厚労省の白書からキャリアコンサルタントに有用な情報をお伝えします。
○ 障害保健福祉分野の職員
<福祉・介護職員数は、障害福祉サービス利用者の増加に伴い、障害者自立支援法施行当時から約1.9倍に増加>
2006(平成18)年度の障害者自立支援法施行当時に約59.3万人であった障害福祉サー ビス等の利用者数は、2013(平成25)年4月(一部は2014(平成26)年4月)の障害者総合支援法の施行を経て、2019(令和元)年度には約194万人と13年間で3倍以上に増加している。これに伴い、障害福祉サービス施設・事業所において利用者の福祉・介護業務に従事する職員数(以下「福祉・介護職員数」という。)は2019年度現在で、常勤、非常勤を含めて約110.6万人となっており、2006年の約59.3万人から約1.9倍に増加している施設・事業所別に見ると、訪問系は約52.4万人、通所系等は約49.3万人、入所系は約 8.9万人となっている。
精神保健福祉士の約7割及び公認心理師の約5割が障害保健福祉関係の施設・事業所等で就労している。
精神保健福祉士の登録者数は1998(平成10)年の制度開始以降増加しており、2022(令和4)年3月末現在で97,339人となっている。就労状況調査によると、有効回答者数35,577人の75.2%(26,744人)が福祉・介護・医療の分野で仕事をしており、そのうちの27.8%(7,434人)が障害者支援施設等の障害者福祉関係、26.5%(7,089人)が精神科病院等の医療関係、17.2%(4,608人)が地域包括支援センター等の高齢者福祉関係で就労している。 公認心理師の登録者数は2017(平成29)年の制度開始以降増加しており、2022年3月末日現在で、54,248人となっている。令和2年度障害者総合福祉推進事業「公認心理師の活動状況等に関する調査」(2021(令和3)年3月、一般社団法人日本公認心理師協会)によると、有効回答者数13,000人のうち、30.2%が精神科病院等の保健医療関係、28.9%がスクールカウンセラー等の教育関係、21.3%が児童相談所、障害者支援施設等の福祉関係で就労している。(障害福祉サービス等従事者を含む関係職種の有効求人倍率は全職業計を上回る)障害福祉サービス等従事者を含む関係職種の有効求人倍率は2006(平成18)年の1.25倍から2021(令和3)年には3.31倍と依然として高い水準にあり、これは、全職業計の有効求人倍率1.03倍(2021年)を上回る数値となっている。
障害保健福祉分野の職員全般の処遇改善及び経験・技能のある職員に重点化した更なる処遇改善を実施する。
障害福祉分野の福祉・介護職員の賃金の状況について産業計と比較すると、平均勤続年 数が短く、賞与込み給与も低くなっている。 障害福祉分野の福祉・介護職員の処遇改善は2009(平成21)年以降累次にわたる職員全般の処遇改善を図る取組みに加え、2019(令和元)年10月からは、「新しい経済政策パッケージ」(2017(平成29)年12月8日閣議決定)に基づき、経験・技能のある介護職員に重点化した更なる処遇改善を実施している。2009年度以降の処遇改善実績は月額81,000円(うち経験・技能を有する障害福祉人材は月額86,000円)となっている。
一般就労に移行する障害者は毎年増加しており、職場定着支援が重要になっている。
2021(令和3)年現在、障害のある方の数は約965万人となっている。そのうち、就労支援施策の対象となる18~64歳の在宅者数は約377万人となっている。2021(令和3)年3月現在、障害者総合支援法における就労移行支援を行う事業所数は3,030、就労継続支援(A型)を行う事業所数は3,956、就労継続支援(B型)を行う事業所数は13,972となっている。就労系障害福祉サービスから一般就労への移行者数は、2020 年度では約1.9万人の障害者が一般企業へ就職している。また、就労系障害福祉サービス利用終了者に占める一般就労への移行者の割合(移行率)については、就労移行支援では5割程度、就労継続支援(A型)では2割程度、就労継続支援(B型)では1割程度で、それぞれ推移している。また、企業等で雇用される障害者数は2021年6月1日現在で約59.8万人となっている。障害者は職場定着に課題があり、特に、就職件数が大幅に増加している精神障害者は定 着に困難を抱えているため、職場適応援助者(ジョブコーチ)による就職後の職場定着支援が重要となっている。ジョブコーチは、障害特性に配慮した雇用管理に関する事業主支援や、職務の遂行方法や生活リズムの管理に関する障害者支援など、障害者の職場適応を図るため、双方に対して幅広い支援を行っている。ジョブコーチの養成実績の累計は 2005(平成17)年度以降、訪問型で7,730人、企業在籍型で4,744人となっている。また、ジョブコーチによる支援の質の維持・向上のため、養成研修修了者サポート研修及び支援スキル向上研修を実施している。
