厚労省の白書からキャリアコンサルタントに有用な情報をお伝えします。
●社会保障を支える人材
現役世代の急減による担い手不足の加速化と医療・福祉の就業者数の見通しから、労働力人口や就業者数は女性や高齢者の就業率上昇により、1990年代後半の水準を維持している。我が国の人口は、2008(平成20)年をピークに減少に転じた。人口減少が続く中にあっても2021(令和3)年の就業者数は6,713万人と、1990年代後半の水準を維持している。年齢階級別・男女別の就業率の推移をみると、特に女性や60歳以上の方の就業率が上昇しており、女性の活躍推進や高齢者の就労促進等に関する各種施策の 推進が、労働力人口や就業者数の底上げに寄与していると考えられる。
医療・福祉分野の就業者数は、約20年間で410万人増加し、約8人に1人が医療・福祉分野で就業している。社会保障の担い手である医療・福祉分野の就業者は、保健、医療、社会福祉など国民生活の基礎をなす極めて広い分野にまたがっている。専門的知識・技術を有し公的資格を取得して医療機関や社会福祉施設等でサービス提供を行っている方や、保健所、福祉事務所等の行政機関に保健や福祉の担当者として勤務している方など幅広い層に支えられている。これら医療・福祉分野の就業者数(事務職を含む。)は、2021(令和3)年現在で891万人となっている。総務省統計局「労働力調査」を基に産業大分類で把握できるようになった2002(平成14)年以降についてみると、就業者数は右肩上がりで増加し、 2021年は2002年の約1.9倍となっている。全産業に占める医療・福祉の就業者の割合についても、2002年段階では7.5%(約13人に1人)だったものが、2021年には13.3% にまで増え、就業者の約8人に1人が医療・福祉分野で働いている。
20~64歳の人口は今後20年間で約1,400万人減少する見込みである。我が国の人口は今後も減少が続くと見込まれる中、現役世代の急減が懸念される。国立 社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」(出生中位・死亡中位) によれば、1971(昭和46)年から1974(昭和49)年生まれの団塊ジュニア世代が65歳超となる2040(令和22)年には、20~64歳人口が5,543万人(50%)となり人口全体のちょうど半分を占めるまでに減少すると推計されている(図表1-1-4)。2020(令和2)年と比較すると、2040年の20~64歳人口は約1,400万人減少すると見込まれている。
なお、2021(令和3)年4月1日から、定年年齢を65歳以上70歳未満に定めている事業主又は継続雇用制度(70歳以上まで引き続き雇用する制度を除く。)を導入している事業主は、70歳まで定年年齢を引き上げるなど、70歳までの就業機会の確保に努めることとされた。今後、働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者が活躍できる環境を整備していくことが重要とされている。2040年における20~69歳の人口をみると、6,450万人(58%)となることが見込まれる(図表1-1-5)。
経済成長と労働参加が進むと仮定するケースでも2040(令和22)年には医療・福祉分野の就業者数が96万人不足する見込みである。厚生労働省職業安定局「雇用政策研究会報告書」(2019(令和元)年7月)によれば、今後の就業者数については、経済成長と労働参加が進むと仮定するケースでは、2040(令和22)年に6,024万人となると推計されている。2021年現在の6,713万人から減少するものの、2040年は大幅な人口減少下にあることに鑑みればその減少は相当程度抑えられているといえる。この経済成長と労働参加が進むと仮定するケースでは、医療・福祉分野の就業者数は974万人(総就業者数の16%)と推計されている。他方、医療・介護サービスの2018(平成30)年の年齢別利用実績を基に、人口構造の変化を加味して求めた2040年の医療・介護サービスの需要から推計した医療・福祉分野の就業者数は1,070万人(総就業者数の18~20%)が必要となると推計されており、96万人の差が生じている。
急速な少子高齢化の中でも、女性や高齢者の就業率の上昇により、就業者数は人口減少が始まった2008(平成20)年以前の水準を維持している。今後、現役世代の人口が急減する中で、活力ある経済の維持を考えると女性、高齢者等をはじめとした一層の労働参加が不可欠であるといえる。また、社会保障の担い手である医療・福祉分野の就業者数は急速に増加しており、引き続き2040(令和22)年に向けて、更に担い手が必要となることが見込まれている。
(つづく)K.I