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■患者のための薬局ビジョン
薬剤師の全体数は需要を上回って推移することから、適正な大学の定員規模の在り方の検討とともに、偏在を解消するための方策についての検討も必要である。
薬局数及び薬局で就業する薬剤師数は増加傾向にあるものの、薬局薬剤師一人当たりの年間処方箋枚数は減少傾向が続いている。一方で、薬物療法において特に副作用に注意を要する、がん、糖尿病等を有する患者については外来治療が入院治療を上回るなど、外来や在宅で治療を受ける患者が増えている。また、80歳以上の患者の7割超が6種類以上の薬を服用する実態があるなど、多剤服用による薬物有害事象のリスク増加、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下等の懸念がある。
「患者のための薬局ビジョン~「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」へ~」
処方箋の受取・保管や薬の調剤等の薬中心の業務から、処方内容のチェック、医師への疑義照会、丁寧な服薬指導、在宅訪問での薬学管理や処方提案など患者中心の業務を担う、「かかりつけ薬剤師・薬局」の役割を示した。また、2019(令和元)年に公布された改正医薬品医療機器等法により、住み慣れた地域で患者が安心して医薬品を使うことができるようにするための薬剤師・薬局の在り方が見直され、薬剤師が調剤時に限らず、必要に応じて患者の薬剤の使用状況の把握や服薬指導等を行うことの義務づけなどが行われた。直近では、在宅業務を実施している薬局数は増加している。
2021(令和3)年の薬剤師の需給推計によると、薬剤師の総数は、将来的には薬剤師の業務が地域における役割の重要性の増加に伴い需要がより増加すると仮定したとしても、供給が需要を上回り、薬剤師が過剰になると見込まれている。将来的に薬剤師が過剰になると予想される状況下では、適正な大学の定員規模の在り方や仕組みなどを検討する必要があろう。また併せて、地域偏在や従事先業態の偏在により、特に医療機関を中心として薬剤師が充足していない状況についても対応策の検討が重要である。チーム医療の推進により、医療機関の薬剤師には、多職種と連携しながら病棟の薬剤業務の充実を図ることが求められており、医師からのタスク・シフト/シェアとして薬剤師が薬物療法に積極的に関わっていく期待も高い。また、患者が退院後に自宅等で適切な治療を受けられるよう、地域の薬局や訪問看護等を担う関係機関との連携にも関与していく必要がある。地域の実情に応じた効果的な取組みが必要であろう。
□事例
(薬剤師と多くの職種が連携した在宅療養患者の薬剤管理の取組み ファーマシィ薬局引野)
高齢化の進行や、外来で治療を受けるがん患者の増加などに伴い、在宅を含めた薬物療法が重要となっており、薬剤師・薬局の機能強化が求められている。そこで、地域の病院や多職種と連携しながら在宅業務を積極的に行っている薬局の一例として、「ファーマシィ薬局引野」(広島県福山市)の取組みを紹介する。
〈在宅業務に取り組むきっかけ〉
重度な要介護状態になっても患者が住み慣れた自宅で最期まで過ごせるためには、24時間365日の支援体制など地域の医療チームによる連携が必要不可欠である。そこでファーマシィ薬局引野も医薬品の供給を担う医療チームの一員として、有志の医師や医療専門職等の仲間集めから着手し、勉強会の開催や、後方支援病床の確保等の在宅医療に必要となる仕組み作りを進めた。ただ、賛同する専門職を増やさなければ、取組が地域に定着しない可能性を感じ、医師会や病院を巻き込んで取組みを進め、現在では、連携する職種も増えた環境で薬局として在宅業務を実施している。
〈在宅業務に取り組むきっかけ〉
重度な要介護状態になっても患者が住み慣れた自宅で最期まで過ごせるためには、24時間365日の支援体制など地域の医療チームによる連携が必要不可欠である。そこでファーマシィ薬局引野も医薬品の供給を担う医療チームの一員として、有志の医師や医療専門職等の仲間集めから着手し、勉強会の開催や、後方支援病床の確保等の在宅医療に必要となる仕組み作りを進めた。ただ、賛同する専門職を増やさなければ、取組が地域に定着しない可能性を感じ、医師会や病院を巻き込んで取組みを進め、現在では、連携する職種も増えた環境で薬局として在宅業務を実施している。
〈在宅業務の実施内容〉
薬局薬剤師の在宅業務は、患者の自宅を訪問し、服用薬や残薬(飲み残しの薬)の状況だけでなく、生活状況も含めて把握することから始まる。これにより、残薬解消に向けた対応等に加え、各患者に応じた服薬支援(例えば、飲み込む力が弱っている患者に飲みやすい剤型への変更を検討する、家族の在宅時間や他職種の訪問時間等に服用できるように服薬タイミングや回数を検討するなど)を行うことが出来る。また、患者の状態を踏まえた医師への処方提案など、在宅業務で薬剤師に出来ることは多々あり、1件当たりの在宅業務に要する時間は、ケースバイケースではあるものの、長ければ2時間程度かかることもある。また、自宅での看取りも支援しており、24時間体制での医薬品提供体制の構築、取扱いが難しい医療用麻薬の管理・調製等を行っている。さらに、無菌調剤室を整備するなど、在宅業務に必要な設備整備も行っている。
〈薬薬連携や多職種連携〉
薬薬連携(薬局薬剤師と病院薬剤師の連携)や多職種連携にも積極的に取り組むことにより、より充実した在宅業務を実現している。例えば、在宅療養している患者が入院する際には、病院がスムーズに患者の薬を把握できるよう、統一した書式により所持薬の情報を整理したうえで、病院薬剤師に伝達している。また、入院患者が退院して在宅療養に移行する際には、薬局薬剤師が病院薬剤師や多職種が集う退院時カンファレンスに参加し、患者の入院状況や処方歴等の様々な情報を得るとともに、これらの情報を踏まえ、個々の患者に応じた処方提案などを行っている。在宅業務の実施に当たっては、多職種間での情報共有に努めるとともに、多職種間のスケジュールを調整する役割も担っている。また、例えば、実際に患者に医薬品を投与する看護師に安全管理の面から注射計画書などの情報提供書を作成し提供するなど、他職種のサポートも行っている。これらの取組みにより、他職種の信頼を得ながら連携を進め、質の高い在宅ケアを実現している。理学療法士及び作業療法士の全体数は需要を上回って推移している。理学療法士及び作業療法士については、2019(平成31)年4月の需給推計によると、需要について幅を持たせた推計を行ったいずれのケースにおいても供給数が需要数を上回っており、2040(令和22)年頃には供給数が需要数の約1.5倍となると見込まれている。
(つづく)K.I