○保育人材、放課後児童クラブ職員
待機児童を解消する各種取組みの結果、保育所等定員数及び保育士数は約1.3倍に増加している。
保育所等で働く保育士の数(常勤換算)は2020(令和2)年10月1日時点で約52万 人と推計されている。2013(平成25)年度から始まった「待機児童解消加速化プラン」では2017(平成29)年度末までに政府目標を上回る約53.5万人分の保育の受け皿を確保し、2018(平成30)年度からは「子育て安心プラン」により2020年度末までの3年間で約26.1万人分を確保している。2012(平成24)年と比較して保育所等の数は約1.6 倍に、保育所等定員数は約1.3倍、利用児童数は約1.3倍に増加した。こうした保育の受け皿の拡大に伴い、保育士数も2013年10月1日時点の約38万人から増加し続けている。
2021(令和3)年4月の待機児童数は調査開始以来最少となったものの、都市部に待機 児童の6割が集中している。
保育の受け皿拡大に取り組んできた結果、2021年4月1日時点の待機児童数は、5,634 人となり、前年から6,805人減少し、待機児童数調査開始以来最少の調査結果となった。 全国の市区町村(1,741)のうち約82%の市区町村(1,429)の待機児童数は0人であり、 待機児童数全体の6割は都市部に多く見られる状況にある。
保育士の有効求人倍率は全職業計を上回り、都市部以外でも人材確保の必要性が高くなっている。
保育士の有効求人倍率は、2012(平成24)年の1.05倍から2021(令和3)年には 2.50倍と依然として全職業計を上回る高い水準で推移している。都道府 県別の保育士の2022年1月の有効求人倍率を見ると、前年同月よりも上昇しているのは28道府県、保育士の全国平均(2.92倍)を上回っているのは18都府県となっている。
保育士の離職率は約8%と必ずしも高くはないが、30歳代半ば以降では平均勤続年数の伸びが減少している。
保育所で勤務する常勤の保育士の2020(令和2)年の離職率は8.4%であり、勤務者が40万人を超える中では必ずしも高くはなく、私立の保育所で勤務している常勤保育士の平均勤続年数は2016(平成28)年度時点の8.8年から、2018(平成30)年度時点では11.2年まで伸びている。保育士の平均勤続年数は、医療・福祉分野の他の職種間及び産業計と比較すると30歳まではおおむね変わらないが、35歳以上の平均勤続年数は産業計を下回っており、35歳以上の年齢層における職場定着率が低いことがうかがえる 。保育士の離職理由や再就職の条件には処遇や労働時間等の労働環境が主として挙げられるが、潜在保育士の就業を希望しない理由には責任の重さ・事故への不安やブランクがあることへの不安が挙げられている。保育士の退職理由としては、「職場の人間関係」のほか、「給料が安い」、「仕事量が多い」、「労働時間が長い」という理由が挙げられている。退職して転職した者に関する調査では、過半数が保育分野に転職し、おおむね3割が他産業分野に、1.5割が他の福祉分野に転職しているとされる。退職した保育士が再度保育分野で就業する場合の条件としては、「通勤時間」、「勤務日数」、「勤務時間」が多くの回答を占めており、柔軟な働き方を希望していることがうかがえる。また、保育士資格を有しながら保育所等で働いていない潜在保育士が数多く存在している。潜在保育士が保育士として就業を希望しない理由は、処遇や労働時間等が希望と合わないという理由のほか、「責任の重さ・事故への不安」や「ブランクがあることへの不安」が挙げられている。
保育人材の全職種の処遇改善及び経験・技能のある職員に重点化した更なる処遇改善を実施している。
2021(令和3)年の保育士(女性)の賃金は30.8万円と対人サービス産業平均の26.7 万円は上回っているものの、全職種の平均を下回っている。保育人材の処遇改善については、2013(平成25)年以降、全職種の処遇改善を図る取組みを実施している。特に民間の保育士等については、2019(令和元)年度から、「新しい経済政策パッケージ」(2017(平成29)年12月8日閣議決定)に基づく1%の処遇改善を講じており、これらの取組みにより、民間の保育士等について見ると、2013年度から2021(令和3)年度までの9年間で合計約14%(月額約4万4千円)の改善を実現した。また、2017年度からは、技能・経験に応じたキャリアアップの仕組みを構築し、リーダー的役割を果たしている中堅職員に対して月額最大4万円の処遇改善を実施している。
ここで、地域で保育人材の確保に取り組んでいる事例を紹介する。
○実践の事例
人口減下における各地域の保育提供体制の維持に向けた取組み(岩手県花巻市)
保育人材の確保に向けた課題
