実践編・応用編

キャリアコンサルタント実践の要領2 I テクノファ

投稿日:2020年10月9日 更新日:

キャリアコンサルタントAさんは、クライアントBさんから在宅勤務について悩みの相談を受けました。Bさんの会社では、この5月から新型コロナウイルスへの対応としてテレワークが始まったそうです。Bさんの部署(企画部)では、原則最低週3日は在宅で仕事をするように会社から指示が出たそうです。
Bさんは会社まで毎日片道1.5時間を掛けて通勤をしているそうですが、これは日本のサラリーマンの首都圏における平均通勤時間です。
Bさん(首都圏の平均的サラリーマンと思われる)は、平日、朝6:00までには起きて、朝の食事と身のまわりの支度をして7:00には家を出るそうです。キャリアコンサルタントとして運輸省調査を調べると、首都圏の通勤時間(片道)は、平均で70分であり、1時間以上の人が過半数を占め、1.5時間以上の人が20%もいるそうです。中京圏と関西圏における片道平均時間も1時間を超えているそうです。首都圏の地価の暴騰は収まりましたが、それでも勤労者の住宅は郊外へ郊外へと遠くなっていて、乗りかえ3回、片道で2時間以上という首都圏の通勤事情は、不動産広告をみても今や普通のことになってしまっているようです。

しかも、これらの通勤時間帯の電車内の混雑は、呼吸もできないほど、あるいは立っている足の位置を変えることもできないほどの通勤地獄です。ラッシュ・アワーの電車の中に立っている人のエネルギーの消耗は重労働に匹敵するという報告もあります。夏、車内で押され押されて汗にまみれた肌と肌とがくっつき合うあの何とも言えない感覚、今年こそは、新型コロナのためにソーシャル・デスタンス意識もあり、社内混雑は緩和されましたが、何時また元に戻るか分かりません。私(平林)は、昔会社の海外赴任でイギリスに駐在していた時、 「プライバシーのひとつは、人の身のまわり半径50センチ以内に立ち入らぬこと」と聞いたことを思い出します。
東海道線、横須賀線、中央線快速、京浜東北線、東北線、常磐線、高崎線、総武線などの上り、および山手線のラッシュ・アワーの混雑率は、ほぼ250%になっているそうです。「日本人の豊かさ」についてのアンケート調査によれば、豊かな生活実現に必要な事柄の内、「時間的側面」への回答の上位3つは次の通りでした。
①週休二日制の完全実施
②長期休暇の実施
③通勤時間の短縮

通勤時間の短縮は、労働時間の短縮よりも上位にありますが、これは通勤時間がまったく無意味な時間消耗であり、さらに残業手当も支払われないからだと考えられます。ヨーロッパンの状況はといえば、EU20カ国の通勤労働者の70%以上は自宅から仕事先まで、10キロメートル以内の距離に住んでいるといいます。日本とはちがって、通勤時間が短いうえに、労働時間も短いイギリスでは、私の赴任当時(1995年)の平均労働時間は週36時間となっていました。日本の当時の実労働時間は43.3時間です。しかも、日本の長い労働時間は、労働時間のカウントの仕方が欧米のそれと違うので、先進国と比較して、実態はさらに長いと思われます。なぜならアメリカや西ドイツの労働時間は、年次有給休暇や病気欠勤であっても、有給であれば、支払い労働時間として労働時間に含めているが、日本では休憩時間および手待ち時間さえも除いた実労働時間だからです。
日本では、原則として従業員30人以上の事業所の労働時間を、ILOなどの国際機関に報告し、それを一般化しているのに対して、アメリカ、イギリスは、すべての規模の事業所の労働時間を、西ドイツやフランスは、10人以上の規模の事業所の労働時間を対象にしています。 日本では、すべての企業に長時間労働があるものの、なかでも長いのは、中小企業であるから、それらを除外した労働時間の平均は、実態を反映していないと思います。

Bさんは、新型コロナでこのような通勤地獄から解放されて何とも言えないありがたさを感じていました。そして会社の指示に従ってテレワークに2か月(5,6月)勤しみましたが、7月頃から無性に会社へ行きたくなったと言います。会社へ行けるのは週2日ですが、会社へ行くと同僚たちと在宅での問題点、孤独な作業感、家族との付合いなど、去年の今頃には思ってもみなかった話題が頻繁に出るそうです。
BさんがキャリアコンサルタントAさんに相談した悩みは、一人作業の孤独感についてでした。通勤時間がなくなり最初は体力的にも助かったと思っていたのですが、その助かった分は心の淋しさ増加に変わったような気がすると言うのです。上司が自分をどのように見ているのかも気になります。与えられた目標があまり明確でないので、今までチームで達成してきた目標へのプロセスも、達成したという喜びに結びつかないと、少し鬱気味の相談をしてきたのです。
(つづく)平林良人

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