基礎編・理論編

キャリアコンサルタント養成講座 21  I テクノファ

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キャリアコンサルタントが知っているべき知識の一つとして、労働市場に関することを取り上げます。これからの日本の労働市場や若年者の意識の変化について解説します。

1.産業界における大きな3つのうねりとは
日本の労働市場を管理するための制度やメカニズムは、第二次世界大戦直後の戦後復興期のものがほとんどそのまま続いてきています。戦後における労働市場管理の命題は欧米に追いつくことであり、その前提は少ない雇用機会と弱い立場の労働者でした。そのために行政主導による労働市場管理となり、量的拡大と質的向上を国の命題として掲げ、集団主義に基づく護送船団方式によって発展してきたといえます。

日本の産業界は、好むと好まざるとにかかわらずグローバリゼー ションという世界的な大きなうねり(変化)のなかで、その影響をまともに受けながら今日に至っています。特に大きな変化は以下の3つです。
①経済成長の変化(雇用保障の破綻)
②人口構造の変化
③ITの発展

2.新しい労働の世界とは
キャリアコンサルタントへこれまで述べたように、従来の日本経済は、若い人口、急速な成長、持続的な高度成長への期待を前提に成り立っていました。戦後50年という長期にわたって日本経済はキャッチ・アップの過程にありました。それは急速な技術進歩を生み、同時に成長への期待を生み、それが長期の雇用保障への期待となりました。集団とチームによる生産活動が主体で、それを支えたのは内部訓練と内部昇格でした。労働者の勤労意識も就職ではなく就社であり、定年までの雇用保障があったために生涯忠勤を旨としました。

しかし、経済の成熟化、経済成長の鈍化あるいは停滞、少子高齢化、IT化などの変化は雇用関係の多様化、流動化を招き、一人ひとりの労働者は企業に自分の将来を委ねるのではなく、自分の将来は自分で考えるという個人主導のキャリア開発・形成が求められることとなりました。
個人主導のキャリア開発・形成は、すべてを個人の責任とするのではありません。企業にも人材育成上の責任が発生します。企業はいくつかの点で考え方やとらえ方の転換をせまられてきました。その1つに、人材の活用があります。人材の活用というとき、従来は評価の対象は労働時間でしたが、仕事の中身が求められるようになりました。ここにキャリアコンサルタントの活躍の場があります。

また、裁量労働の導入などをはじめ、労働の多様化に対応すべく、特に女性に関連する部分を中心に従来のさまざまな制度も見直しが図られてきています。職業紹介や人材派遣の自由化も、変化・改革の一環となります。これらの改革は情報と選択肢の増加につながり、求人・求職のさらなる多様化・自由化をもたらすことになります。さらに、海外からの帰国者の増加、外国人労働者の増加、日本企業の海外進出など、文字どおりのグローバリゼーションに伴う変化は着実に進行しています。

若年労働者の意識の変化は、日本生産性本部と日本経済青年協議会が2009年に行った『「働くことの意識」調査報告書』にも表れています。

3.働くことの意識調査」に現れた若年労働者の意識の変化

●「会社を選ぶとき、あなたは、どういう要因をもっとも重視しましたか」という質問に対して

自分の能力・個性が生かせるから   30.2 % (27%)
仕事がおもしろいから         20.7%  (9%)
技術が覚えられるから         10.5%  (10%)
会社の将来性を考えて         10.2%  (18%)
地理的条件がいいから         3.7%   (4%)
給料が高いから            2.7%   (7)%
実力主義の会社だから                           3.1%   (4%)

●「あなたは、この会社で、ずっと働きたいですか」という質問に対して
状況次第でかわる           34%  (40%)
とりあえずこの会社で働く       31%  (28%)
定年まで働きたい            29%  (17%)
わからない               7%  (15%)

出典:『平成21年度新入社員「働くことの意識」調査報告書』 財団法人日本生産性本部

若年労働者の意識の変化は、調査報告のたびに指摘されてきましたが、直近では日本生産性本部と日本経済青年協議会の平成31年度新入社員を対象にした「働くことの意識」調査結果にもそれが表れています。キャリアコンサルタントにも是非知っておいていただきたいことです。
(つづく)A.K

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