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■ 女性の自殺の実態及び背景
令和3年の自殺者数は21,007人となり、対前年比74人(約0.4%)減であり、数年前の3万人のレベル (平成10年~平成23年) から大きく減った。男女別にみると、男性(13,939人)は12年連続の減少、女性(7,068人)は2年連続の増加となっている。また、男性の自殺者数は、女性の約2.0倍となっている。
令和2年の女性自殺者数について感染拡大前5年平均と比較してみると、自殺者数の増加が大きかった3区分は、①「~19歳・無職・同居人あり」が104.4人増、②「20~29歳・有職・同居人あり」が95.8人増、③「40~49歳・有職・同居人あり」が65.4人増となっている。自殺者数の増加率が大きかった3区分は、①「~19歳・有職・同居人なし」が150.0%、②「20歳~29歳・有職・同居人なし」が66.7%、③「~19歳・無職・同居人あり」が64.6%となっている。また、自殺者数の減少が大きかった3区分は、①「60~69歳・無職・同居人あり」が85.0人減、②「80歳~・無職・同居人あり」が79.4人減、③「60~69歳・無職・同居人なし」が34.4人減となっている。自殺者数の減少率が大きかった3区分は、①「80歳~・有職・同居人なし」が-37.5%、②「80歳~・有職・同居人あり」が-26.2%、③「60~69歳・無職・同居人なし」が-15.4%となっている。
令和3年の女性自殺者数について感染拡大前5年平均と比較してみると、自殺者数の増加が大きかった3区分は、①「~19歳・無職・同居人あり」が112.4人増、②「20~29歳・無職・同居人あり」が89.0人増、③「20〜29歳・有職・同居人なし」が83.4人増となっている。自殺者数の増加率が大きかった3区分は、①「~19歳・無職・同居人なし」が110.5%、②「~19歳・有職・同居人なし」が100.0%、③「20歳~29歳・有職・同居人なし」が86.3%となっている。また、自殺者数の減少が大きかった3区分は、①「60~69歳・無職・同居人あり」が136.0人減、②「80歳~・無職・同居人あり」が102.4人減、③「30〜39歳・無職・同居人あり」が60.2人減となっている。自殺者数の減少率が大きかった3区分は、①「60~69歳・無職・同居人あり」が-20.1%、②「80歳~・無職・同居人あり」が-16.8%、③「30〜39歳・無職・同居人あり」が-16.3%となっている。
女性の自殺者数の推移を職業別にみると、平成27年から令和3年にかけては「年金・雇用保険等生活者」が最も多い。次いで多い「その他の無職者等」は、平成27年から令和元年までは減少傾向だったが、令和元年から令和3年にかけて増加した。また、「被雇用者・勤め人」は、平成30年から「主婦」を上回り、令和元年から令和2年にかけて大きく増加した。
⑴ 有職の女性の自殺
「自営業・家族従業者」及び「被雇用者・勤め人」の有職の女性について、年齢階級別と同居人の有無別に、感染拡大前5年平均自殺者数からの増減数をみると、「同居人あり」では、令和2年の「80歳~」を除く全ての年齢階級が増加し、「20~29歳」が最も増加した。「同居人なし」では、令和2年及び令和3年ともに「20~29歳」が最も増加し、「30〜39歳」がそれに次ぐ。
有職の女性の自殺者数の推移を、年齢階級別と同居人の有無別にみると、「同居人あり」では、令和元年から令和2年にかけて「20~29歳」から「50~59歳」までの年齢階級で大きく増加し、令和2年から令和3年にかけても「30~39歳」及び「50~59歳」は増加した。「同居人なし」では、令和元年から令和2年にかけて「20~29歳」及び「30~39歳」が大きく増加し、令和2年から令和3年にかけても「20~29歳」は増加した。
令和2年及び令和3年における女性の「被雇用者・勤め人」のうち、感染拡大前5年平均自殺者数からの増加が大きかった8職業の自殺者数についてみると、令和2年に大きく増加した4区分は、①「事務員」が68.4人増、②「その他のサービス職」が65.0人増、③「その他」が49.2人増、④「販売店員」が41.0人増となっている。また、令和3年に大きく増加した4区分は、①「事務員」が102.4人増、②「その他のサービス職」が49.0人増、③「販売店員」が43.0人増、④「その他の労務作業者」が34.6人増となっている。
