実践編・応用編

キャリアコンサルタント実践の要領 34 | テクノファ

投稿日:2021年1月31日 更新日:

今回はキャリアコンサルタント学校領域での活動の一つであるキャリア教育について、国立教育政策研究所の資料を参考にしながらキャリアコンサルタントの実践の要領を勉強します。

■ 従来の進路指導とキャリア教育は違うのか
旧文部省は、進路指導の概念として「卒業後の進路選択も含めて、どのような人間になりたいか、どのような生き方が望ましいか、という長期的な人間形成をめざす教育活動」と説明しています。
一方、キャリア教育は一人ひとりがふさわしいキャリアを形成し、自立していけるよう、必要な意欲や態度や能力等を育てることを目指しています。つまり、キャリア教育は、一人ひとりの社会的・職業的自立に向けて必要な能力等を育てる教育ということです。したがって、この点では進路指導とキャリア教育の目指すものは同じであるということになります。

しかしながら、進路指導は中学校や高等学校における教育として位置づけられてきているのに対して、キャリア教育は幼児教育から初等・中等・高等教育段階にいたるまでのあらゆる教育機関において実施されるのみならず、成人も対象としています。この点は進路指導とキャリア教育の違いです。

■ 職業的(進路)発達にかかわる諸能力
キャリア教育を実践するための一つのモデルとして、「キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議」は、国立教育政策研究所が提示した「4領域8能力の枠組み」をキャリア教育の取り組みの例として取り上げました。
このモデルでは職業的(進路)発達段階と各段階において達成しておくべき課題を、進路・職業の選択能力および将来の職業人として必要な資質の形成という側面から以下のようにとらえています。

・小学校(進路の探索・選択にかかる基盤形成の時期)
自己および他者への積極的関心の形成・発展/身のまわりの仕事や環境への関心・意欲の向上/夢や希望、憧れる自己イメージの獲得/勤労を重んじ目標に向かって努力する態度の形成

・中学校(現実的探索と暫定的選択の時期)
肯定的自己理解と自己有用観の獲得/興味・関心等に基づく職業観・勤労観の形成/進路計画の立案と暫定的選択/生き方や進路に関する変実的探索

・高等学校(現実的探索・試行と社会的移行準備の時期)
自己理解の深化と自己受容/選択基準としての職業観・勤労観の確立/将来設計の立案と社会的移行の準備/進路の現実吟味と試行的参加

キャリアコンサルタントは以下の4つの領域と8つの能力を知っていると良いでしょう。
【4つの領域と8つの能力】
<4領域>
・人間関係形成
・情報活用
・将来設計
・意思決定
<8能力>
・人間関係形成:自他の理解能力、コミュニケーション能力
・情報活用:情報収集・探索能力、職業理解能力
・将来設計:役割把握・認識能力、計画実行能力
・意思決定:選択能力、課題解決能力

■ 教育改革の一環としてのキャリア教育
キャリア教育を推進することになった背景には、教育改革という流れがあります。中央教育審議会は1999年の答申の中で、小学校段階からのキャリア教育の実施を求めました。その答申を受けて、2006年に「教育基本法」が改定され、2007年に「学校教育法」も改定され、2008年に「教育振興基本計画」が作られ、2009年には「学習指導要領」も改定され、中央教育審議会に「キャリア教育・職業教育特別部会」が設置されました。

本来のキャリア教育は内的キャリアの確立を目指す心理教育ですから、キャリア教育が教育改革の一環となるためには、キャリア教育に携わる人がキャリア開発の支援であるキャリア・カウンセリングを学び、キャリアコンサルタント自身のキャリア開発に取り組んでいることが求められます。キャリアコンサルタントのキャリア開発ができていない人は他者のキャリア開発の支援はできないからです。
(つづく)Y.H

-実践編・応用編

執筆者:

関連記事

キャリアコンサルタント実践の要領 9 I テクノファ

キャリアコンサルタントAさんは、子供の不登校をきっかけに自分の居場所を作りにと、周辺地域から県内、全国組織へとキャリアコンサルティング情報交換の場を広げました。 Aさんは、校門の前で立ち止まっている自分の子供を見ては、学校に居心地の悪さを感じているのだろうと暫くの間注意深く観察した後子供と話し合う、そんな経験を何回も重ねてきました。 キャリアコンサルタントAさんは中小企業に勤めている、不登校の小学生と4歳半の子供をもつ女性です。下の子供は公立保育園に預けているので、6時までには迎えに行かなければなりません。しかし、働き方改革で週休2日制が導入され、彼女の職場ではその分、平日の勤務時間が20分延 …

キャリコンサルタント実践の要領 65 | テクノファ

このコーナーは、テクノファキャリアコンサルタント養成講座を卒業され、現在日本全国各地で活躍しているキャリアコンサルタントの方からの近況や情報などを発信しています。今回はS.Sさんからの発信です。 「生涯発達から捉える”人生の午後”」 一昨年前、フェイスブック上で高校時代の同級生と再会した。彼は、大学を卒業した後に某一流企業に就職が決まり、これまで誰もが羨む順風満帆な人生を送ってきた。 しかし、5年前に重い病に侵され入院して以来、彼にとって人生そのものであった仕事に就けない体となってしまった。さらに、そこに追い打ちをかけるように、一流企業の社員としての彼を選んだ妻が再起不 …

キャリアコンサルタント実践の要領 I テクノファ

キャリアコンサルタントはキャリアコンサルティングの質を高めるために、あるいはより効果的なキャリアコンサルティングを行うためには、キャリアカウンセリングの実践についての基本を理解しておく必要があります。 1.精神分析アプローチ S.フロイトの精神分析学と精神分析療法をカウンセリングに応用した理論です。キャリアコンサルタントは精神分析の基本的な考え方を知っておくと良いでしょう。 ①人間を基本的に動かしているのは意識的な自我ではなく、無意識な力である。 ②①の力は、多くの場合、性的なエネルギーによって彩られている。 ③人間の行動の仕方は、そのような無意識のエネルギーと意識的な自我のそれとの力関係とし …

キャリアコンサルタント実践の要領 92 | テクノファ

これまで回を重ねて説明してきた働きかた改革に関する諸議題の説明の中で何度か触れましたが、少子高齢化に伴う人口減少と労働力不足への対応、人生100年時代が見据えられる中で、個人の職業生活の長期化が予想されることへの対応などが求められており、働く人へのキャリア形成支援が緊急を要する課題となっていますが、キャリアコンサルタントのノウハウは十分に確立しているとはいえません。この問題に対処してキャリアコンサルタント、キャリアコンサルティングの質向上を図るために、厚生労働省委託事業として、特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会は、キャリアコンサルタントのノウハウ開発などを行い、「平成29年度 厚 …

キャリコンサルタント実践の要領 107 | テクノファ

キャリアコンサルティングの社会的意義 キャリアコンサルティングを学ぶ前提 キャリアコンサルタントがキャリアコンサルティングを学ぼうとするとき、日本の産業社会においてはキャリアという言葉も概念も、つい最近まで正しく存在していなかったという点をふまえておかなければならない。キャリアコンサルティングはキャリア開発の支援活動であり、キャリア開発のためのコンサルティングであるが、キャリアコンサルティングを学ぶということは単にキャリアコンサルティングを技法としてとらえるのではなく、キャリアコンサルタントが果たさなければならない役割など、キャリアコンサルティングの前提や背景、あるいは周辺についても正しく理解 …

2022年1月
« 12月    
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031