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地方公務員の働き方改革 |キャリコン国家試験220テクノファ 

投稿日:2022年12月4日 更新日:

キャリアコンサルタント がキャリアコンサルティングを行う際に必要な知識とそれを補う資料について、メンタルヘルス、自殺・過労死、ハラスメント等に関する知識、資料について説明していますが、今回は前回に続き令和3年版過労死等防止対策白書について説明します。
今回は、政府が過労死等防止対策推進法に基づき国会に年次報告した白書における、過労死等の防止のために講じた施策の実施状況報告について、白書の項目3.啓発、の内容を前回の続きから説明します。

3 啓発
3.12 公務員に対する周知・啓発等の実施
(2)地方公務員に対する周知・啓発等の実施
エ 地方公務員の働き方改革
地方公共団体においても長時間労働の是正をはじめとする働き方改革は経営上の重要な課題となっている。総務省では、各地方公共団体における働き方改革に向けた取組を支援するため、以下の取組を実施した。
① 働き方改革の積極的な取組を要請
各地方公共団体に対し、「令和2年度働き方改革推進強化月間について」(令和2年6月29日総務省自治行政局公務員部長通知)を発出し、時差出勤、テレワークの推進、年次休暇の取得促進及び「ゆう活」の実施等の働き方改革の取組の推進を要請した。

② 地方公共団体間の意見交換を通じた実践的な取組手法の検討
働き方改革の推進手法について、自治体職員間の意見交換を通じた検討を行い、その結果を報告書に取りまとめた。

③ 働き方改革への意識醸成に資する研修の実施
男性を含めた地方公務員の意識啓発を進めるため、自治大学校の各研修課程において「女性活躍・働き方改革」に関する講義を実施した。

④ 先進的な取組事例の紹介
地方公務員のワークライフバランス推進に向け、テレワークの活用をはじめとする働き方改革に資する先進的な取組事例の紹介など、情報発信の充実を図った。

オ 警察職員に対する取組
警察職員については、重大事件の捜査や大規模災害への対応に従事するなどして、過重な負荷に起因する健康障害が生じるリスクが高いことから、警察庁では、都道府県警察に対し、各種通達や全国会議等を通じ、産業保健スタッフの相談対応力の向上のほか、職員の勤務状況に応じた臨時の健康診断や医師による面接指導の実施、業務の合理化・効率化等による快適な職場環境の形成、ストレスチェックの集計・分析結果を活用することによるメンタルヘルス対策の充実等、警察職員への複合的な健康管理対策を講じるよう指示し、過重な負荷に起因する健康障害を防止するための対策の充実を図っている。

カ 消防職員に対する取組
消防職員については、火災等の災害現場などで、悲惨な状況や恐怖を伴う体験に直面すると、精神的ショックやストレスを受けることがあり、これにより、身体、精神、情動又は行動に様々な障害が発生するおそれがある。消防庁では、平成24年度に東日本大震災における消防職団員の惨事ストレスの状況等を踏まえ、消防本部等における対策に関する実態調査及び分析を行った。この結果を踏まえ、消防職員等に対する惨事ストレス対策に関する教育及び普及・啓発、消防職員等の家族への惨事ストレスの周知・理解の促進などの取組を進めている。

次からは過労死等の防止のために講じた施策について、相談体制の整備等の実施状況報告です。
4 相談体制の整備等
4.1 労働条件や健康管理に関する相談窓口の設置
労働条件に関する相談窓口については、平日夜間及び土日祝日に労働者等からの相談を無料で受け付ける「労働条件相談ほっとライン」を設置し、令和2年度は、60,997件の相談を受け付けた。
健康管理に関しては、企業が行う産業保健活動を支援するため、産業保健総合支援センターやその地域窓口において、様々なサービスを行っている。

産業保健総合支援センターでは、産業医等の産業保健スタッフ等に対し、メンタルヘルス対策や過重労働対策も含む産業保健に関する専門的な相談に対する対応等を行っており、令和2年度の専門的な相談の実績は36,677件であった。

