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職場におけるハラスメント |キャリコン国家試験253テクノファ

投稿日:2023年5月3日 更新日:

キャリアコンサルタントに必要な情報をお伝えします。

■職場におけるハラスメント対策マニュアル
□このマニュアルは出産等に関するハラスメントやセクシュアルハラスメント対策の進め方、その際に参考となるツール、情報等を提供するもので厚生労働省が、ハラスメントの適切な予防や事案が起こった際の解決に活用できるように作成したものです。
次にマニュアルの概要を説明します。
□職場におけるハラスメントについて
〇職場におけるハラスメントの現状
都道府県労働局に寄せられる男女雇用機会均等法に係る相談件数は、厚生労働省「平成27年度 都道府県労働局雇用均等室での法施行状況」、厚生労働省「平成28年度 都道府県労働局雇用環境・均等部での法施行状況」によると、セクハラに関する相談が最も多く、次いで婚姻、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いに関する相談が多い。また婚姻、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いに関する相談は増加傾向にある。

〇 妊娠・出産等に関するハラスメント
(1)職場における妊娠・出産等に関するハラスメントとは「職場」において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した「女性労働者」や育児休業等を申出・取得した「男女労働者」等の就業環境が害されること。
<職場>とは
・労働者が業務を遂行する場所を指す、通常就業している場所以外にも労働者が業務を遂行する場所であれば「職場」に含まれる。
<労働者>とは
・正規雇用労働者だけでなくパートタイム労働者、契約社員などのいわゆる非正規雇用労働者も含む事業主が雇用するすべての労働者をいう。派遣労働者については派遣元事業主だけでなく派遣先事業主も措置を講じる必要がある。

(2)妊娠・出産等に関するハラスメントの内容
①制度等の利用への嫌がらせ型
1 解雇その他不利益な取扱いを示唆するもの
2 制度等の利用の請求等又は制度等の利用を阻害するもの

上の1・2でハラスメントの対象となる者は
・妊娠・出産に関する制度を利用する女性労働者
・育児・介護に関する制度を利用する男女労働者

3 制度等を利用したことにより嫌がらせ等をするもの
対象となる者は
・妊娠・出産に関する制度を利用した女性労働者
・育児・介護に関する制度を利用した男女労働者
②状態への嫌がらせ型
1解雇その他不利益な取扱いを示唆するもの
2妊娠等したことにより嫌がらせ等をするもの

上の1・2でハラスメントの対象となる者は妊娠等した女性労働者
(3)ハラスメントには該当しない「業務上の必要性」に基づく言動

  • 業務分担、安全配慮等の観点から客観的に見て業務上の必要性に基づく言動

・調整可能な休業等について時期をずらすことが可能か労働者に相談するといった行為までがハラスメントとして禁止されるものではない。
〇 セクハラ
(1)「職場」において行われる、「労働者」の意に反する「性的な言動」に対する労働者の対応によりその労働者が労働条件について不利益を受けたり、「性的な言動」により就業環境が害されること
・事業主、上司、同僚に限らず、取引先、顧客、患者、学校における生徒などもセクハラの行為者になり得るものであり、男性も女性も加害者にも被害者にもなり得る。

  • 職場におけるセクハラには同性に対するものも含まれる。また被害を受ける者の性的指向、性自認に関わらず「性的な言動」であればセクハラに該当する。

(2)セクハラの内容
「職場におけるセクハラ」には「対価型」と「環境型」がある。
1.対価型セクハラ
労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応によりその労働者が解雇、降格、減給、労働契約の更新拒否、昇進・昇格の対象からの除外、客観的に見て不利益な配置転換などの不利益を受けること。

2.環境型セクハラ
労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため能力の発揮に重大な悪影響が生じるなどその労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること。

(3)セクハラにおける判断基準
セクハラの状況は多様であり判断に当たり個別の状況を考慮する必要がある。また「労働者の意に反する性的な言動」と「就業環境を害される」の判断に当たっては労働者の主観を重視しつつも事業主の防止のための措置義務の対象となることを考えると一定の客観性が必要。

