実践編・応用編

キャリアコンサルタント実践の要領 29 | テクノファ

投稿日:2021年1月16日 更新日:

今回は、活躍しているキャリアコンサルタントからの近況や情報などを発信いたします。

真の意味での「親離れ 子離れ」
「親離れ、子離れ」について語るとき、どちらかといえば「子の親離れ」のほうが注目されることが多いようだ。
そこでは親の側としての立場にある自分についてなど無意識的に棚上げされている場合が多く、「もしかして、この子の足を引っ張ってるのは、親である私なのかしら?」などとは全く思わないようである。口では「早くこの子に自立してほしい・・」と洩らすものの、じつは逆に妨害していることが多いものだ。

自立とは「経済的な自立」や「精神的自立(自分の意思を以って行動を選べるようになった)」といった意味として使われる事が多い。しかし、キャリアコンサルタントからは心理的な発達という視点から観た場合、それだけでは不足だと思うのだ。たとえば私は親のことをどれだけ知っているだろうか? という問いを自分に課したとき、どう思えるだろう。もちろん現実的な意味での「事情」や「状況」についてではない。親とのつき合いは、自分が産まれて初めて開始されたわけである。(それまでは自分は存在していなかったわけだしね。)

つまり、あなたが産まれたからこそ、彼女(彼)はあなたの親になったのだ。当然ながらあなたにとって、自分が産まれた以降の親しか見ていないはずである。「私の親であるこの人」は現在に至るまで、果たして何があったのか? かつて今の自分と同じ歳だった頃の親はどんな子だったのか? おそらく、子はそんなことに一切興味がない。たとえ、親自身が自分の昔話を口癖にして語っていたとしても、聞く側である子が「親の人生」に全く関心がなければ右の耳から左の耳へ素通りしてしまうだけである。人は興味のないことに関して、または聞きたくないことに関しては聞こえないものである。(人間味を感じさせる行動は特に観ようとしない。)

ここでキャリアコンサルタントとして確認したいのは、あなたたにとっての親は「親」でしかないのか?という問いに
ついてである。そもそも親とは、その人を指す言葉ではない。親とは、その人が持つ役割のひとつにすぎない。親であるその人をよく観てみれば「いろんなその人(いろんな面)」がいることに気づくはずである。
その人は、まず「母親」であり、「嫁」であり、「妻」であり、「会社員」であり、実家のお婆ちゃん(私の母親)にとっては「娘」であり、過去においては「学生」であり、友人にとっては「友」であり、学校にとっては「PTAの役員」だったりする。彼女(彼)は、いろんな役割を持っている。

家の中ではみんなから「お母さん」と呼ばれていても、じつはれっきとした名前だってある。夫からも「おい!母さんや!」と呼ばれているとしたら、それは長年に渡って役割に徹しなければならない「召使い」のようなものかもしれない。(うちの主人は・・などと自分から言ってるしね・・)その証拠に、周囲は「お母さん」がどんな気持ちでいるかとか、今日のお母さんは?などに一切の関心がない。お母さんは、いつもそこにいて常に役割をこなさなければならないのだ。たとえ、お母さんが愚痴をこぼしてもせいぜい聞こえないフリをされ黙殺されるのがオチである。

そういった彼女(彼)を単に「自分にとっての親」という役割からしか捉えていないとすれば、彼女(彼)はあなたにとって「人間」ではないことになる。そして、そこには「親子」というきわめて限定された範囲での関係しか存在しないことになる。真の親離れとは、「親を一人の人間・個人」として観ることができ、自然に「身近に在る”人間”」として意識的に関心を持てるような発達段階に至ったことを意味するのではないだろうか。

しかし、その段階に至るためには、それまでの「親子」という関係に終止符が打たれる必要がある。実際に親子であることは変わらないわけだが、少なくとも「してくれる人」と「してもらう人」の関係ではなく、意識の上で対等な位置に立つことが必須の条件である。しかし、これは意図的に、または不自然に急ぐことではない。子は、「充分に子どもをやれた!満足した。もうお腹いっぱい」の状態に至らなければ、足りない分だけ欠乏欲求として残ってしまい、その後もずっと「してほしい。してもらえるのがあたりまえ!」という傾向を持ったまま引きずることになるからである。

充分に「子ども」をやれていなければ、常に「自分のことを解ってほしい」という気持ちを抱えていて、相手の気持ちを汲み取ることなどできるわけがない。つまり、いずれ自分に子が産まれても親として機能しないことが予想されるのである。おそらく我が子に対しても「分かってほしい」と言うだろう。しかし、しっかりと「子ども」をやれて充たされた者であれば、見捨てられ不安に苛まれたり、環境や状況によって揺れることも少ないだろう。それは、心の奥底に、自分にとっての核(軸・ベース)が確立できているからである。これが「しっかりと甘えることができた子ほど自立が早い」と言われる所以である。(そういう意味では、まだ不充分なうちに無理に形だけの自立をさせられがちな男性たちは、基礎工事が手抜きされたまま建てられたビルのようなものである。)

そして、親子の関係を卒業するためには、ある意味で両者が絶縁状態的に対立することが大切である。「しっかりと反抗期を経験すること」は、両者の成長過程においてとても重要な意味を持つ。「親と子」という旧い関係を再構築し「個人と個人」として新しい出会いを果たすためには、いったん「さら地」にする必要があるのだ。例えれば、旧い家を残したままいくら改築を続けてもいずれは耐久年数を越えて倒壊してしまう。

