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サイコロジカル・ファーストエイド|キャリコン国家試験合格238テクノファ

投稿日:2023年3月1日 更新日:

キャリアコンサルタントに必要な情報をお伝えします。
■サイコロジカル・ファーストエイド
〇サイコロジカル・ファーストエイド(PFA psychological first aid)は災害や大規模犯罪後に支援者が被害者等に心理社会的支援を提供するためのガイドラインです。PFAのガイドラインはいくつかの団体から公表されていますが世界保健機関(World Health Organization:WHO)が発行した、「心理的応急処置(サイコロジカル・ファーストエイド:PFA)WHO版」は災害・紛争・犯罪などに巻き込まれた人々を心理的に保護し、これ以上の心理的被害を防ぎ、様々な支援のためのコミュニケーションを促進することを目的としており、特に現状を踏まえた連携を取ることが重視されています。「心理的応急処置(サイコロジカル・ファーストエイド:PFA)WHO版」のガイドラインを使う人として、医療関係者だけではなく、防災、教育、治安、行政、産業などに従事する人や、NGO・NPOやボランティア関係者が想定されています。

〇WHO版心理的応急処置(サイコロジカル・ファーストエイド:PFA)フィールド・ガイドに書かれている内容の概略を目次に沿って紹介します。
第1章 PFAを理解する
この章ではPFAについて次のことを述べています。
・危機的な出来事は人々にどう影響するか
・PFAとはなにか
・PFAは誰にいつどこで行うか
上記について概要を説明します。
戦争、事故、災害等により人々は精神的、身体的な影響を受けますがその度合いは事態の深刻さ、支援状況、その人がおかれた現在・過去の環境などにより異なります。危機的出来事の直後に、苦痛、助けを必要としている人々に対し、身体面、精神面のニーズを確認したうえで実際に役に立ち必要としている手助けをし、それ以上の危害を受けないように守る人道的な支援行動をPFAと呼びます。注意すべきことはPFAは専門家だけが行うものではなく、カウンセリングとは異なる活動であるということです。対象となる時期としては被災直後の人々に対しての支援ですが状況によってはそれより後になる場合もあります。

第2章 責任ある支援
この章では支援する上での大前提が書かれています。
責任をもって支援するためには、次の4点が大切です。
・安全、尊厳、権利を尊重する
つらい出来事に打ちひしがれている人びとに責任をもって支援を行うには、相手の安全、尊厳、権利を尊重することが大切です。
相手をさらに傷つけることなく活動できるようになるには、倫理的にすべきこととしてはならないことを確認しておくことが大事です。
・相手の文化を考慮して、それに合わせて行動する。
支援する側の人、支援を受ける側の人が互いに異なる文化的背景や価値観をもっているかもしれないので、先入観にとらわれることなく、支援を受ける人がもっとも安心できる方法で支援する。
・その他の緊急対応策を把握する
大規模な危機的事態の時などにはさまざまな緊急対応策が取られます、そのサービス内容、実施場所などの情報を正確に把握し、共有、伝達できることが重要です。
・自分自身のケアを行う
危機的状況を支援する人はその状況下での経験に影響を受ける可能性があります。また支援者本人あるいは家族が被災者で心身に影響を受けている場合もあります。自分自身の健康に注意し、最善の支援を行うことができるようにしておくことが重要です。

第3章 PFAを行う
この章ではPFAを行う上での注意点を述べています。概要を次に書きます。
・良好なコミュニケーション
コミュニケーションは非常に重要です。相手の気持ちに寄り添って、言葉遣い、態度に気を付け、相手が今まで生きてきたなかで経験した様々な事柄の背景まで考慮して行動することが必要です。
・支援のための準備―状況の把握
現地は緊急事態で混乱していると思われます、現地に入る前に必要な情報を収集し十分に状況を把握しておくことが必要です。
・PFAの活動原則―見る、聞く、つなぐ
災害状況、支援を必要とする人の状況を情報取集して支援につなげるためのPFAの三つの基本的な活動の原則は、「見る」「聞く」「つなぐ」を活用して支援することです。
・支援の終了
終了する時期、終了のし方は被災後の環境、被災者の状況、支援者の役割などを判断して決めます。支援してきた相手には支援者の業務終了を伝え、引き継ぎ者がいる場合には、被災者がサービスを受け続けられるように詳細に引き継ぐことが必要です。
・特別な注意を必要とする可能性が高い人
危機の際に特に注意を払う必要があるのは子ども、健康上の問題や障害を持った人、差別や暴力を受ける恐れがある人です。特に子供に対しては多方面からの支援が必要です。
忘れてはならないのが、この文に書き連ねてきた人に限らずどんな人でも困難に対処する力を持っていることを意識しながら手助けすることです。

第4章 自分自身と同僚のケアについて
・支援活動を始める前に
事前に多大なストレスとなりかねない危機的な状況を把握し、それに自分自身や家族が絶えられるか、支援活動に参加できる状況かどうかを判断すること。危機的な状況下における支援者の多様な役割と責任を把握すること。
・ストレスへの対処―健康的な仕事と生活習慣
支援中の日常活動はストレスを生じさせると思われるが、自分自身が感じるストレスへの対処を学び、無理のない可能な範囲での支援を行うことが重要です。全ての人に対して完璧な支援を行う責任はありません。仲間とのコミュニケーションを取ること。
・休息とふりかえり
支援が終了したらそれまでの体験を振り返り、休息をとり、自身の回復を図ること。
支援中の出来事について、心的、精神的な問題が1か月以上続く場合は、精神保健専門家等への相談が必用です。
・サイコロジカル・ファーストエイド ポケットガイド
サイコロジカル・ファーストエイドの要約版として下記の項目につき、ここまで書いてきた内容のポイントをまとめたものです。
・PFAとは
・PFAの行動原則
・倫理
・PFAだけでなく専門的な支援を必要とする人
・緊急に専門的な支援を必要とする人

<引用先> World Health Organization, War Trauma Foundation and World Vision International(2011). Psychological first aid: Guide for field workers. WHO: Geneva.(訳:(独)国立精神・神経医療研究センター、ケア・宮城、公益財団法人プラン・ジャパン(2012). 心理的応急処置(サイコロジカル・ファーストエイド:PFA)フィールド・ガイド.

