実践編・応用編

キャリアコンサルタントの活動領域5―地域領域 マザーズ I テクノファ

投稿日:2020年9月16日 更新日:

5 地域領域(地域職業相談室、マザーズコーナー)
キャリアコンサルタントの活動の領域4つめは、地域領域です。代表的なものは、公共職業安定所が設置されていない市町村数百か所に設置されているふるさとハローワーク(地域職業相談室)です。ふるさとハローワークは国と市町村が共同で運営しており、職業相談、職業紹介等を行っています。利用料等一切無料です。「マザーズコーナー」として活動している女性の支援についてお話しします。

【地域職業相談室、マザーズコーナー】
日本では、女性は結婚などにより30代で労働力としては減少しますが、子育てが終わってからの再就職の意欲は強いと言われています。特に、出産前に行っていた仕事が再就職のときの仕事とならない問題を抱えています。また、子育てしながらの就業継続、介護などにより中断した場合の再就職の支援なども必要とされています。
女性が、再就職する上での課題として次のようなことが上げられています。
①再就職したいが、自分に合う仕事がわ からない(自己理解)。
②女性の就職希望と企業のニーズに大きな開きがある(仕事理解)。
③再就職に当って、仕事と家庭の両立に不安がある(仕事と家庭の両立)。
④仕事をしていく上での人間関係構築に不安がある(コミュニケーション力)。
⑤面接や応募書類作成等再就職活動のノウハウがわからない)。
⑥具体的な仕事や企業の探し方、再就職に必要な情報がわからない。
⑦パソコンの基礎的スキルはあるが、ブランクがあることに不安も多い。

マザーズコーナーでは、女性の就職、再就職、起業などに対する相談、カウンセリングなど、以下のような活動を行っています。
・ 就業支援関係情報の提供
・ 再就職集中セミナーの開催
・ キャリアカウンセリング(適職診断、就業相談等)
・ ハローワーク、職業訓練など専門機関への紹介、引き継ぎ
・ チャレンジ支援(分野:就職・再就職、起業、キャリアアップ、社会・貢献)
・ 専門的相談(起業プラン作成、資金調達、適職相談、キャリアプラン作成等)

<特徴>
・多くの再就職の場合、キャリアのブランクが長いこと、離婚問題等を抱えてお   り、就職相談に行き着く前段階において、解決しなければいけない問題が多い。
・ 生活上の悩み、例えば家族問題、経済的困難、メンタルヘルス不調などを抱えているクライアントが多い。
・ 自己理解の不足(自分の適職がわからない)、就職状況への無理解(就職希望とニーズとの隔たり)、就職のためのノウハウの不足(求人票の見方、面接の受け方)などを抱えているケースが多い。
・ 従って、コーナーでは、まず、傾聴により相談者の悩みを理解し、一緒に解決方策 を考えていくスタンスが重要である。
・ 相談者が問題解決までに複数回来所するケースが多いので、キャリアコンサルタント(相談員)は複数でローテーションを組んで対応する必要がある。その場合、相談員同士の引き継ぎをきめ細かく行い相談者同士が情報を適切に共有しなければならない。
・ ハローワークではじっくり話せないような人を、コーナーにリファーしてくるようなケースもあり、就職準備段階でのキャリア形成支援が期待されている面もある。

<成功事例>
・ 初回相談申込票に自己申告をしていただくが、項目をすべてチェックし、項目をクライアントから話していただくとき傾聴することにより、「働きたい」が実は「離婚問題」を抱えていることが判明した。
・ 積極的傾聴を行うことで、就職に関する相談段階で幅広い内容の相談を受けることができ、可能な限りクライアントの希望に沿う(クライアント中心)。
・ 職業紹介の段階に入ったらハローワークなどにリフ ァーする。
メンタルヘルス不調者の支援も専門医(心療内科医等)にリファーする。
・ 日常から情報収集目的で、とにかく本を読むこと、人から話を聴くこと(受容・共感)等が重要である。いざというときに役に立つよう、整理しておくことを意識していることが重要。
・ 相手の自己肯定感を高めるためのサポートが何よりも大切である。自信がなければ能力があってもダメだし、自分を肯定できれば、強みを伸ばすこともできる。
・ 情報提供と同時に、一緒に悩み、考えること。早すぎる段階でハローワークや高齢者対象の相談窓口に行かせると、落胆し自信がなくなる場合もあるので、その後は必ずメンタルヘルスのフォローアップを行う。
・ 特別なニーズを持つ人々との協働、情報収集と情報提供、ストレスマネジメントとメンタルヘルス支援が必要である。
クライアントの状況や心の状態など、徹底してヒアリングすることが重要だと感じている。

<失敗事例>
・ 母子家庭の母から「貯金があと 30 万円になってしまったので、緊急に就職させてほしい」という依頼をうけた。段階を踏んでキャリアコンサルティングをすべきと思ったが、「今すぐに就職させてくれ」との勢いに、適性とは関係ないところに就職あっせんしてしまった。
・ DV 被害者であり、母親でもあるクライアントを支援した。家に PC もなく、自由に家を出られない事情から、情報収集が難しい状況にあった。ネット上にある情報を集め、希望する業務内容・勤務体系・給与等の相場を知る上で参考になると思い コピーを郵送した。それを同居人に見られてしまった。
・ 応募に作文が必要なところへの就業を目指しているクライアントから、次の応募、次の応募と作文の添削を何回も望まれるので、つい要点の説明だけで突き放してしまった。

<コメント>
・ 無業女性の行動範囲はかなり狭い。当人ではなく、その親族へのアプローチ等も必要と考える。
・ 「リファー」も重要だが、安易なリファーはできない。例えば、DV 被害者の場合、情報管理が重要である。特に、肉体的な暴力、言葉の暴力、経済・社会的な暴力を受けてきた人に対しては、じっくりとむきあっていく忍耐強さが必要。結論を焦るのではなく、じっくりと自己尊重感を醸成していくことがより重要である。
・ 担当したクライアントに対するその後の状況確認を行っている。具体的には、心の支えになったことや言葉などに反応があり、こちらの思っている以上に影響を与えていることを感じる。
・ 人は、思った以上に環境が大切であり、親に恵まれなくても、周りの見守るサポートがあるだけで変わってくる。単に就業を目指す、ということではなく、『広義のキャリア=人生そのもの』に関わっていくことをテーマにしている。

(つづく) 平林良人

-実践編・応用編

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