基礎編・理論編

キャリアコンサルタント熟練レベルのを目指して 4 I テクノファ

投稿日:2020年9月30日 更新日:

熟練レベルのキャリアコンサルタントを目指すにはネットワークが重要

熟練レベルのキャリアコンサルタントでは、より効果的なキャリア開発形成支援のために、人的なネットワークを持ち、活用するだけでなく、クライエントを取り巻く環境への働きかけも必要になります。

■キャリアコンサルタントは人的ネットワークと環境への働きかけが重要
①人的ネットワーク
熟練レベルのキャリアコンサルタントの特長は、キャリア開発・形成支援のためのリソースを組織化し、関係者と効果的に連携して活動している点です。すなわち、人的なネットワークを持ち、自分の専門領域以外のテーマに関してはそれを効果的に活用しているということです。1人ですべてを解決できるわけではないので、必要に応じて他者と連絡を取り合い、協力等を求めることが不可欠となります。これが的確な「リファー」 につながります。自分の専門領域以外のこと、あるいは自身の力量を超える問題に関しては、適切な専門家にリファーする必要があることはすでに説明したとおりです。

②環境への働きかけ
次に注目しなければならない点は「環境への働きかけ」です。キャリアコンサルタントの役割は、来談者との1対1の面談だけでは終わらないことがあります。そのキャリア開発・形成上の問題を解決するにあたっては、来談者を取り巻く環境要因が大きな意味を持つことが多く、そのためには問題の本質を把握して、場合によっては関係機関や関係部署等に働きかけ、効果的なクライエント支援を行っていくことが求められます。
その場合、あくまでも来談者のプライバシーの保護には十分留意し、 来談者の同意または了承を得なければならないことは、言うまでもありません。

次にキャリアコンサルティングを行ううえで求められるものについて説明いたします。
そもそも、なぜキャリアコンサルタントが必要とされるのでしようか? ここでは、日本の社会的背景の変化から、現在のニーズと、それにあたって、どんな知識やスキルが求められるのかを解説していきます。
■かつての日本には「キャリア」の概念がなかった
かつて、日本の社会では「キャリア」という概念が存在していませんでした。しいて言えば、官庁における差別的な「キャリア組、ノン・キャリア組」 という表現として使われていた程度です。「キャリア」という言葉が日常の場面で使われるようになってから日がまだ浅く、自分の人生は自分のもの、自分の生き方は自分が決めなければならない、という自覚を持っている人はキャリコンサルタント以外にはあまり多くなく、逆に、自分で自分らしい生き方を考えて実践しようとしても意味がない、自分の将来は自分で決めることではなく親や先生や会社が決めることである、 と思っている人の方が多いのが現状です。

いわんや、自分はなぜ働くのか、働くということが自分にとってはどういう意味があり、どういう価値があるのか、などという内省も意識もありませんでした。
それは、日本が戦後の復興期には自分のことはさし置いてひたすら家族のため、社会のため、会社のためにがんばることを求められていたからです。その結果として、日本はほとんどゼロの状態から世界でも有数の経済大国にまで成長することができました。国内外の経済も右肩上がりであったために企業は社員を丸抱えにし、いつのまにか企業の社員は自分の将来を自分の問題として考える機会を失ってしまったからだと思われます。

そもそも、自分の生き方を誰か他の人に決めてもらいたいと思っている人はいないはずですし、誰かの言いなりに生きていこうとする人もいないはずです。しかし、多くの日本人にとってはそれが成功体験としてしみついてしまい、気がつくと自分の生き方、あるいは働き方を自分で考え、自分で実行することを求めることも、求められることもなくなっていたのです。このような問題意識はキャリア教育を通じて各人のなかで醸成され、それぞれ個々人が自覚しなければならないことなのですが、社会がこのようなキャリア自覚を求めていなかったために、日本の学校教育でも、キャリア自覚を促すようなキャリア教育はなされてきませんでした。

