報を掲載することにより、労働者、事業主等に対して広く過重労働による健康障害防止のための情報発信を行っている。

また、令和2年9月の全国労働衛生週間準備月間及び10月1~7日の本週間において、過重労働による健康障害防止のための総合対策の推進を重点事項として掲げ、国民、事業者等に対する意識啓発を行った。

3.5 勤務間インターバル制度の導入促進
「勤務間インターバル制度」は、労働者の終業時刻から、次の始業時刻の間に一定時間の休息を設定する制度であり、労働者の生活時間や睡眠時間を確保し、健康な生活を送るために重要である。
「ニッポン一億総活躍プラン」では、「長時間労働是正や勤務間インターバルの自発的導入を促進するため、専門的な知識やノウハウを活用した助言・指導、こうした制度を積極的に導入しようとする企業に対する新たな支援策を展開する」こととされ、さらに、「働き方改革実行計画」では、「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法を改正し、事業者は、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければならない旨の努力義務を課し、制度の普及促進に向けて、政府は労使関係者を含む有識者検討会を立ち上げる。また、政府は、同制度を導入する中小企業への助成金の活用や好事例の周知を通じて、取り組みを推進する」とされた。

また、働き方改革関連法により改正された労働時間等設定改善法により、平成 31年4月1日から、事業主は、勤務間インターバル制度の導入に努めることとされた。さらに、平成 30年7月に閣議決定された「過労死等の防止のための対策に関する大綱」において、過労死を防止する1つの手段として、勤務間インターバル制度の普及に向けて数値目標が設定され、令和3年年7月に変更された同大綱において、次のように変更された。

労働者数30人以上の企業のうち、
① 勤務間インターバル制度を知らなかった企業割合を5%未満とする(令和7まで)。
② 勤務間インターバル制度(終業時刻から次の始業時刻までの間に一定時間以上の休息時間を設けることについて就業規則又は労使協定等で定めているものに限る)を導入している企業割合を15%以上とする(令和7年まで)。
厚生労働省においては、平成29年5月から「勤務間インターバル制度普及促進ための有識者検討会」を開催し、国内における勤務間インターバル制度の導入状況などの実態や課題の把握、諸外国における勤務間インターバル制度と運用状況の把握及び制度導入促進を図るための方策について検討を行い、平成30年12月に報告書のとりまとめを行った。

また、勤務間インターバル制度の導入に向けた取組を促進するため、一定以上の休息時間を設定して勤務間インターバル制度を導入する中小企業への助成金(平成 29 年度に新設)の活用を通じて、企業の自主的な取組を支援している。令和2年度には 2,449 件の企業が助成金を活用しており、平成29年のコース開設からの総支給件数は16,793件となっている。

これに加え、オンライン配信によるシンポジウムを開催したほか、勤務間インターバル制度を導入・運用する際のポイント等を取りまとめた「勤務間インターバル制度導入・運用マニュアル」については、全業種版やIT業種版に加え、令和2年度には、建設業界の特性を踏まえた建設業版を作成し、これらの活用を図ることによって、企業における勤務間インターバル制度の導入促進に取り組んでいる。
(つづく)A.K

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