国家試験機関「キャリアコンサルティング協議会」は、平成30年3月の厚生労働省の見直しに合わせて「キャリアコンサルタント試験の出題範囲」を改定しました。
新「キャリアコンサルタント試験の出題範囲(キャリアコンサルタント試験の試験科目及びその範囲並びにその細目)」の適用は、2020年度(令和2)からの試験となっています。
ここでは、新「キャリアコンサルタント試験の出題範囲(キャリアコンサルタント試験の試験科目及びその範囲並びにその細目)」に焦点を合わせて、分野ごとに過去問を中心に勉強をしていきたいと思います。
「キャリアコンサルタント試験の試験科目及びその範囲並びにその細目6」には次のとおり書かれています。
6 労働政策及び労働関係法令並びに社会保障制度の知識
次に掲げる労働者の雇用や福祉を取り巻く各種の法律・制度に関し、キャリア形成との関連において、その目的、概念、内容、動向、課題、関係機関等について一般的な知識を有すること。
① 労働関係法規及びこれらに基づく労働政策
ア 労働基準関係
労働基準法、労働契約法、労働時間等設定改善法、労働安全衛生法
イ 女性関係
男女雇用機会均等法、女性活躍推進法、パートタイム労働法(パートタイム・有期雇用労働法)
ウ 育児・介護休業関係
育児・介護休業法
エ 職業安定関係
労働施策総合推進法(旧:雇用対策法)、職業安定法、若者雇用促進法、労働者派遣法、高年齢者雇用安定法、障害者雇用促進法
オ 職業能力開発関係
職業能力開発促進法
カ その他の労働関係法令
② 年金、社会保険等に関する社会保障制度等
・厚生年金
・国民年金
・労災保険
・雇用保険
・健康保険
・介護保険 等
多くの【問】では、次の法令に関する名称は略語を使用しています。
・個人情報の保護に関する法律 : 個人情報保護法
・高年齢者等の雇用の安定等に関する法律 : 高年齢者雇用安定法
・個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律:個別労働関係紛争解決促進法
・障害者の雇用の促進等に関する法律:障害者雇用促進法
・雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律 : 男女雇用機会均等法
・労働者災害補償保険法:労災保険法
・労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 : 労働者派遣法
・青少年の雇用の促進等に関する法律 : 若者雇用促進法
【問 か】
労働関係法令に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
1.男女雇用機会均等法では、労働者の募集及び採用について性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。
2.個別労働関係紛争解決促進法では、労働組合と事業主との間の紛争も対象としている。
3.労働基準法では、1日の労働時間が16時間を超える場合、使用者は、労働時間の途中に2時間以上の休憩を付与する義務を負うとされている。
4.労働基準法では、労働者・使用者の合意があれば労働基準法を下回る労働条件を設定することも許される。
【正解】1
【解説】
1.正しい
男女雇用機会均等法は,その第5条で事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならないと規定している。
2.誤り
個別労働関係紛争解決促進法は、労働者と事業主との個別案件をあっせん制度で迅速に解決することを目的としており、労働組合と事業主の紛争などは制度の対象としていない。
3.誤り
労働基準法は、休憩に関してその第34条で使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならないとだけ規定している。
4.誤り
労働基準法は、その第13条でこの法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準によると規定している。また労働基準法はその第一条で労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならないとして、この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならないとも規定している。
過去問ではいろいろな法律の理解が問われます。法律を理解するには、まず(目的)又はそれに準じる第1条を読んでおくことが必要です。併せて、第2条以下の概要を把握しておきましょう。
この問いには、男女雇用機会均等法、個別労働関係紛争解決促進法、労働基準法が出てきます。
キャリアコンサルタントを目指す方は、ここでは【個別労働関係紛争解決促進法】を勉強すると良いと思います。
(目的)
第一条 この法律は、労働条件その他労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争について、あっせんの制度を設けること等により、その実情に即した迅速かつ適正な解決を図ることを目的とする。
(紛争の自主的解決)
第二条 個別労働関係紛争が生じたときは、当該個別労働関係紛争の当事者は、早期に、かつ、誠意をもって、自主的な解決を図るように努めなければならない。
(労働者、事業主等に対する情報提供等)
第三条 都道府県労働局長は、個別労働関係紛争を未然に防止し、及び個別労働関係紛争の自主的な解決を促進するため、労働者、求職者又は事業主に対し、労働関係に関する事項並びに労働者の募集及び採用に関する事項についての情報の提供、相談その他の援助を行うものとする。
(当事者に対する助言及び指導)
第四条 都道府県労働局長は、個別労働関係紛争に関し、当該個別労働関係紛争の当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当該個別労働関係紛争の当事者に対し、必要な助言又は指導をすることができる。
(あっせんの委任)
第五条 都道府県労働局長は、前条第一項に規定する個別労働関係紛争について、当該個別労働関係紛争の当事者の双方又は一方からあっせんの申請があった場合において当該個別労働関係紛争の解決のために必要があると認めるときは、紛争調整委員会にあっせんを行わせるものとする。
(委員会の設置)
第六条 都道府県労働局に、紛争調整委員会を置く。
(会議及び議決)
(あっせん)
第十二条 委員会によるあっせんは、委員のうちから会長が事件ごとに指名する三人のあっせん委員によって行う。
第十三条 あっせん委員は、紛争当事者から意見を聴取するほか、必要に応じ、参考人から意見を聴取し、又はこれらの者から意見書の提出を求め、事件の解決に必要なあっせん案を作成し、これを紛争当事者に提示することができる。
第十四条 あっせん委員は、紛争当事者からの申立てに基づき必要があると認めるときは、当該委員会が置かれる都道府県労働局の管轄区域内の主要な労働者団体又は事業主団体が指名する関係労働者を代表する者又は関係事業主を代表する者から当該事件につき意見を聴くものとする。
第十五条 あっせん委員は、あっせんに係る紛争について、あっせんによっては紛争の解決の見込みがないと認めるときは、あっせんを打ち切ることができる。
(地方公共団体の施策等)
第二十条 地方公共団体は、国の施策と相まって、当該地域の実情に応じ、個別労働関係紛争を未然に防止し、及び個別労働関係紛争の自主的な解決を促進するため、労働者、求職者又は事業主に対する情報の提供、相談、あっせんその他の必要な施策を推進するように努めるものとする。
(適用除外)
第二十二条 この法律は、国家公務員及び地方公務員については、適用しない。ただし、行政執行法人の労働関係に関する法律第二条第二号の職員、地方公営企業法第十五条第一項の企業職員、地方独立行政法人法第四十七条の職員及び地方公務員法第五十七条に規定する単純な労務に雇用される一般職に属する地方公務員であって地方公営企業等の労働関係に関する法律第三条第四号の職員以外のものの勤務条件に関する事項についての紛争については、この限りでない。
(つづく)A.K