思い切って新築するために、旧い家は解体されなければならない。つまり恒常性から抜け出し、新たな創造性に向けた言わば「成長的な進展」である。長い人生において「変化」はつきものだ。その「流動的ないま」にこそ、「わたし」が在るのである。家庭にしても、永続的に同じ家族形態が続くわけはない。時間の経過と伴に人は老いて順送りに亡くなっていくし、子どももいつまでも幼いわけではない。家庭を取り巻く、もうひとつの外的システムとしての社会もまた、常に変化し続けている。

そこには絶えず「新陳代謝」が起こっているはずなのだ。目を逸らしては自己を見失ってしまう。しかし、「守り(慣れや習慣→安心)」の状態に入ってしまうと代謝は鈍化してしまい、変化の中で取り残されてしまう。というよりも、これまでの「慣れた日常」にしがみつき、変化を怖れ、腰が重いまま受け入れたくない状態になっている様である。幼い頃の「見捨てられ不安」を持ち続けている者は変化することに怖れを持ち、新しい環境に身を投じることができない。そして、未だ欠乏している愛着を得ようと躍起になることに一生を費やすのである。

真の意味での親離れとは、変化に対してそれを自然に受け入れることができる自分であり、また敢えて自分から取り壊すことも辞さない覚悟を持てることでもある。換言すれば、既に変化しているという現実を直視する勇気を持ち、決断することも辞さない姿勢でいられることある。

ところで、もうひとつのテーマである、「子離れ」だが、もうすでに答えは出ている。
つまり、その親自身が、しっかり自分の親と「親離れ」できているかに尽きるのだ。
なぜなら、人は生育歴において親を大人のモデルにして育つからである。
(つづく)K.I

-実践編・応用編

執筆者:

関連記事

キャリアコンサルタント実践の要領 150 | テクノファ

新型コロナウイルス感染症は、私たちの生活に大きな変化を呼び起こしました。キャリアコンサルタントとしてクライアントを支援する立場でこの新型コロナがどのような状況を作り出したのか、今何が起きているのか、これからどのような世界が待っているのか、知っておく必要があります。ここでは厚生労働省の白書からキャリアコンサルタントが知っておくべき情報をお伝えします。これからキャリアコンサルタント養成講座を受けようとする方、キャリアコンサルタント国家試験を受けようとする方、キャリアコンサルタント技能試験にチャレンジする方にもこのキャリアコンサルタント知恵袋を読んでいただきたいと思います。 10.治療と仕事の両立支 …

キャリコンサルタント実践の要領 62 | テクノファ

前回に続きキャリアコンサルティング協議会の、キャリアコンサルタントの実践力強化に関する調査研究事業報告書の、スーパービジョンのモデル実施及びアンケート・実施報告書の分析の部分の、今回のスーパービジョン実施後の自身の課題解決から記述します。 ②―3今回のスーパービジョン実施後の自身の課題解決 スーパービジョンのモデル実施に係るアンケート(スーパーバイジー:キャリアコンサルタント用)内の、「今回のスーパービジョン実施後の自身の課題認識」15項目について、平均値を計算した。回答は、「1:つながらなかった、2:あまりつながらなかった、3:どちらでもない、4:ややつながった、5:つながった、6:扱わなか …

キャリコンサルタント実践の要領 79 | テクノファ

前回に続き、キャリアコンサルティング協議会の、キャリアコンサルタントの実践力強化に関する調査研究事業報告書の、組織視点を組み込んだキャリアコンサルティングの役割り拡大に対応するスーパービジョン補章を説明します。 (3)キャリアコンサルタント登録制度等検討会2018年度報告書:継続的な学びの促進とスーパービジョンの整備 2017年度報告書を受け、2018年度報告書は、これらの能力要件の拡大を踏まえ、キャリアコンサルタント資格の取得後の継続的な学びの機会として、資格取得後の継続学習、そしてスーパービジョンの重要性を提起している。従来キャリアコンサルタントに求められていた、個別面談スキル、倫理、法令 …

キャリアコンサルタント実践の要領 145 | テクノファ

新型コロナウイルス感染症は、私たちの生活に大きな変化を呼び起こしました。キャリアコンサルタントとしてクライアントを支援する立場でこの新型コロナがどのような状況を作り出したのか、今何が起きているのか、これからどのような世界が待っているのか、知っておく必要があります。ここでは厚生労働省の白書からキャリアコンサルタントが知っておくべき情報をお伝えします。これからキャリアコンサルタント養成講座を受けようとする方、キャリアコンサルタント国家試験を受けようとする方、キャリアコンサルタント技能試験にチャレンジする方にもこのキャリアコンサルタント知恵袋を読んでいただきたいと思います。 4)□ 社会的養護に関す …

キャリアコンサルタント実践の要領 158 | テクノファ

新型コロナウイルス感染症は、私たちの生活に大きな変化を呼び起こしました。キャリアコンサルタントとしてクライアントを支援する立場でこの新型コロナがどのような状況を作り出したのか、今何が起きているのか、これからどのような世界が待っているのか、知っておく必要があります。ここでは厚生労働省の白書からキャリアコンサルタントが知っておくべき情報をお伝えします。これからキャリアコンサルタント養成講座を受けようとする方、キャリアコンサルタント国家試験を受けようとする方、キャリアコンサルタント技能試験にチャレンジする方にもこのキャリアコンサルタント知恵袋を読んでいただきたいと思います。 (4)石油コンビナート等 …

2022年5月
« 4月    
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031