令和3年に感染拡大前5年平均自殺者数からの増加が大きかった4職業の自殺者数の推移をみると、令和元年から令和2年にかけて「事務員」、「その他のサービス職」及び「販売店員」が増加し、令和2年から令和3年にかけても「事務員」及び「販売店員」は増加した。「その他の労務作業者」は、令和元年から令和2年にかけて減少し、令和3年にかけて増加した。
自殺の原因・動機について、同居人の有無別に、感染拡大前5年平均からの増減率をみると、「同居人あり」では、令和2年及び令和3年ともにほとんどの原因・動機が上昇し、このうち、「男女問題」が最も上昇した。次いで上昇したのは、令和2年では「勤務問題」、「その他」の順となり、令和3年では「勤務問題」、「家庭問題」の順となっている。
「同居人なし」でも、令和2年及び令和3年ともにほとんどの原因・動機が上昇し、このうち、「その他」が最も上昇した。次いで上昇したのは、令和2年では「家庭問題」、「勤務問題」の順となり、令和3年では「男女問題」、「健康問題」の順となっている。
⑵ 無職の女性の自殺
「主婦」、「失業者」、「学生・生徒等」、「年金・雇用保険等生活者」及び「その他の無職者等」の無職の女性の自殺者数について、年齢階級別と同居人の有無別に、感染拡大前5年平均自殺者数からの増減数をみると、「同居人あり」では、令和2年の「~19歳」、令和3年の「~19歳」及び「20~29歳」が大きく増加したが、60歳以上は減少した。「同居人なし」では、令和2年の「20歳〜29歳」、「70~79歳」及び「80歳~」が増加し、令和3年は「60〜69歳」以外の全ての年齢階級で増加した。
無職の女性の自殺者数の推移を、年齢階級別と同居人の有無別にみると、「同居人あり」では、令和元年から令和2年にかけて全ての年齢階級で増加し、令和2年から令和3年にかけては「~19歳」及び「20~29歳」で増加したが、それ以外の年齢階級は減少した。「同居人なし」では、令和元年から令和2年にかけて「~19歳」、「30~39歳」及び「50~59歳」を除く年齢階級で増加し、令和2年から令和3年にかけては全ての年齢階級で増加した。
無職の女性のうち、一般に労働力人口として想定される15~64歳以下と、非労働力人口として想定される65歳以上について、職業別の自殺者数の推移をみた。なお、「同居人あり」の場合に増加しているのは、「学生・生徒等」に対応した「~19歳」、「20~29歳」であるため、ここでは「同居人なし」に焦点を当てる。
「同居人なし」で15~64歳以下の自殺者数をみると、平成27年から令和3年にかけては「その他の無職者」が最も多い。感染拡大前5年平均自殺者数と比較すると、令和2年及び令和3年ともに「その他の無職者」が増加し、特に令和3年は大きく増加した。
「同居人なし」で65歳以上の自殺者数をみると、平成27年から令和3年にかけては「年金・雇用保険等生活者」が最も多い。感染拡大前5年平均自殺者数と比較すると、令和2年及び令和3年ともに「その他の無職者」が最も増加した。
次に、自殺の原因・動機について、同居人の有無別に、感染拡大前5年平均からの増減率をみると、「同居人あり」では、令和2年及び令和3年ともに「学校問題」が最も上昇した。次いで上昇したのは、令和2年では「男女問題」、「その他」の順となり、令和3年では「勤務問題」、「男女問題」の順となっている。
「同居人なし」では、令和2年及び令和3年ともに「勤務問題」が最も上昇した。次いで上昇したのは、令和2年では「その他」、「学校問題」の順となり、令和3年では「学校問題」、「その他」の順となっている。
以上を踏まえて、ここでは新型コロナウイルス感染症の感染拡大下における労働市場の特徴的な変化として、無職の女性の自殺死亡率と有効求人倍率の推移をみてみる。
有効求人倍率は令和2年1月に大きく低下し、9月に底を打った後、少しずつ上昇している。無職の女性の自殺死亡率は、平成29年12月に最も低くなった後、令和2年5月以降上昇傾向にあり、10月に最も高くなった。その後は増減を繰り返しながらも減少傾向にある。
無職の女性の自殺死亡率と有効求人倍率の関係について、47都道府県について84か月分(平成27年1月~令和3年12月)の月次データからパネルデータを構築し、47都道府県などの固定効果を考慮したパネルデータ分析を行った。推定の結果、有効求人倍率が低下することが、無職の女性の自殺死亡率の上昇と統計的に関係があることが分かった。
(つづく)A.K