キャリアコンサルタント国家試験の出題範囲に関係する「キャリアコンサルタントの能力要件の見直し等に関する報告書」について話をしています。
厚労省報告書では、キャリアコンサルタントに共通して、今後求められる能力要件に関する具体的な検討に当たっては、キャリアコンサルタントを取り巻く様々な状況から、今後求められる社会的な役割等を明確にした上で議論することが必要ではないか、としてキャリアコンサルタントに今後求められる能力要件の前提となる社会的役割の重点等について次の通り提言しています。
1 近年のキャリアコンサルタント、キャリアコンサルティングに関連する制度・施策の整備等を踏まえ、その適正かつ効果的な運営上のポイントとなる点
○ セルフ・キャリアドックをはじめとする企業内での在職者に対するキャリアコンサルティング機会の提供、その他キャリア支援の環境整備
○ 専門実践教育訓練や公的職業訓練をはじめとする中長期的なキャリア形成に資する学び直しを効果的に行う前提としてのキャリアコンサルティングの実施、ジョブ・カードの作成支援
2 「働き方改革」や人材の育成・活用力の強化等の政策的な重要課題のうち、キャリアコンサルタントやキャリアコンサルティングによる更なる役割発揮が特に期待される点
○ 個人の主体的な学び直しを通じたキャリアアップ・再就職の支援
○ 仕事と治療の両立、子育て・介護等と仕事の両立に関するキャリアの視点からの支援
○ 中高年・高齢者が活躍できる就業・転職の促進
3 キャリアコンサルティング利用者の評価、ニーズ等を踏まえて、今後より一層の充実が求められる点
○ 利用者の納得感を高める応対、課題解決のための具体的なアドバイスの提示等
4 有資格者、指導者を目指す者向けに実施されているより高度・先進的な講座の実態等も参照し、補強が必要と考えられる点
○ 企業などの組織内におけるキャリア支援の前提となる、キャリア開発や組織開発、人的資源管理などに関する理解を踏まえた組織内での人事部門等との連携
○ 組織における人間関係に関する理解を踏まえたマネージャー等への支援
以上が報告書のなかで強調されている点ですが、詳細は次の通りです。
1 検討の背景及び考え方
(1)検討の背景
現行のキャリアコンサルタントの能力要件は、平成28 年4月のキャリアコンサルタント登録制度の創設・施行にあたって整備された、職業能力開発法施行規則(昭和44 年労働省令第24 号)別表第11の3の2「キャリアコンサルタント養成講習の科目・範囲・時間数」(以下「省令別表」という。)として表されています。
キャリアコンサルタント登録制度創設に当たっては、標準レベルキャリア・コンサルタントからの円滑な移行等をより優先する等の考え方から、平成23 年3月の『「キャリアコンサルティング研究会」報告書』で示された標準レベルキャリアコンサルタントに係る「キャリアコンサルティング実施のために必要な能力体系」及び「キャリアコンサルタント養成に係るモデルカリキュラム(訓練時間の目安)」(いわゆる「140 時間プログラム」。以下「能力体系等」という。)の時間数や構成を基本的にそのまま踏襲するものとして省令別表が整備されました。
一方で、キャリアコンサルタント登録制度創設時点で、当時のキャリアコンサルタントの能力体系等については直近の改訂から既に約4年が経過していたこと等から、『平成27 年度「キャリアコンサルティング研究会」報告書」においては、キャリアコンサルタント登録制度の安定運用が確認された時点で、キャリアコンサルタントに求められる役割に応じた分野・水準両面での能力要件の精査等により、見直し・拡充の検討に着手すべきとの指摘もなされています。
(つづく)A.K