〇「心理的応急処置(サイコロジカル・ファーストエイド:PFA)WHO版」に対して米国版のサイコロジカル・ファーストエイド(PFA)、「サイコロジカル・ファーストエイド実施の手引き」(作成:アメリカ国立子どもトラウマティックストレス・ネットワーク、アメリカ国立PTSDセンター、日本語訳:兵庫県こころのケアセンター)は、WHO版と同様に災害や大規模犯罪後の被害者等への支援のためのガイドラインですが、米国版は心的外傷的な出来事の後の心理的な反応やそれに対して支援者が留意すべき事項に関する解説に割かれているボリュームがWHO版よりも多く、やや精神保健専門家向けの内容になっています。

〇米国版の「サイコロジカル・ファーストエイド実施の手引き 第2版」に書かれていることを目次に沿って概要を説明します。
サイコロジカル・ファーストエイド(Psychological First Aid;PFA)について、この手引きを引用してポイントをまとめると次のように書かれています。
災害やテロなどに曹禺した直後にトラウマに苦しむ子ども、思春期の人、大人、家族などの被災者に対して、災害直後の苦痛と困難を乗り越えるために支援者が心理的、社会的支援を提供するためのガイドラインとして考案されたもので、状況に応じて必要な部分だけを使うことができるような構成に作成されたもので、災害救援活動をする人に向けたものです。
サイコロジカル・ファーストエイドの基本目的には
・被災者と信頼関係を築いて適切な支援を行うこと。被災者を家族、友人、近隣、地域支援など、その人の地域における生活を支えるための助けになる人との結びつきに復帰させることなどが書かれています。
・サイコロジカル・ファーストエイドの支援活動時の注意点として、支援者は決められた範囲、できる範囲で支援すること。文化と多様性について理解し配慮したうえで支援活動すること。自身のセルフケアを行うことなどが書かれています。
次にサイコロジカル・ファーストエイドに沿った支援活動は
・現実的な支援(食糧、水、毛布)を優先する。
・話し方、傾聴についての注意をはらう。
・被災者に対して避けるべき態度として、思い込みでの対応、被災後の反応を病気の範疇でみることなどがあげられています。
子ども、思春期の人、高齢者、障害をもつ人への対応、支援について、具体的な支援内容が書かれています。
サイコロジカル・ファーストエイドを提供する準備
サイコロジカル・ファーストエイドに沿った支援を始めるに当たって必要なことが書かれています。
・準備
災害時の心理的精神的な支援に関する最新の知識が必要です。セルフケアを行う備えが必用です。
・現場に入る
役割、意思決定の体制が明確な組織体制の枠組みの中で活動し、スタッフや組織とのコミュニケーションを確立し調整をはかることが大事です、また情報収集が重要です。
・PFAを提供する
支援を必要としている精神的苦痛の兆候がある人を探す。
・集団への適応
PFAの対象は基本的には個人と家族ですが、グループにも、提供できます。困っていることに関する話しあいは有益ですが、不平不満のはけ口にならないようにしてください。
・落ち着いた態度を保つ
穏やかな態度とはっきりした考えを示すことにより被災者から信頼を得る。
・文化と多様性に対して繊細にふるまう
被災者の属する社会の習慣や伝統、家族のあり方、役割などを知り、社会とのつながりを維持したり、再構築したりするのを助ける。
リスクの高い人々に配慮する。特に子どもに配慮する。
・サイコロジカル・ファーストエイドの8つの活動内容

サイコロジカル・ファーストエイドに書かれている具体的な支援活動は次のようになります。
1.被災者に近づき、活動を始める
当面の安全を確かなものにし、被災者が心身を休められるようにする。
被災者の求めに応じる。あるいは、被災者に負担をかけない共感的な態度でこちらから手をさしのべる。
2.安全と安心感
当面の安全を確かなものにし、被災者が心身を休められるようにする。
3.安定化
圧倒されている被災者の混乱を鎮め、見通しがもてるようにする。
4.情報を集める――いま必要なこと、困っていること
周辺情報を集め、被災者がいま必要としていること、困っていることを把握する。そのうえで、その人にあったPFAを組み立てる。
5.現実的な問題の解決を助ける
いま必要としていること、困っていることに取り組むために、被災者を現実的に支援する。
6.周囲の人々との関わりを促進する
家族・友人など身近にいて支えてくれる人や、地域の援助機関との関わりを促進し、その関係が長続きするよう援助する。
7.対処に役立つ情報
苦痛をやわらげ、適応できる機能を高めるために、ストレス反応と対処の方法について知ってもらう。
8.紹介と引き継ぎ
被災者がいま必要としている、あるいは将来必要となるサービスを紹介し、引継ぎを行う、さらに援助を必要とする被災者に、適切なサービスを紹介する。

〇WHO版も米国版も準備段階から、支援終了まで書かれており分かりやすい。
<引用先> アメリカ国立子どもトラウマティックストレス・ネットワーク,アメリカ国立PTSDセンター 「サイコロジカル・ファーストエイド実施の手引き第2版」兵庫県こころのケアセンター訳,2009年3月.
(つづく)A.K

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