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商慣行・勤務環境等を踏まえた取組の推進 | テクノファ

投稿日:2022年11月28日 更新日:

キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを行う際に必要な知識とそれを補う資料について、メンタルヘルス、自殺・過労死、ハラスメント等に関する知識、資料について説明していますが、今回は前回に続き令和3年版過労死等防止対策白書について説明します。
今回は、政府が過労死等防止対策推進法に基づき国会に年次報告した白書における、過労死等の防止のために講じた施策の実施状況報告について、白書の項目3.啓発、の内容を前回の続きの部分から説明します。

3 啓発
3.10 商慣行・勤務環境等を踏まえた取組の推進
(1)トラック運送業
ア トラック運送業の概況
トラック運送業では、コストに見合った適正な運賃が十分収受できない中で「ジャスト・イン・タイム」での納品を求められるなど、依然として、発注者である荷主からの厳しい要請に対応している状況である。また、荷主側の都合により長時間の荷待ちを強いられるといった問題も見られる。こうしたことが一因となり、トラック運送業では、運転者が長時間労働を余儀なくされている実態がある。

トラック運転者については、厚生労働大臣が定める「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年2月9日労働省告示第7号)により拘束時間の上限等が定められている。平成27年トラック輸送状況の実態調査(厚生労働省・国土交通省)では、1回の運行における拘束時間が13時間を超える運行が全体の36.6%となっている。また、全体の5割弱の運行で荷待ち時間が生じており、このうち3割弱で2時間を超えていること、荷主都合による荷待ち時間は集荷時(製品の完成待ち等)と到着時(車両の順番待ち等)の双方で発生していること、運送に加えて荷役を行う場合に事前連絡なく現場で依頼され荷役料金を収受していないケースもあること、といった取引の実態も見られた。

さらに、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和2年)では、1か月の所定内実労働時間数及び超過実労働時間数の合計は、営業用大型貨物自動車運転者では211 時間、営業用普通・小型貨物自動車運転者では207時間となっており、調査産業全体の平均の175時間を大きく上回っている。また、総務省「就業構造基本調査」(平成29年)では、週の労働時間が60時間以上の雇用者割合(年間200日以上就業の者のうち正規の職員・従業員)について、全体の平均が11.8%であるのに対し、自動車運転従事者では37.3%であり、各種調査においてトラック運転者の長時間労働の実態が明らかとなっている。

また、令和2年度の脳・心臓疾患の労災支給決定(認定)件数194件のうち53件が、トラック運転者に関するものであり、労災支給決定(認定)件数に占めるトラック運転者の割合が大きい。

このようにトラック運転者の長時間労働等の実態は深刻であり、その改善は急務であるが、上述のとおり、トラック運送事業者側のみの努力で解決することは困難であることから、荷主との取引関係の在り方も含めて改善を図っていくことが不可欠である。

なお、働き方改革関連法により、自動車運転者にも時間外労働の上限規制が令和6年4月1日から適用されることとなり、改善基準告示についてもこれを踏まえて見直しを行う必要があることから、厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会の下に自動車運転者労働時間等専門委員会を設置し、トラックなど各業態の労働者、使用者代表委員と公益委員により、改善基準告示改正に向けた検討が進められている。

イ トラック輸送における取引環境・労働時間改善協議会
トラック運送業における取引環境の改善及び長時間労働の抑制を実現するための具体的な環境整備等を図ることを目的として、平成27年度に「トラック輸送における取引環境・労働時間改善協議会」を中央と各都道府県に設置した。トラック協議会は、学識経験者、荷主、トラック運送事業者、経済団体、労働者団体、行政(厚生労働省、国土交通省等)などにより構成され、取引環境の改善及び長時間労働の抑制に向けた議論を進めている。

平成28、29年度の2年にわたり、全ての都道府県において実施したパイロット事業(実証実験)では、貨物の発送を依頼する荷主(発荷主)・トラック運送事業者・貨物を受け取る荷主(着荷主)などの一連の物流に関わる企業が協力し、コンサルタントのアドバイスの下、トラック運転者の労働時間短縮等に取り組み、そこから得られた知見を「荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン」として取りまとめ、サプライチェーンの関係者に幅広く周知するとともに、トラック協議会での議論に活用している。