(4)セクハラの背景になり得る言動について
「男らしい」「女らしい」など固定的な性別役割分担意識に基づいた言動はセクハラの原因や背景となってしまう可能性がある。管理職は日頃から自らの言動に注意するとともに部下の言動にも気を配り、セクハラの背景となり得る言動についても配慮する。
□職場のハラスメントを防止するために事業主が講ずべき措置について
□ 妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントを防止するために講ずべき事項
□ 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
・妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの内容
・妊娠・出産等、育児休業等に関する否定的な言動が職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの発生の原因や背景となり得ること
・妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントがあってはならない旨の方針
・制度等の利用ができることを明確化し管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
・妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントに係る言動を行った者については厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
□ 相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備
・相談窓口をあらかじめ定めること。
・相談窓口担当者が内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。

妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントが現実に生じている場合だけでなく発生のおそれがある場合や妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても相談に対応すること。
(望ましい取組) 妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントやセクハラはその他のハラスメント(パワハラ等)と複合的に生じることも想定されることからあらゆるハラスメントの相談を一元的に受け付ける体制を整備すること。
□ 職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
・事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
・事実確認ができた場合には速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと。
・事実確認ができた場合には行為者に対する措置を適正に行うこと。
・再発防止に向けた措置を講ずること。

□ 職場における妊娠・出産等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置
・業務体制の整備など事業主や妊娠等した労働者その他の労働者の実情に応じ必要な措置を講ずること。

(望ましい取組)
妊娠等した労働者の側においても制度等の利用ができるという知識を持つことや周囲と円滑なコミュニケーションを図りながら自身の体調等に応じて適切に業務を遂行していくという意識を持つことを周知・啓発すること。
□ 併せて講ずべき措置
・相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ周知すること。
・相談したこと事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め労働者に周知・啓発すること。
□ セクハラを防止するために講ずべき事項
□ 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
・セクハラの内容
・セクハラがあってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
セクハラの行為者については厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。

□ 相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備
・相談窓口をあらかじめ定めること。
・相談窓口担当者が内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。
・セクハラが現実に生じている場合だけでなく発生のおそれがある場合や、セクハラに該当するか否か微妙な場合であっても広く相談に対応すること。

(望ましい取組)
妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントやセクハラはその他のハラスメントと複合的に生じることも想定されることから、あらゆるハラスメントの相談を一元的に受け付ける体制を整備すること。
□ 職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
・事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
・事実確認ができた場合には速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと。
・事実確認ができた場合には行為者に対する措置を適正に行うこと。
・再発防止に向けた措置を講ずること。
□ 併せて講ずべき措置
・相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ周知すること。
・相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め労働者に周知・啓発すること。
□指針に定められている措置項目「職場のハラスメント防止対策」、「ハラスメント事案が生じた場合の対応と解決処理」、について取組例を次に紹介。

〇 事業主が講ずべき措置について「職場のハラスメント防止対策」の取組例
ハラスメントを防止するためには
・どのような言動がハラスメントになるか
・自社がハラスメントを許さないという方針を取っていること
・ハラスメントに該当する行為を行った場合にどのような処分があるか
などが周知されていることが重要。
このため指針では
・ハラスメントの内容、方針の明確化と周知・啓発
・行為者への厳正な対処方針、内容の規定化と周知・啓発
・相談窓口の設置
・当事者などのプライバシー保護のための措置の実施と周知
・相談、協力等を理由に不利益な取扱いを行ってはならない旨の定めと周知・啓発
について事業主に措置を講じるよう求めている。対応している事例等を参考に就業規則等に記載するなど方針の明確化と社内への周知・啓発を行う。
<規定及び周知・啓発にあたっての留意点>
・対処方針・内容の規定化は就業規則その他職場における服務規律等を定めた文書に記載する必要がある。
・周知・啓発は
・管理職層を中心に階層別に分けて研修を実施する
・正社員だけでなく非正規雇用労働者も対象に含めて研修を実施する
・すべての労働者に対して周知を図る工夫をする。
・社内ネットワークに掲載や更新の都度その旨をメール等で全労働者に周知することが必要。
(1)規定や周知用資料
規定や周知用資料の例がマニュアルに多数掲載されているので参照する。
(2)相談窓口の設置
ア 安心して相談できる相談窓口の設置
イ 相談担当者の人選
・ハラスメントや人権問題に対する十分な理解を持つ者を選任。中立的な立場で相談を受け解決に向けて取り組むことができる人材。
〇 事業主が講ずべき措置について「ハラスメント事案が生じた場合の対応と解決処理」の取組例
社内でハラスメントが生じてしまうことがある。設置した相談窓口が有効に機能し問題解決を行うことが重要。
このため指針で定める下記
・相談に対する適切な対応
・事実関係の迅速かつ正確な確認
・被害者に対する適正な配慮の措置の実施
・行為者に対する適正な措置の実施
・再発防止措置の実施
・妊娠・出産等に関するハラスメントについては業務体制の整備など事業主や妊娠等した労働者等の実情に応じた必要な措置
について手順に従って対応する。