2021(令和3)年度から2024(令和6年)度までの「新子育て安心プラン」に基づき約14万人分の保育の受け皿を整備することとなっている中、4年間で新たに約2.5万人の保育人材の確保が必要となっている。保育所等に従事する保育士の数は、ここ数年は平均で毎年約2万人ずつ増加している一 方、職場定着率が必ずしも高くないことや、都市部のみならず、全国的に保育士の有効求人倍率が全職業の平均を上回っているなど、各保育現場において保育人材の確保は引き続き課題となっている。
保育人材の確保に当たっての取組
保育人材の確保に当たっては、①新規資格取得者支援、②就業継続支援、③離職者の再就職支援という、3つの局面に応じたそれぞれの保育人材への支援等が重要である。 例えば、岩手県花巻市では、①新規資格取得者支援として、新卒の保育士が市内の保育所等に就職した場合の資金貸付(1年間勤務で返還免除)、②就業継続支援として、市内の保育所等に勤務する保育士の家賃補助、③離職者の再就職支援として、保育所等を離職した後一定期間が経過している保育士で、市内の保育所等に再就職する保育士への資金貸付(1年間勤務で返還免除)等の取組みを行っている。
また、これらに加え、花巻市の奨学金を返還している保育士について、返還額の一部を補助するなど、地域ならではの支援の仕組みも構築している。
地元出身の保育人材の確保策
特に、人口減少地域においては、地元出身者が地元の保育士養成校等を卒業したとして も、都市部に就職先を求めるケースなどがみられることが指摘されている。 こうした中で、花巻市では、岩手県内の保育士養成校の学生に希望を取り、花巻市内の保育所等の見学バスツアーを実施(一部では保育体験を実施)し、養成校の学生に花巻市内の保育所を知ってもらう取組みを行っている。
花巻市ではこうした取組みにより令和3年度で44人(新卒14人、再就職30人)の保 育士が新規採用されている。地域での保育人材の確保に当たっては、こうした保育人材のマッチング支援などの取組 みにより、地元の保育人材が地元に定着するよう働きかけることなどが考えられる。
(参考文献)「令和2年度子ども・子育て支援推進調査研究事業「人口減少地域等における保育に関するニーズや 事業継続に向けた取組事例に関する調査研究」」(2021 年、有限責任監査法人トーマツ)
子ども・子育て支援新制度により放課後児童クラブの職員数は約1.5倍に増加しているものの、非常勤が約6割を占めている。
放課後児童クラブの職員数は、2021(令和3)年5月現在で、常勤、非常勤含めて 17万5,583人と2015(平成27)年度と比較して約1.5倍に増加している。このうち放課後児童支援員数は99,162人、補助員数は74,113人、育成支援の周辺業務を行う職員数は2,308人となっている。職員全体の約65%(約11.3万人)が非常勤職員である。
20年の間に放課後児童クラブ数は約2.4倍となった一方で、登録児童数は約3.4倍と過去最高を記録し、首都圏を中心に同クラブへの待機児童が存在している。
放課後児童クラブは、2015(平成27)年度の子ども・子育て支援新制度により対象児童の範囲が拡大し、従前の小学校3年生までから小学校6年生までが利用可能となった。登録児童数は2021(令和3)年5月時点で134万8,275人と過去最高を記録し、2000(平成12)年と比較して約3.4倍となっている。また2014(平成26)年7月の「放課後子ども総合プラン」に基づき2019(令和元)年度末までに約30万人分を整備し、2018(平成30)年9月の「新・放課後子ども総合プラン」に基づき2021年度末までに約25万人分を整備している。2000年と比較すると放課後児童クラブ数は2021年5月時点で全国26,925か所と約2.4倍となっている。同クラブへの待機児童数は13,416人となっており対前年比で減少しているが、東京都、埼玉県及び千葉県で待機児童全体の約4割を占めている。
放課後児童クラブ職員の処遇は、特に放課後児童支援員を対象として改善取組みを実施している。
放課後児童クラブの職員の賃金については、2016(平成28)年3月時点で、月給制の 方で手当・一時金込みで年270.3万円、時給制の方で手当・一時金込みで 年76.2万円となっている。放課後児童支援員の処遇改善については、勤続年数や研修実績等に応じた賃金改善に要する費用を補助する放課後児童支援員キャリアアップ処遇改善事業を2017(平成29)年度から実施しており、月額約1~3万円の処遇改善となっている。放課後児童クラブについては、2015(平成27)年の子ども・子育て支援新制度により放課後児童支援員の認定資格が設けられ、40人程度の児童に対し2名以上の指導員(うち1名は放課後児童支援員)を置くこととされたが、地域の実情等を踏まえた柔軟な対応が可能となるよう「平成30年の地方からの提案等に関する対応方針」(2018(平成30)年12月25日閣議決定)を踏まえ、第9次地方分権一括法により、放課後児童支援員の配置等に関する基準については、それまでの従うべき基準から参酌すべき基準に見直しが図られ、2020(令和2)年4月から施行された。
(つづく)K.I