■バブルの崩壊をきっかけにキャリア開発・形成の支援が必要に
ところが、バブルが崩壊して企業は社員の丸抱えができなくなったばかりか、人員整理をせざるを得ない状況となってしまいました。バブル崩壊以前は言わなかった「自己責任」ということを企業は言わざるをえなくなりました。それまでは会社の言うとおりにやっていれば平穏無事に暮らせていたのに、そうはいかなくなったわけです。
そのため、自分のことは自己責任と急に言われてもすぐに対応することが困難であったり、どう考えればよいのかわからずに困っていたり、という人たちをキャリコンサルタントが支援する必要が生じました。また、企業の人員整理によって非自発的に退職せざるを得ない状況に置かれた人が増加したため、そういう人たちの再就職を支援する必要性も生じてきました。
(つづく)A.K

-基礎編・理論編

執筆者:

関連記事

キャリアコンサルタント養成講座 29-2 | テクノファ

横山哲夫先生の思想の系譜6-2 横山哲夫先生が2019年6月に逝去されて今年は3回忌になります。テクノファでは2004年に先生のご指導でキャリアコンサルタント養成講座を立ち上げさせていただいて以来、今年まで実に14年もの間先生の思想に基づいたキャリアコンサルタント養成講座を開催し続けさせていただきました。 先生はモービル石油という企業の人事部長をお勤めになる傍ら、組織において個人が如何に自立するか、組織において如何に自己実現を図るか生涯を通じて研究し、又実践をされてきた方です。 先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWO …

キャリアコンサルタント養成講座 126 | テクノファ

今回は、エドガー・H、シャイン著「組織文化とリーダーシップ」翻訳紹介の間に、横山さんの講演録を入れさせていただきます。この講演録は2010年3月にキャリアコンサルタント協議会が収録したもので、連続した講演を3回に分けて紹介しますが、今回はその3回目をお送りします(2回に分けてお送りします)。この講演はACCN(オールキャリアコンサルタントネットワーク)もサポートしておりキャリアコンサルタントの方にはぜひ聞いていただきたいものです。 横山哲夫先生講演録 その3-1 レジメの2ページをご覧下さい。項目が1から6まであります。1つで10分やってもこれで60分・1時間近く使ってしまいます。ですから、そ …

キャリアコンサルタント熟練レベルを目指して 2I テクノファ

熟練キャリアコンサルタントを目指すにあたって、近道はありません。実践経験を積みながら、日々研鑽を重ねることが何より重要です。 ■「自ら成長したい」という強い思いが不可欠 熟練キャリアコンサルタントになるために、近道や特効薬はありません。継続した学習と実践を積むしかありません。そのうえで、ケースにおける失敗経験を反省し、自身の力量を自覚するとともに、成功経験をその後の活動に効果的に反映させるべく、活動に対する先輩や指導者からのフィードバックを求め、自分の資質の向上に努めることなどで、はじめて熟練キャリアコンサルタントに近づいていきます。つまり、熟練キャリアコンサルタントを目指すには、受け身の姿勢 …

キャリアコンサルタント養成講座 45 | テクノファ

横山哲夫先生の思想の系譜15 横山哲夫先生が2019年6月に逝去されて今年は3回忌になります。テクノファでは2004年に横山哲夫先生のご指導でキャリアコンサルタント養成講座を立ち上げさせていただいて以来、今年まで実に14年もの間横山哲夫先生の思想に基づいた養成講座を開催し続けさせてきました。 横山哲夫先生はモービル石油という企業の人事部長をお勤めになる傍ら、組織において個人が如何に自立するか、組織において如何に自己実現を図るか生涯を通じて研究し、又実践をされてきた方です。 横山哲夫先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのW …

キャリアコンサルタント養成講座 54 | テクノファ

横山哲夫先生の思想の系譜 横山哲夫先生が2019年6月に逝去されて今年は3回忌になります。テクノファでは2004年に先生のご指導でキャリアコンサルタント養成講座を立ち上げさせていただいて以来、今年まで実に15年もの間先生の思想に基づいた養成講座を開催し続けさせてきました。 横山哲夫先生はモービル石油という企業の人事部長をお勤めになる傍ら、組織において個人が如何に自立するか、組織において如何に自己実現を図るか生涯を通じて研究し、又実践をされてきた方です。 横山哲夫先生は、個人が人生を通じての仕事にはお金を伴うJOBばかりでなく、組織に属していようがいまいが、自己実現のためのWORKがありはずであ …

2022年6月
« 5月    
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930