(2)相談に当たっての基本的留意点
ア 相談に対する適切な対応
ハラスメントが現実に生じている場合だけでなく発生のおそれがある場合や、職場におけるハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても相談に対応する必要がある。
イ プライバシー保護のための措置
プライバシーが確保できるスペースを準備。
秘密が守られることや窓口でどのような対応をするか明確にしておく。
(3)相談窓口担当者の心構え
話をゆっくり時間をかけて聴いてプライバシーを守ること、相談によって社内で不利益な取扱いを受けないことを説明する。
(4)事実関係の調査
ア 相談内容の整理
相談者とともに相談内容を確認する。人事担当部署などに相談内容を伝え事実関係を確認することや対応案を検討することについて同意を得る。
イ 事実関係の確認に当たっての留意点
正確に確認することが必要。
中立な立場で行為者の話を聴く。場合により行為者の前に第三者に事実確認を行うことも考えられる。
ウ 行為者に対する事実関係の調査
事実かどうか認識の違いがないか確認し認めている部分認めていない部分を明確にしておく。
エ 第三者への事実関係の調査
相談者と相手の意見が一致しない場合には第三者に事実確認の調査を行う。

(5)問題解決のための対応
ア 被害者・行為者への措置の検討・実施
事実が確認できた場合は相談者・行為者に対する配慮の措置を行う。
イ 被害者への対応
・環境整備、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、行為者の謝罪、管理職または産業保健スタッフ等による被害者のメンタルヘルス不調への相談対応等の措置を講じる。
・被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪、被害者の労働条件上の不利益の回復等の措置を講じる。
ウ 行為者への対応
・制裁については就業規則等に則って適正に行う。該当しないと判断された場合でも手続きに則って対応していることを説明し理解を得る。

(6)再発防止策等の検討・実施
ア 再発防止措置のポイント
・ハラスメントが生じた場合職場におけるハラスメントに関する方針を周知・啓発する等の再発防止に向けた措置を行う。
イ 再発防止策の考え方
・取組を継続し、従業員の理解を深め再発防止につなげる。定期的な見直しや改善を行い継続的に取り組む。プライバシーに配慮しつつ社内の主要な会議で情報共有する。
ウ 再発防止策の取組事例
下記を行う。
《再発防止研修の実施》
・事案があったということを明らかにしなくても定期的な研修という形で実施することも考えられる。
・行為者に別途研修を実施する場合は社外セミナーなどに参加してもらいレポート提出などをさせるのも一つの方法。
《事例発生時のメッセージ発信》
・何らかのメッセージ・情報の発信をするとよい。
・管理職に注意喚起。
《事例の活用》
・発生事例ごとに検証し新たな防止策を検討して年のトップメッセージや会社ルール、研修などの見直し・改善に役立てることが望まれる。
・社内の主要な会議で情報共有することも大切。
《管理職登用の条件》
・妊娠・出産・育児休業等に関する正しい知識を習得するための研修を実施。
・部下とのコミュニケーションの取り方や部下への適正な指導や育成にあたれる人材かどうかを昇格の条件とする。
《職場環境の改善のための取組》
・職場内のコミュニケーションの強化や長時間労働対策を行うなど職場環境を改善することが職場におけるハラスメントの予防にもつながる。
エ 業務体制の見直し・整備
・業務体制の整備など事業主や妊娠等した労働者その他の労働者の実情に応じ必要な措置を講ずる。
〇このマニュアルは企業、職場においてハラスメント対策に取り組もうとする際に大変参考になるものです。
<引用先> 職場におけるハラスメント対策マニュアル
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000181888.pdf
(つづく)A.K

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