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令和3年の自殺の状況 キャリコン国家試験合格 225 | テクノファ

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キャリアコンサルタントに必要な知識の説明をします。
■ 令和3年の主要な自殺の状況
〇自殺者数(年間約3万人)は前年に比べてほぼ横ばいとなった。年齢階級別では「50~59歳」、「40~49歳」、「70~79歳」の順で多くなった。職業別では「無職者」、「被雇用者・勤め人」、「自営業・家族従業者」、「学生・生徒等」と続く。無職者の内訳をみると、「年金・雇用保険等生活者」がその半数を占めていた。学生・生徒等の内訳をみると、「大学生」が最も多くなった。原因・動機別にみると、「健康問題」、「経済・生活問題」、「家庭問題」の順に多くなった。

〇年齢階級及び職業別の構成をみると、総数・男女ともに高年齢層の無職者による自殺が多かったことがわかる。構成比では、「~19歳」は「学生・生徒等」の割合が高い。男性は「20~29歳」、「30~39歳」及び「40~49歳」で「被雇用者・勤め人」の割合が半数以上を占めており、女性は30歳以上の全ての年齢階級で「無職者」が半数を超えていた。

〇年齢階級及び原因・動機別の構成をみると、総数・男女ともに全ての年齢階級で「健康問題」による自殺者数が多くなった。構成比では、男女ともに年齢階級が上がるにつれて「健康問題」の割合が高くなる傾向にある。

<令和3年の詳細な自殺の状況>
〇配偶関係別の自殺者数の構成割合をみると、「有配偶」と「未婚」が高く、次いで「離別」、「死別」が続く。男女別にみると、男性は「未婚」が最も高く、女性は「有配偶」が最も高い。
〇令和3年の自殺未遂歴の有無別の自殺の状況をみると、「未遂歴あり」は全体の2割であった。女性の「未遂歴あり」は、男性の約2倍となっていた。

< 令和3年の月別・曜日別の自殺の状況>
〇令和3年の自殺者数を月別にみると、男女ともに「3月」が最も多く、男性は次いで「4月」、「5月」となり、女性は「5月」、「6月」となった。

< 令和3年の都道府県別の自殺の状況>
〇都道府県別の自殺者数は「東京都」、「大阪府」、「神奈川県」の順に多かった。令和2年の自殺者数と比較してみると、23都道府県で増加がみられ、24府県では減少がみられた。
〇都道府県別の10万人当たり自殺死亡率では「青森県」、「山梨県」、「新潟県」の順に高くなった。
〇令和3年における東日本大震災に関連する自殺の状況について、総数は6人で、前年に比べ1人増加した。県別にみると、「岩手県」は横ばい、「宮城県」は3人増加、「福島県」は2人減少した。

<海外の自殺の状況>
〇先進国(G7)の自殺死亡率について、世界保健機関によれば、我が国は男女ともに先進国の中でも高い水準にある。
〇先進国(G7)の自殺の状況を若年層の死因順位からみると、「10~19歳」及び「20~29歳」の死因順位の第1位が「自殺」となっているのは「日本」のみであった。

■ 自殺対策基本法の概要
平成18年10月に施行、平成28年4月に改正施行された自殺対策基本法は、誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指して、自殺対策に関し基本理念を定め、国、地方公共団体、事業主、国民のそれぞれの責務を明らかにするとともに、自殺対策の基本となる事項を定めること等により、自殺対策を総合的に推進して、自殺防止と自殺者の親族等の支援の充実を図り、国民が健康で生きがいを持って暮らすことのできる社会の実現に寄与することを目的としている。

都道府県は、自殺総合対策大綱及び地域の実情を勘案して、都道府県自殺対策計画を定めるものとされている。また、市町村は、自殺総合対策大綱及び都道府県自殺対策計画並びに地域の実情を勘案して、市町村自殺対策計画を定めるものとされている。
厚生労働大臣を会長とし、関係閣僚を構成員とする自殺総合対策会議が厚生労働省に設置されており、また政府が推進すべき自殺対策の指針として、基本的かつ総合的な自殺対策の大綱を定めることとされている。

○ 自殺総合対策大綱の策定経緯
平成29年7月に閣議決定された自殺総合対策大綱は、平成19年6月に閣議決定された最初の大綱から数えて第3次の大綱であり、改正自殺対策基本法が平成28年4月に施行されたことを踏まえて策定されたものである。

大綱は、自殺対策基本法の規定に基づき、政府が推進すべき自殺対策の指針として定めることとされている。最初の大綱では、自殺は、追い込まれた末の死であるという基本的な認識を示すとともに、自殺対策を進める上では、失業、倒産、多重債務、長時間労働等の社会的要因も踏まえて総合的に取り組むという基本的考え方を示した。また自殺対策の数値目標として、「平成28年までに、平成17年の自殺死亡率を20%以上減少させる」ことを掲げた。

平成24年に大綱の見直しを行い、「誰も自殺に追い込まれることのない社会」という目指すべき社会を提示し、今後の課題として、地域レベルの実践的な取組を中心とする自殺対策への転換を指摘した。自殺総合対策の基本的な考え方として、「政策対象となる集団毎の実態を踏まえた対策を推進する」、「国、地方公共団体、関係団体、民間団体、企業及び国民の役割を明確化し、その連携・協働を推進する」の2つが追加された。

第1次及び第2次大綱では、数値目標は平成28年までに、自殺死亡率を平成17年と比べて20%以上減少させると設定された。平成17年の自殺死亡率は24.2であり、それを20%減少させると19.4となる。平成28年の自殺死亡率は16.8で、平成17年時点から30.6%の減少となっており、目標を10.6ポイント上回る減少を達成した。

平成24年8月に閣議決定された第2次大綱は、おおむね5年を目途に見直すこととされていたため、平成28年から見直しに向けた検討が着手され平成28年9月、自殺総合対策会議が開催され、平成29年夏頃を目途に、新たな大綱の案を作成すること、及び新たな大綱の案の作成に資するよう厚生労働省において大綱に基づく諸施策の進捗状況を把握し有識者から意見を幅広く聴取することが決定され、厚生労働大臣決定により「新たな自殺総合対策大綱の在り方に関する検討会」を開催することとなった。検討会における議論は、平成29年5月に検討会報告書として取りまとめられた。報告書において、関連施策の有機的な連携を図り、総合的な対策を推進することなどの自殺対策全般に関する事項とともに、「若者の自殺対策の更なる推進」、「過重労働を始めとする勤務問題による自殺対策の更なる推進」等、個別施策についても提言された。
平成29年7月、自殺総合対策会議において大綱の案が策定され第3次大綱が閣議決定された。

〇 第3次自殺総合対策大綱の概要
基本理念として、自殺対策は社会における「生きることの阻害要因」を減らし、「生きることの促進要因」を増やすことを通じて社会全体の自殺リスクを低下させる方向で推進するものとすることが新たに掲げられるとともに、基本方針として、自殺対策は「生きることの包括的な支援として推進する」、「関連施策との有機的な連携を強化して総合的に取り組む」、「対応の段階に応じてレベルごとの対策を効果的に連動させる」こと等が掲げられた。また、第3次大綱では新たに、「地域レベルの実践的な取組への支援を強化する」、「子ども・若者の自殺対策を更に推進する」、「勤務問題による自殺対策を更に推進する」等が盛り込まれた。推進体制については、「地域における計画的な自殺対策の推進」が盛り込まれた。
(つづく)A.K

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