キャリアコンサルタントが必要とする過労死等に関する知識、資料について説明します。
● 過労死等防止対策推進シンポジウムの開催
過労死等防止対策推進法第3条では、「過労死等の防止のための対策は、(中略)過労死等を防止することの重要性について国民の自覚を促し、これに対する国民の関心と理解を深めること等により、行わなければならない。」と規定されている。同法第5条では、過労死等防止啓発月間を設け、これを11月と規定するとともに、「国及び地方公共団体は、過労死等防止啓発月間の趣旨にふさわしい事業が実施されるよう努めなければならない。」と規定されている。
また、同法第11条では、民間の団体が行う過労死等の防止に関する活動を支援するために国及び地方公共団体は、必要な施策を講ずることが規定されている。同法の成立前から民間の団体においては過労死等の防止に関する活動としてシンポジウムを主催してきたが、同法に基づき作成した大綱では、国が取り組む重点対策の中で、過労死等を防止することの重要性について関心と理解を深めるため、11 月の過労死等防止啓発月間等において、民間団体と連携して全ての都道府県で少なくとも毎年1回は、シンポジウムを支援して開催すると記載されている。このことから、国民の間に広く過労死等を防止することの重要性について自覚を促し、これに対する関心と理解を深めるため、過労死等防止啓発月間である11月を中心に、「過労死等防止対策推進全国センター」、「全国過労死を考える家族の会」及び「過労死弁護団全国連絡会議」等の過労死等の防止に関する活動を行う民間団体と連携し、都道府県や市の後援も得て、令和2年度は、全国47都道府県48か所で「過労死等防止対策推進シンポジウム」を国主催により開催した。
このシンポジウムは、有識者による講演、パネルディスカッション及び家族を過労死で亡くした遺族などの当事者の体験談を基本的な構成としたものであるが、民間団体のこれまでの取組実績や意見を踏まえ、過労死をテーマとした落語をプログラムに入れたり、開会前に過労死遺族が書いた詩に曲をつけた歌を紹介したりした会場もあり、また、講演についても、過労死問題に精通する弁護士のほか、公衆衛生学や労働経済学を専門とする大学教授、企業の関係者、産業医、精神科の医師など多様な視点からの内容のものとなり、48か所それぞれにおいて特色のあるものとなった。シンポジウムに参加した人数は、3,701人(講師等登壇者及びスタッフを除く。)であった。
● 過労死遺児交流会の開催
過労死等防止対策推進法に基づき作成した大綱では、国が取り組む重点対策の中で、民間団体の活動に対する支援として、「民間団体が過労死等防止のための研究会、イベント等を開催する場合、その内容に応じて、事前周知、後援等について支援する。」と定めている。
また、過労死等の防止のための活動を行う「全国過労死を考える家族の会」においては、全国組織の民間団体としては唯一、毎年、過労死で親を亡くした遺族(児)が集い、互いに励まし合うなどの交流会を実施している。例年、「全国過労死を考える家族の会」と連携しながら、過労死で親を亡くした遺児等を招請し、イベントを通して心身のリフレッシュを図るほか、遺児及びその保護者を対象とした相談等を行う交流会を実施しているが、令和2年度においては、新型コロナウイルス感染症防止のため一堂に会しての実施を取り止め、オンラインにより開催した。
過労死遺児交流会は、令和3年2月26日及び27日に、家族参加のグループトークや、保護者向けの心理相談や支援制度相談、法律相談などを実施した。
参加した保護者からは、「オンラインとなったため、家族の参加人数が少なくて、残念でしたが、少ないなりにしっかり皆さんの話が聞けたり話せたりしてよかった」、「久しぶりに会えてリフレッシュできました。近況を聞けて良かったですし、顔も見られてホッとしました。」、「コロナ禍ですが、オンラインで安心して参加できました。」等の肯定的な感想が寄せられた。
● シンポジウム以外の活動に対する支援等
令和2年度は全国47都道府県において国主催によるシンポジウムを開催したところであるが、国主催によるシンポジウム以外で、過労死等の防止に関する活動を行う民間団体の主催による「シンポジウム」や「つどい」などが行われた際には、都道府県労働局が後援等の支援を実施した。
以前説明した白書の過労死等の防止のために講じた施策の実施状況報告の項目 3 啓発 3.1 国民に向けた周知・啓発の実施において、令和2年度に過労死等に関するパンフレットを作成した旨を説明しているが、このパンフレットには、「労働条件や健康管理に関する相談窓口等一覧」として行政機関における各種窓口を掲載するとともに、「過労死の防止のための活動を行う民間団体の相談窓口」として、「過労死等防止対策推進全国センター」、「全国過労死を考える家族の会」及び「過労死弁護団全国連絡会議」を併せて掲載し、民間団体の活動の周知を図っている。
(つづく)A.K