実践編・応用編

児童育成人材|キャリコン実践の要領241テクノファ

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キャリアコンサルタントが知っておくべき情報をお伝えします。

■児童育成人材
子どもを育てながら働きたいという希望を実現するため、2025(令和7)年の保育所の利用児童数のピークに対応し、新たに約2.5万人の保育人材が必要である。
25~44歳の女性就業率は年々上昇し、それに伴い保育の利用申込者数も増加しており、保育所の利用児童数のピークは2025年となる見込みである。可能な限り早期に待機児童の解消を目指し、子どもを育てながら働きたいという希望を実現できるよう、病児や障害児、医療的ケア児、外国籍等の子どもの受入体制整備も含めて引き続き必要な保育の受け皿の整備に取り組む必要がある。2020(令和2)年12月に取りまとめられた「新子育て安心プラン」では、地域の保育ニーズ等の特性に応じた支援、魅力向上を通じた保育士の確保、地域のあらゆる子育て資源の活用の3つを柱として各種の取組みを進め、2021(令和3)年度から2024(令和6)年度末までの4年間で約14万人の保育の受け皿を整備することとしている。このため、保育人材は新たに約2.5万人の確保が必要となっている。

「小1の壁」を打破し、次代を担う人材を育成するため、放課後児童クラブで2023(令和5)年度末までに約30万人分の受け皿を整備する予定である。
女性就業率の上昇等により、更なる共働き家庭等の児童数の増加が見込まれている。子どもの小学校入学に伴い、仕事と子育ての両立が困難になるとされる「小1の壁」を打破するとともに次代を担う人材を育成するため、2018(平成30)年9月に策定された「新・放課後子ども総合プラン」に基づき、2023(令和5)年度末までに約30万人の受け皿を整備することとしている。放課後児童クラブは待機児童を解消するとともに次代を担う人材を育成するため、全ての児童が放課後を安全・安心に過ごし、多様な体験・活動を行うことができるようにすることが望ましい。そのため全ての小学校区で、放課後児童クラブと放課後等に全ての児童を対象として学習や体験・交流活動などを行う事業である放課後子供教室を一体的に又は連携して実施することを目標として計画的な整備を行っていくこととしている。「新・放課後子ども総合プラン」に基づく放課後児童クラブの量的拡充、質の確保を図っていく上では、質の高い放課後児童支援員の育成が急務である。放課後児童支援員は福祉に関する一定の資格や実務経験等の高い専門性が求められる。そのため、認定資格研修の質の確保と受講機会の拡充を図っていく。

かけがえのない命を守り、全ての子どもの健全な成長・発達や自立を守るため、児童虐待防止対策の総合的・抜本的強化策を迅速かつ強力に推進していく。
2020(令和2)年度中に、全国220か所の児童相談所が児童虐待相談として対応した件数は20万5,044件で過去最多を更新した。子ども、その保護者、家庭を取り巻く環境は依然として厳しいものとなっており、子育てを行っている母親のうち約6割が「近所で子どもを預かってくれる人はいない」と回答するように孤立した状況に置かれている。また、地域子ども・子育て支援事業が支援を必要とする子ども等に十分に利用されておらず、子育て世帯の負担軽減などの効果が限定的なものとなっていると指摘されている。これらの状況を踏まえ、児童虐待の発生予防・早期発見及び児童虐待発生時の迅速・的確な対応を行うとともに、虐待を受けた子どもなどへの支援を行っていくための必要な人材確保を含めた体制強化が必要である。

2022(令和3)年3月、「児童福祉法等の一部を改正する法律案」を第208回通常国会に提出した。同法律案では、様々な状況にある子どもや家庭に包括的な相談支援等を行う「こども家庭センター」の設置や訪問による家事支援など子どもや家庭を支える事業の創設などを行うこととしている。また、子ども家庭福祉現場において相談援助業務等を担う者の専門性向上のための実務経験者向けの認定資格を創設することとしている。2年以上の実務経験のある社会福祉士や子ども家庭福祉の分野で4年以上の実務経験のある方が研修等を経て認定されることとなっており、2024(令和6)年から始まることとなっている。

