前回に続き過去問「き」の2回目です。国家試験機関「キャリアコンサルティング協議会」は、平成30年3月の厚生労働省の見直しに合わせて「キャリアコンサルタント試験の出題範囲」を改定しました。
新「キャリアコンサルタント試験の出題範囲(キャリアコンサルタント試験の試験科目及びその範囲並びにその細目)」の適用は、2020年度(令和2)からの試験となっています。
過去問ではいろいろな法律の理解が問われます。キャリアコンサルタントを目指す方は、法律を理解するために、まず(目的)第1条又はそれに準じる条文を読んでおくことが必要です。併せて、第2条以下の概要を把握しておきましょう。
【問 き】労働関係法令及び社会保険制度に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
1.労働基準法では、使用者は割増賃金を支払えば、法定労働時間 (一週間に40時間、一日に8時間)を超えて従業員に労働させることができる。
2.民間事業所の労働者が業務上の負傷を被った場合に、事業主が労働者災害補償保険の保険料を納めていないときは労働者は保険給付を受けることができない。
3.障害者雇用促進法では、一般民間企業における障害者雇用率 (法定雇用率)は2%とされている。
4.厚生年金保険では、65歳以上の労働者は被保険者となることはできない。
【正答】3
【解説】
1.誤り
労働基準法はその第三十二条で使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。また使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。と規定している。
2.誤り
労災保険法は労働者を使用する事業を適用事業と規定している。労働保険徴収法はその第三条で労災保険法の規定する適用事業の事業主については、その事業が開始された日に、その事業につき労災保険に係る労働保険の保険関係が成立すると規定している。
3.正しい
障害者雇用促進法はその第四十三条で 事業主は、厚生労働省令で定める雇用関係の変動がある場合には、その雇用する対象障害者である労働者の数が、その雇用する労働者の数に障害者雇用率を乗じて得た数以上であるようにしなければならないと規定している。
2018年4月より、民間企業の法定雇用率は2.2%に引き上げられました。2021年4月には、2.3%に引き上げられます。
4.誤り
厚生年金保険法は適用事業所を規定している。厚生年金保険法はその第九条で適用事業所に使用される七十歳未満の者は、厚生年金保険の被保険者とすると規定している。
この問いには、労働基準法(再出)と労災保険法(再出)、労働保険徴収法、障害者雇用促進法、厚生年金保険法(再出)が出てきます。
キャリアコンサルタントを目指す方は、次の障害者雇用促進法を勉強すると良いと思います。
【障害者の雇用の促進等に関する法律:障害者雇用促進法】
(目的)
第一条 この法律は、障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等のための措置、雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会及び待遇の確保並びに障害者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするための措置、職業リハビリテーションの措置その他障害者がその能力に適合する職業に就くこと等を通じてその職業生活において自立することを促進するための措置を総合的に講じ、もつて障害者の職業の安定を図ることを目的とする。
(用語の意義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者をいう。
二 身体障害者 障害者のうち、身体障害がある者であって別表に掲げる障害があるものをいう。
三 重度身体障害者 身体障害者のうち、身体障害の程度が重い者であって厚生労働省令で定めるものをいう。
四 知的障害者 障害者のうち、知的障害がある者であって厚生労働省令で定めるものをいう。
五 重度知的障害者 知的障害者のうち、知的障害の程度が重い者であって厚生労働省令で定めるものをいう。
六 精神障害者 障害者のうち、精神障害がある者であって厚生労働省令で定めるものをいう。
七 職業リハビリテーション 障害者に対して職業指導、職業訓練、職業紹介その他この法律に定める措置を講じ、その職業生活における自立を図ることをいう。
(基本的理念)
第三条 障害者である労働者は、経済社会を構成する労働者の一員として、職業生活においてその能力を発揮する機会を与えられるものとする。
第四条 障害者である労働者は、職業に従事する者としての自覚を持ち、自ら進んで、その能力の開発及び向上を図り、有為な職業人として自立するように努めなければならない。
(事業主の責務)
第五条 すべて事業主は、障害者の雇用に関し、社会連帯の理念に基づき、障害者である労働者が有為な職業人として自立しようとする努力に対して協力する責務を有するものであつて、その有する能力を正当に評価し、適当な雇用の場を与えるとともに適正な雇用管理を行うことによりその雇用の安定を図るように努めなければならない。
(国及び地方公共団体の責務)
