基礎編・理論編

人生を意味ある全体のなかに | キャリコン養成講座230 テクノファ

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横山哲夫先生が翻訳したキャリアコンサルタントが知っていると良いと思われる「キャリア開発と統合的ライフ・プラニング」を紹介します。本記事はサニー・S・ハンセンの著作「Integrative Life Planning」を横山先生と他の先生方が翻訳されたものです。

■ 人生を意味ある全体のなかに織り込む
統合的ライフ・プランニングの2番目の重要課題は、人生の全体的発達を促進するということである。本章の目的は、キャリアとカウンセリングの専門家に、クライエント、被雇用者、学生をこのプロセスのなかで支援するための知識基盤を提供することである。ここでは、ILPが具体化している全体性のいくつかの分野について検討していく。そのなかには、労働・愛・学習・余暇という人生の役割、キャリアの社会化と女性および男性の発達に影響を与えるいくつかの要因、そしてキャリアの専門家が男性と女性の全体的発達を理解しようとするとき、実際に使える枠組みとしての自己充足と結びつきの概念などが含まれる。
本章で縫い合わされているILP(Integrative Life Planning)キルトの各片は、1人ひとりの全人格と、各人が自己の多元的なアイデンティティ、潜在能力、人生のさまざまな次元に正面から取り組むときの方法と関係がある。キャリアの専門家は、男性と女性の両方が、伝統的なステレオタイプとジェンダー役割の社会化を乗り越え、平等な関係を築き、人間としてより完全な発達へ進むことを支援することができる。

■全体的な発達
全体的発達は人によっては現実的な目標とは思えないかもしれない。社会のなんと多くの部分が、仕事以外の人生の諸側面を無視して人々を職務に当てはめようとすることに重点を置き、ステレオタイプ化された男性的および女性的な行動様式に縛りつけようとしていることか。全体的ライフ・プランニング―キャリアと共に、からだとこころとスピリットの発達を包含する―が実現可能であると主張するのは、甘い考えのように見えるかもしれない。確かに全体的(Holistic)という言葉は、伝統的なアカデミズムの世界では、これまでずっと受け入れられる言葉ではなかった。

それにもかかわらず、全体的な発達という概念は、統合的ライフ・プランニングの中核をなす概念である。ILPは、どのようにすればカウンセラーや教育者が、本来全体的であるライフ・プランニングのプロセスを、若者や成人が学ぶのを支援することができるかを明確にしようとする。ILPは、カウンセラーが、全体的発達におけるこれら主要領域への認識度を高め、それによって、クライエントや学生がつながりに目を向け、どのようなときに、人生のある領域が無視されバランスが失われているか、あるいはどのようなときに修復する必要があるのかを理解するのを支援できるようにする。

長い間、仕事がほとんどの人々の人生の焦点であったが、統合的ライフ・プランニングは、文脈の変化、キャリア・ディベロプメント、人生の転換(期)、ジェンダー役割の社会化、文化的多様性、そして社会変化を、統合された枠組みのなかに組み込む。それはまた、スピリチュアリティ、言い換えれば人生の意味と目的の感覚が、どのようにそれ以外のものと調和するかについて問う。

ILPは、主としてキャリア・カウンセラーやその他のキャリアの専門家が、クライエントが人生上の意思決定を支援する手助けとして創られているが、その他のヘルパーが自分自身の人生のさまざまな側面を検証し、それを意味ある全体のなかに統合するために使うことができるモデルでもある。他者のキャリア上の意思決定を支援する者は、自分自身のキャリア・ディベロプメントについて、十分に振り返っておく必要があるというのが、私の基本的な前提認識の1つである。すべての人々が自分自身のあらゆる潜在能力を十分に発達させ、人生の多くの分野で満足を感じる権利を持つべきであるが、Maslow(1962)の欲求投階説が示しているように、生理的欲求段階にある人々は、より高い次元の欲求を満たす前に、おそらくある程度の経済的自立を獲得しておかなければならないであろう。しかし、ILPが中流以上の人々にしか適用できない理論であると考えるのは、実に不幸なことである。私の学生の1人は、ILPを低所得家庭出身の女子学生に適用し、大きな成功を収めた。彼女らはそれぞれのサークル・オブ・ライフ(人生の環)を措いて(第9章を参照)自らの経験を描写し、全体的なライフ・プランニングを理解したこと、そしてそれが必要であることをはっきりと表明した。
(つづく)平林

-基礎編・理論編

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