加えて、平成28年7月に、トラック協議会の下にワーキンググループとして、「トラック運送業の適正運賃・料金検討会」が設置された。学識経験者と行政(厚生労働省、国土交通省、経済産業省、農林水産省)から構成され、オブザーバーとして経済団体や事業者団体も参画している。この検討会は、適正な運賃・料金の収受に係る論点を整理し、トラック協議会へ助言することを目的としており、平成28年度はトラック運送事業者に対する実態調査を実施した。長時間労働の抑制を含め、トラック運送業における労働環境の改善に当たっては、トラック運送事業者が適正な運賃・料金を収受できることが重要であるが、実態調査の結果、回答のあった545件のうち、2~3割の事業者で、附帯業務(荷の仕分けなど)に対する料金や高速道路利用料などの費用を十分に収受できていないことが明らかとなった。実態調査の結果等を踏まえ、運送の対価である運賃と運送以外の役務の対価である料金を別建てで収受する環境を整備するため、平成29年8月に標準貨物自動車運送約款等の改正を行った(平成29年11月4日施行)。引き続きトラック運送業の持続可能な事業運営及び運転者の確保・育成、生産性向上を図っていくため、適正な運賃・料金の収受について、トラック事業者と荷主の双方の理解の形成を促すための対策や環境整備のための方策等について検討を行うこととしている。

このようにトラック協議会では、取引環境の改善と長時間労働の抑制について、総合的に取り組んでいる。平成30年度には、引き続きトラック運転者の労働時間改善に取り組む荷主及びトラック運送事業者に対し専門家がアドバイスを行うコンサルティング事業を実施し、令和元年度には、荷待ち時間が特に長い輸送分野(加工食品、紙・パルプ、建設資材)について、課題の整理や改善策の検討等を進めるとともに、実態の更なる把握・分析のための調査や、課題解決に資する試験的な取組(アドバンス事業)を実施し、成果として令和2年5月に各輸送品目について「荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン」をとりまとめた。

ウ 自動車運送事業の働き方改革の実現に向けた政府行動計画
「働き方改革実行計画」において関係省庁横断的な検討の場を設けることとされたことを踏まえ、平成29年6月に「自動車運送事業の働き方改革に関する関係省庁連絡会議」が設置され、自動車運送事業の長時間労働を是正するための環境を整備するための関連制度の見直しや支援措置に関する行動計画を策定し、総合的かつ計画的に推進することとされた。

同年8月の第2回会議において、当面取り組む63の施策を盛り込んだ「トラック・バス・タクシーの働き方改革『直ちに取り組む施策』」が取りまとめられた。さらに、平成30年5月の第4回会議において、「自動車運送事業の働き方改革の実現に向けた政府行動計画」を決定した。政府行動計画においては、令和6年4月の時間外労働の上限規制の適用開始までの期間に取り組む88の施策のほか、できるだけ早い時期に全ての事業者が拘束時間や休日労働、時間外労働の基準を遵守している状態を実現するという目標が設定された。政府行動計画の重点施策として、トラック輸送の生産性の向上・物流の効率化、女性や60代以上の運転者等も働きやすいより「ホワイト」な労働環境の実現を目的とし「「ホワイト物流」推進運動」を開始し、令和3年4月末時点で 1,213 の企業が賛同表明を行っている。

また、自動車運送事業(トラック・バス・タクシー事業)の職場環境改善に向けた各事業者の取組を「見える化」する制度として、「運転者職場環境良好度認証制度」の認証が令和2年度にスタートし、令和2年度申請審査後の状況でトラック事業者では1,717 社が認証・公表されている。

エ 貨物自動車運送事業法の改正(議員立法)
トラック運転者の不足により物流が滞ることのないよう、運転者の労働条件の改善等を図るため、①トラック運送業の規制の適正化、②トラック運送事業者が遵守すべき事項の明確化、③荷主対策の深度化、④標準的な運賃の告示制度の導入を内容とする、貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律(平成30年 12月14日法律第96号)が議員立法により平成30年12月に成立し、公布された。

オ ポータルサイトの運営による情報発信
令和元年度に「トラック運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト」を開設し、広く国民、荷主、トラック運送事業者に対して、貨物を運送するトラック運転者の長時間労働の現状や、その改善に向けた取組・施策などを周知し、トラック運転者の労働時間短縮に向けた荷主とトラック運送事業者の取組を支援している。

ポータルサイトには、トラック協議会の取組などにより得られた荷主とトラック運送事業者の協力によるトラック運転者の労働時間短縮の進め方・課題解決の具体的な取組事例などをまとめた各種ガイドラインやハンドブック等を掲載している。また、荷主・トラック運送事業者がトラック運転者の労働時間短縮に向けて自社の取り組むべき課題を洗い出せる自己診断ツールや、トラック運転者の労働実態を紹介する周知用動画・発着荷主企業向け周知用動画などを掲載している。

令和2年度には、トラック運転者の長時間労働改善に向けて、「荷主どうし」の共同配送に興味のある荷主企業を、ポータルサイトを通じて募集した。 「荷主連携マッチング~あい積ミーティング~」と題して、荷主企業が、物流生産性向上とトラック運転者の長時間労働改善に向けた意見交換を行うオンラインミーティングを全4回開催した。開催結果の報告書をポータルサイトに掲載することにより、好事例の普及を行っている。
(つづく)A.K

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