実践編・応用編

キャリアコンサルタント実践の要領 32 | テクノファ

投稿日:2021年1月20日 更新日:

今回はキャリアコンサルタントとして活躍している方の近況や情報などをお話しいたします。

自在に生きられるための条件としての「孤独」

「老人の孤独死」「人とのつながり」「イジメ」「仲間づくり」「オリター制度」など、このところテレビを視聴する時間が極端に減ってしまったが、たまに番組を観ていると、上記の言葉がいかに多く飛び交っているかがよく分かる。特に3月から4月へと年度が替わる時期は、出会いと別れに相まって人間関係に大きな変化が訪れる。「新しい友だち作り」は、小・中学校でのクラス替えだけではなく、高校・大学の新入生はもちろん、就職が決まった新入社員、「公園デビュー」を間近に控えた母親、部署替えや転属が決まった父親にまで及んでいるのである。

それはまるで「孤独であること」がいけないことでもあるかのような重いニュアンスを感じさせる。また、最近の若者の多くが、なにかといえば「つながっていたい」、「みんなとのつながりを大切にしたい」と頻繁に呟くのも気になるところだ。しかし実際は、その「つながり」とやらを維持するために、自分の想いを脇に置いて相手に気を遣って疲弊してしまうが故に、家に帰ればくたくたという不自然な毎日を繰り返しているのではないだろうか。加えて、「家にいるときでも、着信したメールにはできるだけ早く返信しなくてはならない」という暗黙の了解があるらしい。

キャリアコンサルタントとしてむろん「気遣い」そのものを悪いことだとは思わないし、コミュニケーションは社会構成の基盤である。しかし、それはどちらかというと相手のためを想っての「優しさや思いやり的な配慮から出る気遣い」ではなく、自分が不利な立場に陥らないための「予防線的な気遣い」なのではないだろうか。少なくとも、K・Y的に関係が両者の抑圧によって不自然に成立しているものであるのならば、はたして「友人関係」と呼べるのか・・という疑問すら湧いてくる。

「つながり」に相反する言葉が「孤立感」だとすれば、「大切にしたい」というよりも、「不安で、そうせずにはいられない」という言い方のほうが適当であろうし、「一緒にいたい」ではなく「独りになりたくない」と言うほうが正直であろう。

人間は、今でこそ安全かつ快適な生活を送れているが、原始時代から現在に至るまで様々な困難に見舞われてきた。かつては肉食動物に襲われる不安や、飢餓に追い込まれる状況に晒されてきたことだろう。そのような環境に適応して生き延びていくために、人間は集団を形成し、生活を共にすることによって不安定な状態からの脱却を図った経緯がある。

集団で狩りや農作を行ったりしながら、部族を作り、地域集団を作り、国を築いてきたのである。覇権を成し遂げた徳川家によって戦国時代が終わりをつげ、日本は初めて一律化が成されたわけだが、さらに幕末に登場した「自分たちが置かれて
いる状況を俯瞰できる者たち」の手による倒幕によって、ようやく国家の成立」に辿りついたのである。このような歴史的経過を省みたときに「仲間意識」や「親和欲求」はけっして否定されるものではないし、人間の歴史でいえば孤立することによって生じるであろう危機的な予測を本能的に持っているのは当たり前である。

キャリアコンサルタントとして孤立しそうになると不安に襲われるのはごく自然な反応として否定するつもりはない。それゆえ、それを個人における発達の段階として構図化されたマズローの段階説には大いに納得させられる。もちろんそこに登場する「所属の欲求」も否定しない。それはそうだろう。しかし、「所属」に対する依存的な安堵感を手放すことができず、必死になってしがみついているために多くの可能性を放棄してしまっていることもまた事実ではないだろうか。

独りでいることに耐えられない者は孤立することを怖れ、周囲から排除されまいと必死で明るく振舞い、不快を感じても表出できずに抑圧してしまったりする。これではいずれ疲弊しきって潰れてしまうことが予想される。「あなたにとって親友と呼べる人はいる?」と尋ねられたとしても、胸を張って「いる」とは答えられず、相手が自分をどう思っているかばかりが気になる。

仲良しと思っている友人に対しても何か問題が起こるとすぐに「見捨てられ不安」が湧き上がる。このような不安がある限り、もちろん相手に対して本当の気持ちなど言えないだろうし、相手に悪意があるか否かは別として、自分にとって気に障ることをされても不快な感情を呑み込んでしまうのである。

女の子同士の会話では「ねえ、あいつのこと、どう思う?」という問いかけが多いという。問いかけられた自分は、相手が何を言おうとしているかをすぐに察知し、「うん、あいつってイヤなヤツだよね」と同意する。それを聞いた相手は「待ってました」と言わんばかりに「そうそう!私、あいつにこんなこと言われたよ」と被害者を装う。すると自分も「私だって、こんなことされたよ」と過去にあった些細な体験を脚色して相手に返す。

これでめでたく「共通の敵を持つ仲間同士の関係」が成立するのである。女の子同士が仲間になるためには、このようなスケープゴート(生贄)を必要とする場合がいいと聞く。翌日から、いつの間にか加害者にさせられた人物は、徐々にイジメの標的となっていく。

集団形成には共有化のための「ネタ」が欠かせない。これはイデオロギー論争や宗教団体などにも見られるごく一般的な傾向であるが、マクロ的な観点から捉えれば民族や国家といった大きな集団においては更に強力な帰属意識が根底に在ると言ってよいだろう。そこに所属する個々人に芽生えた悪意や被害者意識は大きなうねりとなってより強力な排他性を生み出すことになる。

所謂「自分たち対ヤツら」の対立が発生する背景には必ずといってよいほど、このような親和欲求が働いているものである。話をミクロな観点に戻せば、よく見られる中高生の女子グループなどではほとんどの場合に「同じであること」が必要条件になっていて、そのやりとりにおいては「うんうん」とか「そうそう」という返事が基本となっている。

たとえ違和感が湧いても「でもさあ」や「そうかなあ・・」は禁句であり、湧いた想いは心の内にしまっておかないと、一瞬で排除の対象にされてしまうのである。どうやら自分が所属?(参加?)している場に対してどのような認識を持っているか、またはその認識を自覚できているか否かによって、思考特性や行動面に違いが生じるのは間違いないようである。

自由に動くことができないのは、自分が何らかの呪縛に囚われているためである。キャリアコンサルタントとしてその呪縛から解放され、自在に生きられるようになるためには、「自分にとっての当たり前」に敢えてメスを入れてみることが第一歩なのではないだろうか。
(つづく)I,K

-実践編・応用編

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