実践編・応用編

キャリアコンサルタント実践の要領 25 | テクノファ

投稿日:2020年12月31日 更新日:

前回に続き、キャリアコンサルタントの相談過程の6ステップの2番目、「仕事理解」支援について説明します。先に説明した職業理解・仕事理解をもとに、来談者にとってのキャリア開発・形成を考える際の仕事を単なるジョブではなく、広くワークという枠でとらえるようにキャリアコンサルタントは支援しなければなりません。

■ワーク=ジョブではない
キャリアは、働くこと(ワーク)を中心にした人生展開、あるいは人生の中の働くということに関わっている部分です。人生そのものといってもいいでしょう。ワークには報酬が伴う「ジョブ」と報酬は伴わないもの(典型的なものがボランテイア・ワーク)がありますので、 ジョブはワークに含まれるものと言えます。
しかし、自分にとっての仕事はジョブだけという認識にとらわれていると、自分にとって働くということの意味がわからなくなってしまったり、自分がやりたい仕事がわからなかったりします。このように、キャリアコンサルタントは仕事の正しいとらえ方をきちんと伝えることができないと、来談者の仕事に対する理解を深めることができず、さらには来談者のキャリアの認識を歪めてしまうかもしれません。
以上のように仕事についての正しい理解をもとに、具体的な仕事や職業に関する情報を提供するために、さまざまなリソースを活用できなければなりません。
情報の媒体は印刷物や視聴覚情報、WEBなどのコンピュー タ・システムも含めて多様化しています。これらに関する情報の収集、検索、活用方法等について来談者に対して助言できるよう、キャリアコンサルタント自身が情報を収集しておかなければなりません。
次に相談過程の6ステップの3番目、「啓発的経験」支援について説明します。
未体験の仕事に就職を希望する職業経験者や、職業経験のほとんどない学生にとっては、事前に職場を知る意義や目的を説明したり、実行について助言したりする必要があります。

■来談者の内的キャリアと外的キャリアをつなぐ
学生の場合にはほとんど職業経験がありませんので、職場訪問、先輩訪問、職務調査、体験実習(インターンシップなど)、トライアル雇用、現場見学、アルバイト等など、事前に職業を体験してみることの意義や目的、あるいは職場を見て知ることの意義や目的について来談者に説明し、その実行について助言しなければなりません。
一方、職業経験のある人の場合にはすでに職場での仕事体験はありますが、非自発的退職によって再就職をする場合には未体験の仕事に就くこともありえますので、まったく必要が無いわけではありません。また、キャリアコンサルタントは来談者がそれぞれの経験を自分にとっての働く意味・意義の理解や選択の材料とすることができるように、助言する必要があります。
つまり、啓発的経験は来談者にとっての内的キャリアと外的キャリアをつなぐ行動ですから、経験や見学や訪問したことから得られた実際の情報が選択の手がかりとなっているかどうかの確認が、重要になります。
企業によっては、採用からの数年間はジョブローテーションとして複数の仕事を経験させるようにしているケースもありますが、このような企業の場合には、ローテーションの期間を啓発的経験の期間とみなすことができます。
次に相談過程の6ステップの4番目は「意思決定」の支援です。キャリアプランの作成支援、具体的目標設定への支援、能力開発に関する支援と大きく3つの方法があります。

■キャリア・プランの作成支援
来談者の自己理解、仕事理解および啓発的経験をもとに、来談者自身とその家族などとの生活も踏まえて、どのような人生を送りたいのかを考え、長期のライフ・プランをつくり、それをもとに長期のキャリア・プランを作るための支援をすることが求められます。いわば、キャリア・プランニングの支援です。
ここでの「長期」とは、企業で働く若年者の場合には定年時としてもいいでしょう。中・高年者の場合には引退時、つまり働くことを止める時期になります。最終的にはどんな状態になっていたいのか、最終的にはどんな自分でいたいのか、いずれにしても、それぞれの人にとっての一生を考えてみれば、5年あるいは10年は長期とは言えないでしょう。いわば、自分自身のキャリア・ビジョンともいうべきものです。
ここで注意しなければならないことは、長期のプランは長期の見とおしではないという点です。将来のことは誰にも分かりません。逆に、将来のことがすべて分かってしまったら生きていけないかもしれません。長期プランというのは長期目標です。しかも、キャリア目標ですから、いくつかの選択肢があったほうがいいでしょう。なぜなら、目標が1つだけで他に選択の余地がない人生というのはかなり窮屈になるからです。しかも、その目標は将来変更することができます。
いわゆる「先が見えない不安」というのは、自分のゴール(ビジョン)を持っていないことから生じる不安であり、自分でゴールを決めればいいことです。しかも、そのゴールは、前述のように選択の余地があるものであり、かつ変更もありえるものであって、「べき論」ではありません。

■具体的な目標設定への支援
次に、キャリアコンサルタントは来談者の長期キャリアプランをもとに、中期・短期の目標や展望の設定を支援します。ここでいう中期とは5年から10年が妥当でしょう。長期プランを現時点に引き戻して、3年後の目標、5年後の目標、10年後の目標というように大まかなシナリオづくりのような作業になります。ここでも、長期と同様にいくつかの選択肢を用意します。いわば、中期のキャリア・パスを設計する作業ということができます。自分のキャリア・パスは他人から与えられるものではなく、 自分で用意するものだからです。
中期目標ができたら短期の目標設定になります。ここでの短期目標は、中期プランで設定した3年後の目標です。3年後になりたい自分を実現するのが短期目標となります。
(つづく)A.K

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