基礎編・理論編

キャリアコンサルタント養成講座 20 I テクノファ

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キャリアコンサルタント養成講座 18 の続きです。
キャリアコンサルティングはカウンセリングではありませんが、来談者の問題や、来談者の内的キャリアをより深く理解できなければ良いキャリアコンサルタントになれません。キャリアコンサルティングの質を高めるために、あるいはより効果的なキャリアコンサルティングとなるためには、キャリアカウンセリングについての基本を理解しておく必要があります。
キャリアカウンセリングの理論は、学者・研究者の立場やアプローチの違い、あるいは歴史的な流れによって分類できますが、分類の仕方が人によって多少異なります。この点を踏まえつつ、どのようなカウンセリングにも共通する力ウンセリングの代表的な理論を紹介します。
前回は、1.マッチング理論、2.意思決定理論、3.社会的学習理論、4.精神力動論を説明しました。

5.社会学的構造理論
構造理論は「個人の選択や決定は環境との力動的な相互作用の中で行われる」 とするものですが、そのなかで環境に重点を置くのが社会学的構造理論です。個人のキャリアに影響をおよぼす環境は、物理的、社会的および文化的などさまざまな次元で空間的に、時間的に、また時代によって変化しながら個人のキャリアに影響をおよぼすとするものです。

U.ブロンフェンブレナーは、環境の影響を、
①家族などのミクロシステム
②家庭、学校、職場など複数のミクロシステムが相互に関連しながら個人に影響をおよぼすメゾシステム
③別のミクロシステムで起こっていることが間接的に影響をおよぼすエクソシステム
④文化、国家、社会的規範などのマクロシステム
という4つに分類しています。

6.キャリア発達理論
特性・因子理論や精神力動理論は適職が個人によって異なる理由を明らかにしようとするものです。意思決定・期待理論は選択する対象が何であれ、個人がどのように選ぶかに焦点をあてるものであり、社会的学習理論は適職に表れる個人差は個人の所属する集団によって形成される部分を重視していると言うことができます。これらの理論に共通しているのは、「個人にはより適した職業あるいは職業領域がある」という仮定に立っている点です。

一方、キャリア発達理論はキャリア選択行動そのものに関してはこれらの理論をふまえつつも、生涯にわたるキャリア発達の解明に焦点をあてています。キャリア選択を選択時点に限定するのではなく、幼児期に始まり、生涯にわたって繰り返される選択と適応の連鎖のプロセスという点を強調しています。

就学状態から就業状態への移行は個人の人生上でもっとも大きな移行(キャリア・トランジション)ですが、発達的視点に立てば、この移行期のみならず、ある職業から別の職業へ、同じ職業の中でもある仕事から他の仕事へ、雇用状態から失業状態へ、あるいは雇用状態から引退へと、人生の中で何回も遭遇する移行期において、主体的な選択と意思決定を繰り返すことによって個人は生涯、発達(成長)し続けるという仮定に立ちます。そして、それらの移行期において積極的・建設的に選択と意思決定を実践していくと同時に、それぞれの時点で起こっている社会的、経済的な外圧に対応するために、自分にとって重要なもの、価値を置くものを変化させながら、向き合っていかなければならないということをも意味していることになります。

E.ギンズバーグらは職業選択には長い年月を通して発達過程があることに着目し、理論化したことで有名です。
ギンズバーグらは1951年に、
①職業選択は一般的に10年以上もかかる発達的プロセスである。
②上記①のプロセスは非可逆的。
③上記①のプロセスは個人の欲求と現実の妥協をもって終わる。 と発表しました。そして、職業発達プロセスを、空想期(11歳以下)、試行期(11~17歳)、現実期(17~20歳代初期)という発達段階を経るものと考えました。

この理論はその後何度も再構築され、プロセス、非可逆性、妥協という概念は修正されましたが、「職業選択は、生涯にわたる意思決定のプロセスであり、それゆえ、個人は、変化するキャリア目標と職業の世界の現実との適合をどのようにするか、繰り返し再評価することになる」 という発達的視点は変わっていません。

職業的発達段階説やライフ・キャリア・レインボーで有名なキャリア発達理論を代表するスーパーは、キャリア発達理論を「キャリア行動に関する発達心理学」と呼んでいます。
スーパーの職業的発達段階説はギンズバーグの発達理論、C. ビューラーの生活段階に関する理論、R.ハビーガーストの発達課題説などを取り入れて構築されたものです。スーパーはキャリア発達モデルの精緻化に努力し、その理論の軸となる職業的発達の命題として示しました。それは順次改訂され、当初1953年の発表時には10項目で構成されていましたが、1990年には14項目に増えています。さらに、スーパーは成人期のキャリア発達に焦点をあて、「我々は生涯を通して、多様な役割を同時に複数の舞台で演じている。役割は相互に作用しているので、1つの役割で成功すれば他の役割でも成功し、逆に1つの役割で失敗すれば同時に他の役割もうまく演じられなくなっていく」 と示唆しました。
(つづく)平林良人

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