キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを行う際に必要な知識を説明します。
■ コロナ感染症まん延下の自殺動向
社会全体のつながりが希薄化している中で、新型コロナウイルスの感染拡大により人との接触機会が減り、それが長期化することで、孤独・孤立の問題が一層深刻化している。女性や若者の自殺の増加などは、孤独・孤立の問題も要因の一つと考えられる。そのため、孤独・孤立対策を政府一体となって推進するよう、令和3年2月より孤独・孤立対策担当大臣を司令塔とし、内閣官房に孤独・孤立対策担当室が設置されたところである。
1.新型コロナウイルス感染症の感染拡大下の自殺の概況
本項では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大下の概況を把握する。まず、令和2年及び令和3年における自殺者数について、平成27年から令和元年までの感染拡大前5年の平均自殺者数との比較を年齢階級別、職業の有無別及び同居人の有無別で分析を行う。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大が始まった令和2年の自殺者数について感染拡大前5年平均と比較してみると、自殺者数の増加が大きかった3区分は、①「~19歳・無職・同居人あり」が179.4人増、②「20~29歳・有職・同居人あり」が154.8人増、③「80歳~・無職・同居人なし」が101.4人増となっている。自殺者数の増加率が大きかった3区分は、①「~19歳・無職・同居人あり」が38.4%、②「70~79歳・有職・同居人なし」が33.3%、③「~19歳・有職・同居人なし」が30.4%となっている。また、自殺者数の減少が大きかった3区分は、①「60~69歳・無職・同居人あり」が306.4人減、②「60~69歳・無職・同居人なし」が143.4人減、③「60~69歳・有職・同居人あり」が129.2人減となっている。自殺者数の減少率が大きかった3区分は、①「60~69歳・無職・同居人あり」が-21.5%、②「80歳~・有職・同居人なし」が-20.5%、③「60~69歳・有職・同居人あり」が-17.7%となっている。
令和3年の自殺者数について感染拡大前5年平均と比較してみると、自殺者数の増加が大きかった3区分は、①「~19歳・無職・同居人あり」が153.4人増、②「20~29歳・有職・同居人なし」が137.6人増、③「20~29歳・無職・同居人あり」が95.2人増となっている。自殺者数の増加率が大きかった3区分は、①「~19歳・無職・同居人あり」が32.9%、②「70~79歳・有職・同居人なし」が31.0%、③「20~29歳・有職・同居人なし」が29.5%となっている。また、自殺者数の減少が大きかった3区分は、①「60~69歳・無職・同居人あり」が405.4人減、②「30~39歳・無職・同居人あり」が193.2人減、③「60~69歳・無職・同居人なし」が186.4人減となっている。自殺者数の減少率が大きかった3区分は、①「60~69歳・無職・同居人あり」が-28.5%、②「30~39歳・無職・同居人あり」が-22.6%、③「60~69歳・有職・同居人あり」が-21.0%となっている。
年齢階級別に感染拡大前5年平均自殺者数からの増減数をみると、「20~29歳」が最も大きく増加し、「~19歳」がそれに続く。「30~39歳」から「70~79歳」までの年齢階級では減少しており、そのうち「60~69歳」が最も減少している。この傾向は令和2年及び令和3年ともにみられる。ただし、「80歳~」は、令和2年に増加したものの、令和3年には減少した。
感染拡大前5年平均自殺者数からの増減率でみると、「~19歳」が最も上昇し、「20~29歳」がそれに続く。「30~39歳」から「70~79歳」までの年齢階級では低下しており、「60~69歳」が最も低下している。この傾向は令和2年及び令和3年ともにみられる。ただし、「80歳~」は、令和2年は上昇したものの、令和3年には低下した。
男女別及び年齢階級別に、感染拡大前5年平均自殺者数からの増減数をみると、男性は、令和2年に「~19歳」、「20~29歳」及び「80歳~」が増加し、令和3年に「~19歳」及び「20~29歳」が増加した。女性では、令和2年及び令和3年ともに「~19歳」から「50~59歳」までの年齢階級で増加した。男女ともに、「~19歳」、「20~29歳」で増加しており、「60~69歳」で減少した。
