キャリアコンサルタント国家試験の出題範囲に関係する「キャリアコンサルタントの能力要件の見直し等に関する報告書」について話をしています。
厚労省報告書における、今後キャリアコンサルタントに求められる能力要件についての続きです。
(3)見直しに関する関係機関からのヒアリングを通じ把握した制度運用上の課題
上記(1)①及び②のとおり、能力要件の見直しについては、省令別表に基づくカリキュラムにより実施される養成講習のほか、キャリアコンサルタント試験に対して影響を及ぼすものであることから、養成講習実施機関及び登録試験機関の代表者からのヒアリングにおいて示された意見についても、見直しにおける1つの視点とすることとした。
ヒアリングにおいて把握された意見のうち、能力要件の拡充・明確化に関しては、多様な属性を有するクライアントへの対応、キャリアコンサルティングの基本的スキルの一層の充実、企業組織での機能発揮、キャリアコンサルタントの活躍フィールドに応じた知識、隣接領域の専門家との関係性等がポイントとして挙げられた。
また、見直しに伴い生じる各機関における対応事項とその準備に要する期間の見通しに関しては、特に養成講習実施機関から、テキスト・教材の改訂や講師の選定、周知や効果検証等を含めて概ね1年半程度の準備・移行期間を要するとの意見が提示された。
(4)見直しの具体的事項及び省令別表等への反映
上記(1)~(3)を主な要素として能力要件の見直しについて検討を行った結果として、見直しの具体的事項及び省令別表等への反映の方向性について以下に示す。
①拡充・強化すべき事項
ア. クライアントや相談場面が多様化してきていることを踏まえた、クライアントの話を聴き取り、対話を通して課題を合意・共有するための基本的スキルの一層の充実を図るための知識及び技能。
イ. セルフ・キャリアドック等の企業におけるキャリア支援の円滑な実施に当たって必要となる、人事制度の運用や組織に関する知識、いわゆるキャリアデザインワークショップの実施、キャリアプランの作成支援、人事部門との協業や組織に対する報告に関する知識及び技能。
ウ. 個人の生涯にわたる主体的な学び直しと、これによるキャリアアップやキャリアチェンジの支援において必要となる、関連制度・施策の適切な提案のための知識・技能。
エ. 企業におけるキャリア支援の推進にあたっても重要である、社会環境変化や労働政策上の課題(例:職業生涯の長期化、仕事と治療の両立支援、子育て・介護と仕事の両立支援等)の解決に対する役割発揮の観点から必要となる、長いライフキャリアにおける、いわばキャリア充実(自分らしく経験を積み、能力を発揮できる、やりがいや成長を感じられるなど、主に内的キャリアに着目した充実)を図るための職業生活設計、様々なクライアント特性の理解、各領域の専門家等との連携のための知識・技能。
②合理化すべき事項
ア. キャリアコンサルタント登録制度が創設され、国家資格化された現状を踏まえれば、含まれる内容の相当程度がもはや関係者にとって自明であると考えられる、キャリアコンサルティングの社会的意義に関する知識。ただし、キャリアコンサルタントの倫理については引き続き重要性が高いことを踏まえ、関係科目を統合の上、充実を図る。
イ. 科目間(「キャリアコンサルティングを行うために必要な知識」と「キャリアコンサルティングを行うために必要な技能」)で内容に重なりが存在すると考えられる、キャリア及びカウンセリングに関する理論並びに自己理解及び仕事の知識。
(つづき)平林良人