実践編・応用編

キャリアコンサルタント実践の要領 19 I テクノファ

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テクノファのキャリアコンサルタント養成講座を卒業し、キャリアカウンセリングの実践で活躍しているキャリアコンサルタントの方からの近況や情報、及び実践の様子などをお伝えします。今回はM.Iさんです。

私が活動しているNPO法人キャリア形成支援センターでは2ヶ月に一回勉強会を開催しています。会員の皆さんのご希望もあり今回のテーマは「ロジャーズ」について再確認することになりました。

キャリアコンサルタントが本格的にロジャーズについて学ぶとしたら膨大な時間になるのですが、今回は2時間という限られた時間であるため、ロジャーズの足跡をたどりながら、その理論や哲学の変遷を確認していこうということにしました。

以前キャリアコンサルタント仲間たちとはロジャーズに関する読書会を通して学んだこともあり、一定程度は理解していると思っていましたが、今回改めて読み直しまとめ直していくうちに、思い出したことや新たに気づいたことも多く、まだまだ学習が必要だと痛感しました。

一方で、しっくりこなかったことや、カウンセリング勉強会などで参加者の方からの質問で伝えきれなかったことに対しても自分なりに考え直すきっかけにもなり、私自身にとって貴重な体験となりました。

キャリアコンサルタントには、「自身の自己理解」を深めることと、「絶えざる自己研鑽」が求められているということが言われているのですが、本当に大切だと実感する出来事でもありました。

私にとってはロジャーズに触れるたびに自分と対話する機会にもなり、これからもさらに学んでいきたいと思っています。そして、引き続き各地の仲間たちとも一緒に学んでいけたらと考えています。

ロジャースが「おそらく今世紀でもっとも重要な社会的発明」と言っているベーシック・エンカウンター・グループは、人間性回復運動と連動し、カリフォルニアを中心に1960年代後半から盛んになりました。エンカウンターとは、他者との出会い、自己との出会いを意味しています。通常、8~12名ぐらいの参加者(メンバー)と1~2名のファシリテーターで構成されます。年齢、性別、職業、地位、役割、人種などを越え、1人ひとりが対等の個人として心を開いて率直に真実を語り合うグループです。國分康孝氏はベーシック・エンカウンター・グループを参考にしながら、比較的短時間でグループ体験ができるようにと、エクササイズを中心とした構成的グループ・エンカウンターを開発しています。

グループの形態やファシリテーターのあり様によってグループ・プロセスは異なってきますが、ロジャースによるとベーシック・エンカウンター・グループのプロセスと特徴は以下のようになります。

ベーシック・工ンカウンター・グループの基本的プロセス
①ファシリテーターはグループ内に、安心して感情を表現できるような心理的に安全な雰囲気を生み出す。
②安全な雰囲気のなかで、メンバー自身および他者に対するさまざまな直接的感情が表現される。
③直接的な感情表現には、肯定的なものと否定的なものとが含まれるが、本当の気持ちを表現するなかで、メンバー間相互の信頼が生まれ、メンバーはありのままの自分を受容する方向へ動いていく。
④防衛的な固さから解放され始めると、態度や行動、対人関係のあり方などの変化を恐れなくなる。互いに他人の話をきちんと聴けるようになり、他人から学べるようになる。
⑤このようなフィードバックが展開されると、メンバーは他人のなかで自分がどのように映っているか、人間関係のなかでどんなインパクトを与えているかを学ぶことになる。
⑥自由さとコミュニケーションの改善が進むと、新しいアイディア、新しい考えが顕れ、新しい変革が可能になってくる。

ベーシック・エンカウンター・グループの特徴 は次のようになります。
①グループの目標
メンバーが自分のあらゆる感情を探求することができるように安全な心理的風土を提供する。メンバーが新しい経験に次第に心を開いて溶け込み、自分自身と自分の判断への自己信頼を発達させるのを援助する。メンバーが現在を生きることを促進する。メンバーが率直さ、正直さ、自発性を開発するのを援助する。メンバーが、今ここ(here and now)で他者と出会い、疎外感を克服する場所としてグループを利用することを可能にさせる。

②ファシリテーターの役割と機能
グループを方向づけることはせずに、グループのプロセスを促進する。すなわち、コミュニケーションの問題を扱う、信頼と安全の心理的風土を確立する、効果的に機能するようにグループを援助する。中心的な課題は、セッションのなかで真実であること、ケア、尊重、共感的理解を示すことである。寛容さと新しい行動を試みることが、おもな役割である。しばしばグループで起きていることについての個人的な感情と印象を表現することによって共有する。

③構造化の程度と責任の分有
ファシリテーターは、グループに構造や方向をほとんど与えない。メンバーは、自らが意味ある方向を見つける、相互に助け合うことができる、建設的な成果を生み出す、という能力を持つ、信頼できる存在である。

④グループの技法
技法よりもファシリテーターの態度が強調される。構造化された、あるいは計画された技法は、ほとんど用いられない。基本的な技法は、積極的傾聴、感情の反映、明確化、支持、メンバーのために “ともにそこにいること”である。

前提となる基本的仮説
①人間は全体性と自己実現へと向かう傾向があり、メンバーとグループはファシリテーターの最小の援助で、方向を見出すことができる。すなわち、メンバーとグループの資質・能力に基本的な信頼が置かれている。
②技法よりもファシリテーターの特質・態度が強調される。ファシリテーターは“どうするか(a  way of doing)”よりも“どうあるか(a way of being)”が問われる。ファシリテーターの第一次的機能は、 安全で豊かな癒しの心理的雰囲気を創りだすことである。ファシリテーターはメンバーに対して、真実性(自己一致)、無条件の肯定的関心、正確な共感を体験していて、メンバーがこれらの条件を知覚すればするほど、パーソナリティの変化と成長が生じる。

(つづく)K.I編集

-実践編・応用編

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