また、労働者数50人未満の事業場の事業者やそこで働く労働者に対する産業保健サービスを充実させるため、地域産業保健センターでは、産業保健総合支援センターと連携し、労働者の健康管理に関する相談、健康診断結果についての医師への意見聴取、長時間労働者に対する面接指導等の支援を行っている。令和2年度の地域窓口による相談等の実績は約86,000件であった。

また、「こころの耳電話相談」を開設するとともに、「こころの耳」によるメール相談、SNS相談対応を行った。令和2年度の電話相談件数は12,068件、メール相談件数は6,199件、SNS相談件数は8,024件であった。職場のハラスメントに関する相談窓口については、令和元年度から、職場におけるハラスメントで悩みを抱えている労働者を対象に、夜間や休日にも対応する電話及びメールによる無料相談窓口を設けている。

フリーランスと発注者等との契約等のトラブルについては、関係省庁と連携して、フリーランスの方が弁護士等に相談できる窓口(フリーランス・トラブル110番)を設置した。

4.2 産業医等相談に応じる者に対する研修の実施
産業医等の産業保健スタッフは、事業者や労働者からメンタルヘルス不調やその対策、過重労働による健康障害防止対策などについて、直接相談を受けるため、産業保健に関する専門的な知識が必要であり、常に最新の状態に維持するための研修が必要となってくる。
このため、産業保健総合支援センターにおいて、産業医等の産業保健スタッフに対して、メンタルヘルス対策や過重労働による健康障害防止対策等の産業保健に関するテーマについての専門的な研修を実施しており、令和2年度は3,209回実施した。

4.3 労働衛生・人事労務関係者等に対する研修の実施
事業場における産業保健活動を推進するためには、実際に実務を担当する衛生管理者や人事労務担当者等に対する啓発が重要であることから、産業保健総合支援センターにおいて、メンタルヘルス対策や過重労働による健康障害防止対策等の産業保健の推進に関する様々な研修を令和2年度は1,743回実施した。

4.4 公務員に対する相談体制の整備等
(1)国家公務員に対する相談体制の整備等
人事院では、専門の医師等が対応し、各府省の職員、家族等が利用できる「こころの健康相談室」(全国10か所に設置)を開設している。令和2年度における相談件数は、同年4月及び5月に新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて相談室を実施しなかったこともあり、合計169件であった。なお、相談を希望する職員が相談しやすい環境の整備を図るため、オンライン相談の整備に向けた検討を進めている。また、心の健康の問題による長期病休者の職場復帰及び再発防止に関して、専門の医師が相談に応じる「こころの健康にかかる職場復帰相談室」(全国10か所に設置)を開設している。令和2年度における相談件数は、合計129件であった。なお、人事院において一般職の国家公務員からの苦情相談を令和2年度中1,727 件受け付けている。

内閣官房内閣人事局では、カウンセリングに関する有識者の講演等を通じて、各府省に配置されているカウンセラーの能力向上を図ることにより、カウンセリング制度を充実させることを目的として、カウンセラー講習会を行っている。

(2)地方公務員に対する相談体制の整備等
ア 地方公務員に対する取組
地方公務員共済組合において、電話による無料の健康相談や、臨床心理士・カウンセラーの面談による無料のメンタルヘルス相談、研修会等を実施し、職員の利用推奨を図るとともに相談体制の周知・充実を進めている。また、人事委員会や公平委員会においては、勤務条件等に関する職員からの苦情相談を実施している。

さらに、公務災害防止事業の一環として、地方公務員災害補償基金において、一般財団法人地方公務員安全衛生推進協会と連携し、メンタルヘルス対策を担当する地方公共団体等の職員向けに無料の相談窓口を設置し、メンタルヘルス対策の実施等に関する実務面の支援を行っている。
なお、総務省では、これらの事業について、各地方公共団体等に対して助言している。
(つづく)A.K

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