新型コロナウイルス感染症を含む新興感染症等の感染拡大時に柔軟に、かつ機動的に対応できる体制の構築が必要である。
少子高齢化の進行等に加え、新型コロナウイルス感染症の流行により一時的、局所的に医療提供体制が逼迫する事態が生じた。また感染防止対策により介護施設等における業務が増大し、人手不足が更に深刻化している。新型コロナウイルス感染症の感染拡大時や将来、広く一般の医療連携体制にも大きな影響が及ぶ新興感染症等の発生時に柔軟に、機動的に対応できる体制の構築が必要である。新型コロナウイルス感染症に対応する中、医療従事者の確保が困難な地域においても、地域医療を支える医療施設・保健所等における必要な医療人材を迅速に確保することができるよう、2020(令和2)年度に開設した医療施設・保健所等の人材募集情報を収集し、求職者が応募等を行うことが可能な医療人材の求人情報サイト「医療のお仕事Key-Net」の運用を継続することとしている。

2021(令和3)年11月12日には、同年夏の感染拡大状況を踏まえ、「病床の確保、臨時の医療施設の整備」、「自宅・宿泊療養者への対応」、「医療人材の確保等」に関する各都道府県の体制整備の方針を取りまとめた、「次の感染拡大に向けた安心確保のための取組の全体像」を公表した。各都道府県における「保健・医療提供体制確保計画」の策定は2021年11月末までに完了している。「医療人材の確保等」に関しては、人材確保・配置調整等を一元的に担う体制を構築するとともに、医療逼迫時に医療人材の派遣に協力する医療機関と、職種ごとの具体的な派遣可能人数を調整することとされている。医療人材の派遣に協力する医療機関数は約2千施設、協力する施設から派遣可能な医師数及び看護職員数はそれぞれ約3千人が予定されている。

2022(令和4)年度では新たに、DMAT(災害派遣医療チーム)の枠組みを拡充し、新興感染症等の感染拡大時に対応可能な医療支援チームを組織するとともに、医療支援チームの人材育成の強化等を図るため、DMAT事務局の体制を拡充することとしている。また、新興感染症等の感染拡大時を想定して平時から重症呼吸不全患者に対して体外式膜型人工肺(ECMO)を適切に取り扱うことができる医療従事者を確保するため、都道府県が行う研修に必要な経費を支援することとしている。

看護職員に関しては、緊急的な看護人材ニーズに対応した人材調整の体制整備、新型コロナウイルス感染症に対応する看護職への研修、新型コロナウイルス感染症の影響による看護職員の離職防止にかかる支援を実施し、看護職員の確保を図っている。保健師に関しては、新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえ、感染症の拡大時に円滑な業務ができるよう、感染症対応業務に従事する保健師について、2021(令和3)年度から2年間かけて約900名増員するために必要な地方財政措置を講じている。新型コロナウイルス感染者等が発生した介護サービス事業所・施設等及び障害福祉サービス事業所等が関係者との連携の下、感染拡大防止対策の徹底等を通じて、必要なサービス等を継続して提供できるように支援するとともに、都道府県において、緊急時に備え、職員の応援体制やコミュニケーション支援等の障害特性に配慮した支援を可能とするための体制を構築することとしている。また障害福祉サービス事業所等の職員が感染症対策についての相談を受けられる窓口の設置、感染症対策の専門家による感染対策マニュアルを活用した研修や実地指導、業務継続計画(BCP)の作成に関する指導者養成研修等を行うこととしている。

新型コロナウイルス感染症を含む新興感染症等については、2024(令和6)年度を始期とする第8次医療計画に向けて、新興感染症等の感染拡大時においても、感染症医療とそれ以外の一般医療を両立する観点から、受入候補となる医療施設や場所・人材等の確保の考え方、医療施設間の連携・役割分担等の具体的な記載事項について検討を行うこととしている。
(つづく)K.I

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