第六条 国及び地方公共団体は、自ら率先して障害者を雇用するとともに、障害者の雇用について事業主その他国民一般の理解を高めるほか、事業主、障害者その他の関係者に対する援助の措置及び障害者の特性に配慮した職業リハビリテーションの措置を講ずる等障害者の雇用の促進及びその職業の安定を図るために必要な施策を、障害者の福祉に関する施策との有機的な連携を図りつつ総合的かつ効果的に推進するように努めなければならない。
(求人の開拓等)
第九条 公共職業安定所は、障害者の雇用を促進するため、障害者の求職に関する情報を収集し、事業主に対して当該情報の提供、障害者の雇入れの勧奨等を行うとともに、その内容が障害者の能力に適合する求人の開拓に努めるものとする。
(職業指導等)
第十一条 公共職業安定所は、障害者がその能力に適合する職業に就くことができるようにするため、適性検査を実施し、雇用情報を提供し、障害者に適応した職業指導を行う等必要な措置を講ずるものとする。
(障害者職業センターとの連携)
第十二条 公共職業安定所は、前条の適性検査、職業指導等を特に専門的な知識及び技術に基づいて行う必要があると認める障害者については、第十九条第一項に規定する障害者職業センターとの密接な連携の下に当該適性検査、職業指導等を行い、又は当該障害者職業センターにおいて当該適性検査、職業指導等を受けることについてあっせんを行うものとする。
(適応訓練)
第十三条 都道府県は、必要があると認めるときは、求職者である障害者について、その能力に適合する作業の環境に適応することを容易にすることを目的として、適応訓練を行うものとする。
第十七条 公共職業安定所は、障害者の職業の安定を図るために必要があると認めるときは、その紹介により就職した障害者その他事業主に雇用されている障害者に対して、その作業の環境に適応させるために必要な助言又は指導を行うことができる。
(事業主に対する助言及び指導)
第十八条 公共職業安定所は、障害者の雇用の促進及びその職業の安定を図るために必要があると認めるときは、障害者を雇用し、又は雇用しようとする者に対して、雇入れ、配置、作業補助具、作業の設備又は環境その他障害者の雇用に関する技術的事項についての助言又は指導を行うことができる。
(障害者職業センターの設置等の業務)
第十九条 厚生労働大臣は、障害者の職業生活における自立を促進するため、次に掲げる施設の設置及び運営の業務を行う。
一 障害者職業総合センター
二 広域障害者職業センター
三 地域障害者職業センター
(障害者職業カウンセラー)
第二十四条 機構は、障害者職業センターに、障害者職業カウンセラーを置かなければならない。
(業務)
第二十八条 障害者就業・生活支援センターは、次に掲げる業務を行うものとする。
一 支援対象障害者からの相談に応じ、必要な指導及び助言を行うとともに、公共職業安定所、地域障害者職業センター、社会福祉施設、医療施設、特別支援学校その他の関係機関との連絡調整その他厚生労働省令で定める援助を総合的に行うこと。
二 支援対象障害者が障害者職業総合センター、地域障害者職業センターその他厚生労働省令で定める事業主により行われる職業準備訓練を受けることについてあっせんすること。
三 前二号に掲げるもののほか、支援対象障害者がその職業生活における自立を図るために必要な業務を行うこと。
(障害者に対する差別の禁止)
第三十四条 事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者に対して、障害者でない者と均等な機会を与えなければならない。
第三十五条 事業主は、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、労働者が障害者であることを理由として、障害者でない者と不当な差別的取扱いをしてはならない。
(対象障害者の雇用に関する事業主の責務)
第三十七条 全て事業主は、対象障害者の雇用に関し、社会連帯の理念に基づき、適当な雇用の場を与える共同の責務を有するものであつて、進んで対象障害者の雇入れに努めなければならない。
(雇用に関する国及び地方公共団体の義務)
第三十八条 国及び地方公共団体の任命権者は、職員の採用について、当該機関に勤務する対象障害者である職員の数が、当該機関の職員の総数に、第四十三条第二項に規定する障害者雇用率を下回らない率であって政令で定めるものを乗じて得た数未満である場合には、対象障害者である職員の数がその率を乗じて得た数以上となるようにするため、政令で定めるところにより、対象障害者の採用に関する計画を作成しなければならない。
(一般事業主の雇用義務等)
第四十三条 事業主は、厚生労働省令で定める雇用関係の変動がある場合には、その雇用する対象障害者である労働者の数が、その雇用する労働者の数に障害者雇用率を乗じて得た数以上であるようにしなければならない。
(解雇の届出等)
第八十一条 事業主は、障害者である労働者を解雇する場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その旨を公共職業安定所長に届け出なければならない。
(連絡及び協力)
第八十三条 公共職業安定所、機構、障害者就業・生活支援センター、公共職業能力開発施設等、社会福祉法に定める福祉に関する事務所、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第六条第一項に規定する精神保健福祉センターその他の障害者に対する援護の機関等の関係機関及び関係団体は、障害者の雇用の促進及びその職業の安定を図るため、相互に、密接に連絡し、及び協力しなければならない。
(つづく)木下昭