感染拡大前5年平均自殺者数からの増減率でみると、男性は、令和2年に「~19歳」、「20~29歳」及び「80歳~」が上昇し、令和3年に「~19歳」及び「20~29歳」が上昇した。女性では、令和2年及び令和3年ともに「~19歳」から「50~59歳」までの年齢階級で上昇した。男女を通じて、女性の「~19歳」が最も上昇し、女性の「20~29歳」がそれに次ぐ。
2. 男性の自殺の実態及び背景
本項では、男性の自殺の実態及び背景について分析を行う。ここでは、令和2年及び令和3年における男性の自殺者数について、感染拡大前5年平均自殺者数との比較を年齢階級別、職業の有無別及び同居人の有無別で分析を行う。
令和2年の男性自殺者数について感染拡大前5年平均と比較してみると、自殺者数の増加が大きかった3区分は、①「~19歳・無職・同居人あり」が75.0人増、②「80歳~・無職・同居人なし」が68.2人増、③「20~29歳・有職・同居人あり」が59.0人増となっている。自殺者数の増加率が大きかった3区分は、①「70~79歳・有職・同居人なし」が33.7%、②「~19歳・無職・同居人あり」が24.6%、③「80歳~・無職・同居人なし」が19.1%となっている。また、自殺者数の減少が大きかった3区分は、①「60~69歳・無職・同居人あり」が221.4人減、②「50~59歳・有職・同居人あり」が179.4人減、③「60~69歳・有職・同居人あり」が135.6人減となっている。自殺者数の減少率が大きかった3区分は、①「60~69歳・無職・同居人あり」が-29.6%、②「60~69歳・有職・同居人あり」が-21.7%、③「30~39歳・無職・同居人あり」が-21.0%となっている。
令和3年の男性自殺者数について感染拡大前5年平均と比較してみると、自殺者数の増加が大きかった3区分は、①「20~29歳・有職・同居人なし」が54.2人増、②「80歳~・無職・同居人なし」が53.2人増、③「70~79歳・無職・同居人なし」が45.6人増となっている。自殺者数の増加率が大きかった3区分は、①「70~79歳・有職・同居人なし」が37.9%、②「80歳~・無職・同居人なし」が14.9%、③「20~29歳・有職・同居人なし」が14.7%となっている。
また、自殺者数の減少が大きかった3区分は、①「60~69歳・無職・同居人あり」が269.4人減、②「60~69歳・無職・同居人なし」が168.0人減、③「60~69歳・有職・同居人あり」が154.6人減となっている。自殺者数の減少率が大きかった3区分は、①「60~69歳・無職・同居人あり」が-36.0%、②「30~39歳・無職・同居人あり」が-27.4%、③「60~69歳・無職・同居人なし」が-25.1%となっている。
男性の自殺者数の推移を職業別にみると、平成27年から令和3年にかけて「被雇用者・勤め人」が最も多い。平成27年から令和元年までは、次いで「年金・雇用保険等生活者」、「その他の無職者等」、「自営業・家族従業者」の順で多かったが、令和2年からは「その他の無職者等」の数が「年金・雇用保険等生活者」を上回った。なお、ほとんどの職業で、平成27年から令和3年の男性自殺者数は減少傾向にある。
「自営業・家族従業者」及び「被雇用者・勤め人」の有職の男性について、年齢階級別と同居人の有無別に、感染拡大前5年平均自殺者数からの増減数をみると、「同居人あり」では、令和2年及び令和3年の「~19歳」及び「20~29歳」と令和2年の「80歳~」を除く全ての年齢階級で減少した。このうち、令和2年の「50〜59歳」が最も減少し、令和3年の「60〜69歳」、令和3年の「50~59歳」の順で続く。「同居人なし」では、令和2年に「40~49歳」を除く「20~29歳」から「70~79歳」までの年齢階級で増加し、令和3年に「~19歳」、「30~39歳」及び「60~69歳」を除く全ての年齢階級で増加した。
「失業者」、「学生・生徒等」、「年金・雇用保険等生活者」及び「その他の無職者等」の無職の男性について、年齢階級別と同居人の有無別に、感染拡大前5年平均自殺者数からの増減数をみると、「同居人あり」では、令和2年の「~19歳」と、令和3年の「~19歳」及び「20~29歳」を除く全ての年齢階級で減少した。「同居人なし」では、令和2年及び令和3年ともに「20~29歳」、「30~39歳」、「70~79歳」及び「80歳~」で増加し、このうち、「80歳~」が最も増加し、「70~79歳」がそれに次ぐ。
男性の自殺の原因・動機について、感染拡大前5年平均からの増減数をみると、「健康問題」が最も大きく減少し、「経済・生活問題」がそれに続く。令和2年及び令和3年ともにほとんどの原因・動機が減少している中では、令和3年の「健康問題」が最も減少した。また、「その他」は、令和2年は減少したものの、令和3年には増加した。
(つづく)A.K